映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。
最高裁の「アルバイトには賞与なし」という判決はショックです。
今日もおかざき真里さんの漫画を紹介します。

阿・吽（12）
ビッグ コミックス
おかざき 真里

　平城上皇の退位までの流れから「肉親の固執がいちばん恐ろしい」(10巻)と悟った嵯峨天皇は、たくさん子供を作って自分が誰か一人に執着しないよう努める。しかし同時に皇后・橘嘉智子との間に距離を作る。また、多く出来た皇子・皇女を養うために財政が圧迫し、ひいては民の貧困に繋がる。対策として行われたのが皇族の多数に姓を授ける臣籍降下であり、漫画『応天の門』に登場する源融は、嵯峨天皇の皇子の一人である。

　自分の中から執着を排し、後継に異母弟の淳和天皇を立てたことで、嵯峨天皇が意図した通り、三十年間政治は安定した。しかし淳和天皇の次に天皇になった嵯峨天皇の息子・仁明天皇の皇太子に淳和天皇の息子・恒貞親王が立った際に承和の変が起きる。本作でも何度か示唆されており、本巻「相撲節会」で断片的に触れられている、橘逸勢が怨霊と化す原因となった出来事である。そしてその乱の中心にいるのが、蹴鞠を見つめている橘嘉智子と蹴鞠に参加している少年時代の藤原良房だ。良房は『応天の門』では養子・基経を後継者として育て、娘高子を皇后にともくろむ宮廷のラスボスとして君臨している。

　冬嗣は久しぶりに最澄と会い、空海と組めば巨大宗教勢力になると恐れる。彼の恐れは2巻で政治をも左右する一大勢力に成長した仏教と決別するために遷都した桓武天皇の怖れと同じである。既存仏教に反旗を翻した最澄と空海も、支持者が増えればやはり一大勢力となって政治を脅かす存在になり、1巻で織田信長が比叡山を焼き払う流れに繋がっている。

　最澄と空海の物語にスポットを当てると、11巻で遂に出会った泰範と空海の関係が進展する。最澄からは逃げ隠れする泰範が、空海の放つ光に強烈に惹かれる。その事を最澄も感じ取り、彼を含めた弟子を空海のもとに留めるのだが、この後何度催促しても泰範は戻ってこない。最澄が天台立宗のために自分のもとを離れると知ってもひびが入らなかった二人の仲が壊れる時が近づいている。

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