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みなさん、美青年ブームっていつ起きたんでしょうね？この小説からかもしれません。

ドリアン・グレイの肖像
The Portrait of Dorian Gray
オスカー・ワイルド
新潮文庫

名家の跡取りで超絶美形の青年ドリアン・グレイ。彼の前には素晴らしい未来が待っているはずだった。ところが彼の肖像画を一目見たヘンリー卿が興味を持っていろいろ教え始めたことから、ドリアンの考え方に変化が訪れる。

　　肖像画に全て悪が移り、本人は相変わらず若く美しいままなのはよく知られているストーリーで、その骨格だけを見れば形を変えたジキルとハイドの物語とも受け取れる。しかし、もう一つの見方もある。


　ドリアンは一目見るなりヘンリー卿に魅せられる。その熱狂ぶりといったら
「ドリアン。これから一生のあいだ、きみは自分のしたことをなにもかもぼくに話すだろう。」
「そうなのです。ハリー、それはほんとうです。あなたには話さずにいられない。あなたの不思議な感化力がぼくを捉えているのだ。たとえぼくが犯罪を犯したとしても、やっぱりあなたのところへ来て、告白してしまうでしょう。そして、あなたはぼくを理解してくれる」
くらいは序の口で
「ハリー、あなたは怖しいひとだ！どうしてあなたがこんなに好きなのか、自分でもわからない」
　堂々と告白までしている。素直すぎる。まっすぐすぎるぞドリアン。
そんなドリアンを
「そうだ、ドリアン、きみはいつまでもぼくが好きだろう。ぼくという人間は、きみにとっては、きみが勇気がないばかりに犯すことのできなかったあらゆる罪の象徴だからね」
と躱すヘンリー卿。大人だ。

　一方でドリアンの肖像画を描き、最初に彼を見出したバジルは、彼をまともな道に戻そうとする。ヘンリー卿の前では
「ぼくが生きているかぎり、ドリアン・グレイの人間としての魅力はぼくを支配しつづけるだろう。ぼくが感じているものを君は感ずることができない。きみはあまりに変わり易い人間だからね」
　ドリアン愛を公言しているが、当人の前ではドリアンのヘンリー卿愛があまりにも強くて、何を言っても聞いてもらえなくなる（涙）。
「ドリアン、なんという怖しいことをいう！なにかの原因で、きみという人間はまるで変ってしまった。外観こそ、毎日ぼくのアトリエにきて、肖像画のモデルになったあのすばらしい少年と寸分違わない。しかし、あの頃のきみは単純で、自然で、感情のこまやかな人間だった。世界広しといえども、きみほど無垢な人間は他にあるまいとさえ思われた。ところが、いまはどうだ、いったいきみはどうしたというのだ？きみの話しぶりを聞いていると、まるできみには心が、憐れみが一かけらもないようだ」
　こんな風に、本気でドリアンを叱ってくれているのはバジルなのに。しかし彼も一言多かった。
「なにもかもハリーの感化だな。それに違いない。」
これでドリアンはかっちーんときて猛反発。彼への愛があるか疑わしいヘンリー卿に傾いてしまう。なんて不憫なバジル。これはバジル→ドリアン→ヘンリー卿という一方通行の片恋物語だ。


　2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。

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