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2016/05/03(火)00:11

やどかりのように 使う言葉も住む国も 自由自在に変えられたらいいのに~エッセイ『台湾生まれ 日本語育ち』

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みなさん、こんばんは。GWが後半戦に入りましたね。これから出掛ける方もいらっしゃるのでは?気をつけていってきてくださいね。 こちらはエッセイです。 台湾生まれ日本語育ち 温又柔  著者は1980年に台湾人の両親の間に台湾・台北市で生まれた。3歳の時に家族と東京に引っ越し、台湾語混じりの中国語を話す両親のもと、中国語・台湾語・日本語の3つの言語が交錯する環境で育った。両親の意向で日本語を話すよう教育された結果、国籍で言うならば台湾人であるにも関わらず、筆者は日本語の方が中国語よりも巧くなった。  二度目の東京オリンピックを控えて国際化に忙しい日本では羨ましがられるような語学力だが、著者自身は戸惑いを感じている。つまり、普通のバイリンガルとは“母語”(日本語或いは英語が)喋れてその上にもう一つ外国語が喋れることを指すが、はて、著者の母語とは何だろう?というわけだ。私はどの言葉が堪能でなくてはいけないヒト?言葉の問題はアイデンティティに繋がる。  他にもいくつか住んでいる国と国籍のある国との齟齬を感じる機会がある。長年日本に住んでいるにも関わらず参政権がなく、免許を更新する際に外国人登録証を提示しなければならないが、だからといって生まれた台湾の総統総選挙にも加われない。宙ぶらりんな状況に置かれて初めて、国境と言う見えない線が立ちはだかる。国境・国籍は時として人を守るものでもあるが、同時にその線に入れない者には便宜が図れませんよ、と冷たく突き放す壁にもなる。  私達は普段その壁を感じない。敗戦して占領を体験したとはいえ、日本語がなくなることも日本がなくなることもなかった。沖縄の殆どが基地になっている現状もあるが、昨日まで敵国だった国の言葉を強制されることもなかった。私達の先祖はよその国へ行って堂々とそれをやった。国語や思想の徹底した転換を図ったのは支配するために有効だったからだ。もし首相が言うように、謝罪することを止めてしまったら、私達の子孫は、自分達の国がかつてどんなに酷い事をしてきたのか、またそれらがどんなに酷い事なのかを、知らずに生きていくことになる。過去への謝罪を止めてしまおうとしている日本人こそ、普段言葉や国について意識しない日本人こそ、このエッセイを読むべきだ。  同じ台湾出身の龍 應台さんも分かりやすい言葉で主張を伝える事に長けているが、彼女を尊敬している著者もまた、名前の通りとても柔らかい語り口で主題にアプローチし、言葉や国に対する複雑な思いを読み解いている。特に構えず読めるエッセイだ。   【楽天ブックスならいつでも送料無料】台湾生まれ日本語育ち [ 温又柔 ]楽天ブックス パフュームパッセンジャー バッグ ネイビー イニシャル ロゴ マーク入り オリジナル ブランド の キャンバス トートバッグ 大きめ サイズ L LL A4 B4 送料無料 価格:2800円(税込、送料無料)

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