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2019/04/11(木)08:47

平成の“白い巨塔を”と言われて書いたそうですが…小説『アスクレピオスの愛人』

その他のジャンルの日本の小説(58)

林真理子さんの新作を紹介します。ドラマにできそうなストーリーではあるのですが、ラストがちょっと尻切れトンボなんです。途中で打ち切りになったわけではないですよね…。 アスクレピオスの愛人 林真理子 WHOメディカル・オフィサーとして世界中を飛び回る佐伯志帆子。テレビに映る彼女を見る3人の男性の描写からこの物語は始まる。語学にも堪能で、国際会議で堂々と発言する。感染症が発生すれば満足な設備もない中で奔走し、時には医療器具を横流ししようとする地元の役人とも渡り合う。このようなプロフェッショナルとしての姿も持ちながら、有名美容外科医の元夫、病院理事長、彼女を慕う年下の小児科医というそれぞれ違ったタイプの3人の男性を魅了し、外国人の恋人にも事欠かない。 「マリコ文学史上最強のヒロイン」という触れ込み通り、志帆子には、隙がない。「昼は淑女のように、夜は娼婦のように」を地で行くような生活ぶりは、掲載誌が週刊新潮という男性読者もいる週刊誌だったせいもあろう。  ただ、この作品のテーマが医療なのか、彼女の生き方を中心に描きたかったのか、曖昧に感じられた点が惜しまれた。なんでも「平成の“白い巨塔”を」と示唆されて書いた作品だそうである。確かに、病院内の派閥争いこそないものの、先に挙げたような医療の利権に群がる人々、メディカルツーリストとして高度な治療を受けられる人がいる一方で貧困の中満足な薬もなく死んでゆく子供たちがいる医療格差、そして元夫の妻が病院で死に医療過誤で裁判沙汰になるという、こちらも週刊新潮向けの話題も入っており、医療上の問題は多く出てくる。ただ、志帆子の生き方に何ら影響を与えておらず、医療過誤もいろいろと事件を絡めたわりにはあっさりとまとまり、印象が薄い。また、ラストは唐突で、奔放な母親に対応できない娘との関係や、彼女に救いを求めてきた小児科医の関係なども放り出して終わってしまっている。どれか一つにテーマを絞った方が良かったように感じたが、エンタテインメント性を重んじたのだろうか。 【送料無料】アスクレピオスの愛人 [ 林真理子 ]楽天ブックス

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