2020/09/04(金)00:00
ポアロのマドンナ 登場!~短編集「教会で死んだ男(短編集)」
みなさん、こんばんは。自民党総裁選は密室政治でいやですね。
今日は短編集を紹介します。
教会で死んだ男(短編集)
Sanctuary and Other Stories
アガサ・クリスティ
ハヤカワ・ミステリ文庫
名探偵にはマドンナがつきもの。
横溝氏が生んだ金田一探偵は、行く先々で美女といいムードに。
またドイル氏のホームズには「ボヘミアの醜聞」のエレーナ・アドラーが。
そしてクリスティの生んだポアロ氏にも…。
本書収録の「二重の手がかり」に登場するロシアの貴族、ヴェラ・ロサコフ伯爵夫人こそポアロのマドンナにほかならない。美人でゴージャスなファッションに身を包み、何より悪事が見破られたと知ってもちっともうろたえない度胸の良さが決め手となりました。敵ながらイイ女、ロサコフ夫人。エンディングでポアロに「また会うかもしれないよ。」と言わせていますが、その通り、ある短編で再登場します。その時も地下鉄の逆向きのエスカレーターですれ違いざまに謎めいた言葉をつぶやく、という粋な事をやってのけています。探してみて下さい。
さて、他には
「何で名探偵って事件が起こってから動き出すの?あんなに賢いのに事件が起こるの、わからないわけ?」とお嘆きの貴兄の為の
(実は私もそう思います)
「スズメ蜂の巣」
や
珍しくポアロが言い任されて引き受けてしまった事件が
意外な展開を見せる(この展開はホームズの「赤毛連盟」に似てる?)
「炊事婦の失踪」
などが気に入ってました。
特に「炊事婦の失踪」の依頼人の「誰もがダイヤや真珠を身につけて車で外出する貴婦人になれるわけじゃない。優秀な炊事婦がいなくなってしまったら、貴婦人の中に真珠をなくして困る者もいるのとおんなじで、一大事なんです。」という台詞には
「おし!よく言った!庶民をばかにしたらいかん!」と座布団5枚あげようかと
思ったくらいです(セコいか)。
粒ぞろいの短編を13話収録した本書は、それぞれがほどよい長さでちょっと時間があいた時に読むのにぴったり。お茶のお伴にぜひどうぞ。
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