2020/12/24(木)00:08
聖者の谷に 聖者はいない それでも留まるか 旅立つか~映画『聖者の谷』
みなさん、こんばんは。
インドに旅したことはありますか?私はまだありません。
本日紹介する映画はインド映画なのですが、
よくある歌って踊るシーンが多い映画ではありません。
聖者の谷
VALLEY OF SAINTS
カシミール地方で暮らす青年グルザールは、結婚式に出席する年老いた叔父をボートで街に送る。そこで彼は親友アフザルと再会、2人で故郷を捨てて大都会のムンバイかデリーへ立つつもりだった。ところが当局が分離独立派のデモを理由に外出禁止令を発令したため、彼らは1週間の暇をつぶすことになる。そこへ、ダル湖の汚染調査にアメリカから若い女性研究者アシファがやって来る。グルザールは彼女を手助けするうち、好意を抱くようになるのだが。
サンダンス映画祭ワールドシネマ部門ドラマ観客賞など2部門受賞作品。地元のボート漕ぎであるグルザール・アーメド・バットを主要キャストに起用し、彼の他にモハメド・アフザルとニーロファル・ハミッドを起用。役名はそのまま彼等の名前を使っている。そのため、あまり役を演じている感覚がないのでは。アシファ役の女性のみ俳優。
何度も繰り返される台詞がある。「聖者の谷には聖者はいない」救ってくれる相手は一生懸命に祈る神でもなく特別に選ばれた人でもない。アメリカのことわざの如く、自分で自分を救うしかない。だからグルザールは都会に出て一旗揚げようとする。
外出禁止令が出てしまい、湖以外に行き場がなくなった二人は、観光客相手のガイドもできなくなり、不法な仕事に手を出さざるを得なくなる。アシファは「不法投棄が湖を汚す」と正論を述べるが、彼女は土地の人々の生活改善まで考えて言っているわけではない。「学者のきれいごとだ」という意識があるから、早くからグルザールの友人アフザルは彼女に反発する。彼女は湖の水を浴びたくらいで気分が悪くなってしまうが、おそらく地元の人達は何ともないのでは。
それでも彼女が提案したコンポストトイレを一生懸命に作るグルザールは、聖者のいない谷で生きていこうと決めたようだ。「自分一人が何かをやっても湖は変わらない」「今を生きるので精一杯できれいごとを言ってられない」と諦めるのではなく、少しでも変えていきたい方に舵を切る。踏み出す勇気を与えてくれたのは、アシファの別れ際の言葉。この思いはこの時だけのものなのか。それとも繋がっていくのか。
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