2014/10/13(月)17:18
「わたしはあなたを探すために生まれてきた、あなたははわたしを探すために生まれてきた。」二人の出会いは運命か?それとも…小説『半身』
みなさん、こんばんは。
昨日紹介した作家のもう一つの作品を紹介します。こちらも二人の女性がダブルヒロインです。
半身
Affinity
サラ・ウォーターズ
一八七三年八月三日、降霊会で夫人が亡くなってしまい、霊媒師が捕えられる。それから約一年後の一鉢七四年九月二十四日、ロンドンのミルバンク監獄を訪れた上流婦人マーガレットは、十九歳の娘シライナと出逢う。彼女が霊媒だと聞かされたマーガレットはやがて彼女に惹かれていく。
本書はマーガレットとシライナの日記体で書かれている。こう書けば、お互いがお互いをどう見ていたかが一目瞭然かと思われるだろうが、生憎そんな簡単な手法は取ってくれない。シライナの独白は、マーガレットと出逢う一年前から始まっており、リアルタイムにおいてはマーガレット側の心情しか読者には明かされていない。自然と読者はマーガレットの心情に寄り添いながら読むことになる。また、マーガレットの知らないシライナの過去が並行して描かれることで、疑いつつ惹かれるマーガレットに先行する形で、読者は「現在監獄にいる彼女の不思議な言動が全くのインチキでもなさそうだ」と思うようにもなる。
但しウォーターズ作品の例にもれず、双方の語り手の信頼性に疑問が残る。まずマーガレットだ。一見、牢獄を慰問する何不自由ない貴婦人だが、表ざたにできないある事情により自殺を図った過去がある。シライナは霊を出現させる当事者であり、お客と二人になる場面では、第三者の目がないため、いかようにも嘘がつける。日記体は一人称であり、第三者の視点が介在しない。よって読者は、まるで薄暗いヴィクトリア朝の監獄の中を歩くがごとく、真実と嘘の境目がはっきりしない物語の筋を辿ってゆくことになる。
裕福でありながら、世間の目や母親の束縛という見えない監獄に囚われているマーガレットと、監獄に囚われていながらも自由に行き来ができると称するシライナ。二人の囚われ人は、心と体の真の解放を目指して心を通じ合わせてゆく。どこまでが取材でどこからが想像力なのか想像もつかないほど、監獄の描写が詳細である。
ラストに至って、これも一人称の小説だからこそ隠せた事実であるが、「ずっと存在していたにも関わらず、全くの無関係だと思っていた」ある人物の正体が明かされ、二人の逃避行は思いがけない展開に。半身を得たことは喜びでもあるが、同時にある人物に囚われたことでもある。人間は束縛から逃れられない生き物であるのかもしれない。
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