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2019/11/11(月)00:00

「フランス語に不可能という言葉はない。(Impossible n'est pas français.)」と言ったナポレオンにも不可能だったこと~小説「ナポレオン 3 転落篇」

日本の作家が書いた歴史小説(158)

みなさん、こんばんは。 即位のパレードは晴天のもと行われたようですね。 佐藤賢一さんの小説『ナポレオン』もいよいよ完結編です。 ナポレオン 3 転落篇 佐藤賢一 新潮社  ボナパルト朝の皇帝という唯一無二の存在となったナポレオンは、唯一無二の存在故に、容易く弱点を見抜かれた。前巻でも書いたように、無敵はナポレオンだけ。ならば彼のいない所を他国が攻めれば良い。なまじヨーロッパ諸国を支配下においたため、守るべき領土が広大になる。他国に攻められていた時は、国民も国を守る英雄としてナポレオンを歓迎した。しかし領土が広がったが故にあちこちに転戦する王を見れば「話が違うじゃないか」となり、国内もにわかに不穏な空気を帯びる。  「身の丈」を知り、ほどほどの所で他国と手打ちにしていれば、歴史は変わっていたかもしれない。しかし、連綿と続く王朝の一員でなく、一代で成り上がった英雄故に、ナポレオンは戦に勝つことで存在理由をアピールしなければならなかった。「軍と離れてはいけなかった」と作中である人物に言われてしまうが、戦わなくなったナポレオンは、少なくとも彼以外の人物にとっては、ナポレオンではなかったのだ。当人はハプスブルグ家皇女との間に子供も生まれ、戦うだけではない人生を切望していたのに、何とも皮肉なことだ。  皮肉といえば、ナポレオンが帰還を望んだ時には「彼がいると他国が攻めてくる」と頑として拒んだフランスが、亡くなって王政がうまくいかなかった時に、精神的支柱として彼の帰還を認めた件もそうだ。彼は本当は家族と共に葬られたかったのではないか。 ​ナポレオン 3 転落篇 [ 佐藤 賢一 ]​​楽天ブックス​

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