2019/01/16(水)00:15
渕の先に それぞれが見たもの~映画「渕に立つ」
みなさん、こんばんは。
今日から仕事はじめの方もいらっしゃいますね。
映画渕に立つを見ました。
渕に立つ
HARMONIUM
原作&脚本&監督
深田晃司
出演
浅野忠信 古舘寛治 筒井真理子
鈴岡家は郊外で小さな金属加工工場を営み、夫の利雄と妻の章江、10歳の娘・蛍は穏やかに暮らしていた。ある日、利雄の古い知り合いで、最近出所したばかりの草太郎がやってくる。利雄は妻に何の相談もなく彼に職を与え、自宅の空室を提供する。
一瞬にして優しさと危険な男の香りが入れ替われる俳優さんってあまりいないと思うのですが、浅野さんは間違いなくそれが出来ますね。どうにも意味ありげなキャッチだったので「いやー、このまま優しい人で終わるはずはない」と思っていたのですが、やはり豹変しました。いつも真っ白なシャツだった草太郎が、いなくなる直前に真っ赤なTシャツを着たあたりから「ああ来た来た!」と思いました。
最初からおかしかった。利雄は草太郎を迎えた時、深々と礼をする。草太郎が刑務所にいたことは台詞でわかっているので“礼”は出所前の何かに対してだ。ただ「世話になったんだよ」なら章江には言ってよかったはずなのに、一切説明しない。絶対に何かある。
二人の事情を知らない章江は、最初こそ戸惑ったものの、何せ毎回食前の祈りをとなえるほど敬虔な人だ。率直に話す草太郎に好意を抱くのは早かった。
利雄と章江夫婦の取り合わせも面白いな、と思っていて、二人の食事シーンが頻繁に登場するのだが、何も言わずがしゃがしゃご飯をかっこむ利雄の向かい側で、章江は娘と共に祈りの言葉を捧げている。そして章江は利雄に対していつも敬語だ。この関係は後半がらっと変わってしまうので、わざと前半いびつな夫婦を演らせたのだろう。 後半はある事情で草太郎が姿を消すが、いなくなっても彼の影が夫妻にのしかかっている。夫婦は間違いなく崩壊しており、娘の存在が辛うじて二人を繋ぎ止めている。しかし繋ぎ目も、いつ切れるかわからないほど夫婦は疲弊しており、まさに崖っ渕に立っている。ただ、この夫婦、草太郎の登場によってここまで追い込まれたが、そもそもの原因はもっと前にあり、実は彼が現れなくても崩壊してたんじゃないかと思える節がある。というか、イエスの言うように「罪のない者が石を投げよ」というのならば石を投げられる大人は誰もいない。その罪深き大人のせいで、罪なき子供が被害を受けるという…後味の悪い映画でした。
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