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2020/10/16(金)00:04

「こんな素晴らしい獣たちのために、喜んで修羅に落ちよう」そんな主さんに…惚れんした~小説『吉原御免状』

日本の作家が書いた歴史小説(159)

みなさん、こんばんは。 NHKでは吉原裏同心が始まっていますが、同じく吉原を舞台にした小説がありましたので紹介しますね。 『吉原御免状』 隆 慶一郎 新潮社 剣豪・宮本武蔵の薫陶を受けた松永誠一郎が、遺言に従って訪ねた先は、吉原。だが創設者の庄司甚右衛門は既に亡く、謎の老人・幻斎が彼の前に現れる。 2005年劇団新感線が舞台化した、隆慶一郎の時代小説。昭和59年9月より60年5月まで、週刊新潮にて連載された、著者の処女作でもある。 世俗とは縁遠い肥後の山中で剣の道に没頭した青年が、世俗のまっただ中・江戸へ、それも色と欲とが絡み合う吉原へとやって来る。青年はそこで出会った様々な人々によって、自らの進むべき道を見いだす。一方、青年と出会った人々は、敵味方を問わず、人を斬りながら少しも汚れぬ彼の清冽さに惹かれてゆく。 いずれ劣らぬ個性の持ち主が、誠一郎の前に登場する。当主・宗冬を護るために、手を血に染めてゆく義仙。告白した時が死ぬ時だった勝山。未来の妻となる不思議な少女・おしゃぶ、『悲しい時、辛い時に踊る』と人生を達観している幻斎。 誠一郎を主人公としたビルドゥングス・ロマンの要素を併せ持つ本作は、吉原成立秘話や、徳川家康影武者説をも盛り込んでおり、所謂『IF歴史』を好む人々への訴求力も持ち合わせている。将軍家の指南役である柳生一族も登場するので、剣豪小説としての見せ場もある。また、次第に明らかになる誠一郎の出自を考慮に入れれば、一種の貴種流離譚とも読める。誠に、一冊にしていくつもの貌を持つ、恐るべき処女作である。 山風も『ありんす国伝奇』で身分構わずの不思議の国・吉原を取り上げているが、本書の方がその内容については、より具体的である。特に花魁とのやり取りについては、実に詳細に書かれている。『苦界』を『公界』だったと推定し、厳しい身分制度に縛られた江戸時代で、唯一平等の地であったとする著者の主張を裏付けるに十分だ。 四部作の予定だったシリーズが、著者の急逝により第二作『かくれさと苦界行』どまりとなった事が悔やまれる。 【送料無料】吉原御免状改版 [ 隆慶一郎 ]楽天ブックス

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