2021/02/18(木)00:04
"My name is Daniel Blake. I am a man, not a dog. "尊厳を求める男の戦い 映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」
みなさん、こんばんは。渋い声の森山周一郎さんが亡くなりましたね。
映画わたしはダニエル・ブレイクを見ました。
わたしはダニエル・ブレイク
I, DANIEL BLAKE
監督
ケン・ローチ
出演
デイヴ・ジョーンズ
カンヌ映画祭パルムドール
59歳のダニエルは、英国北部の工業都市ニューカッスルで大工の仕事に就いていたが、心臓の病でドクターストップがかかる。失職した彼は国の援助の手続きを進めようとするが、あまりにもややこしい制度を前に途方に暮れる。そんな中、ダニエルは二人の子供を持つシングルマザーのケイティと出会う。それぞれ国の援助を必要としているにも拘らず、お役所的な複雑なシステムや理不尽な対応がそれを阻む。
私達はかなり安月給でも税金を払っている。その中から私たちの使用する公共サービスを改善する資金や、何か困った時の資金が生じると信じているからだ。しかし最近では税金は適正に使われていないように思う。桜を見る会などはその最たるものだが、GOTOトラベルも最初は税金を払っている東京都民が除外された。高齢者も税金を払っているが、感染の危険もあるからと遠出を控えるようやんわりと注意されている。
イギリスでも税金は適正に使われていない。ダニエルは心臓病でドクターストップがかかるまでは大工として働いていた。だから今まで払った税金の分で、“働きたくても働けない状態にある”と認定されれば支援が受けられるはずなのに、役所に行けば「働けるはずなのだから就職活動をしてください。就職活動をしたエビデンスを提出すると給付金がもらえます」と言われる。デジタル機器が不得手なダニエルが、スマートな職務経歴書をさささっと書けるはずもない。履歴書を出しても結局心臓がネックで働けないのだから落ちてしまう。落ちる履歴を作るがために、無駄な講習会に通い、役に立たない履歴書を作る。無駄な鉄砲を打っている間にも体力は消耗し気力は萎えていく。行政がセーフティネットの役割を果たしていない。
役所側にも言い分はあるのだろう。毎日椅子に座り続ける多くの人達に、それぞれ割ける時間はわずかだ。親身になって長時間話を聞いていれば、こちらが超過勤務になる。ああですねこうですねと考えるよりも、杓子定規でぱっぱっと処理していった方が作業効率も良く評価にも繋がる。しかし役所で働く人が本当に考えなければならないのは、給与をくれる上司達ではなく、これまできちんきちんと税金を払って受けられるべき保護・安心を得られるはずの市民のことだ。ダニエル・ブレイクのような。
「They call this a "pauper's funeral" because it's the cheapest slot, at 9:00. But Dan wasn't a pauper to us. He gave us things that money can't buy. When he died, I found this on him. He always used to write in pencil. And he wanted to read it at his appeal but he never got the chance to. And I swear that this lovely man, had so much more to give, and that the State drove him to an early grave. And this is what he wrote. "I am not a client, a customer, nor a service user. "I am not a shirker, a scrounger, a beggar, nor a thief. "I'm not a National Insurance Number or blip on a screen. "I paid my dues, never a penny short, and proud to do so. "I don't tug the forelock, but look my neighbour in the eye and help him if I can. "I don't accept or seek charity. "My name is Daniel Blake. I am a man, not a dog. "As such, I demand my rights. "I demand you treat me with respect. "I, Daniel Blake, am a citizen, "nothing more and nothing less."Thank you. 」
ラストシーンはダニエルが裁判で訴えようとしていた文言が読み上げられる。犬ではなく人間だ、施しを求めているのではない、というダニエルの訴えは、困っている人ほど心に響く。尊厳を軽んじる社会は優しくなく、誰も未来を見い出せない。役所の扉の向こう側にいる人も、いつこちら側にくるかわからないのだ。
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