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2021/03/24(水)00:00

探偵役はどっこい生きていたあの人! 小説「京伝怪異帖」

日本の作家が書いた歴史小説(158)

みなさん、こんばんは。清廉潔白そうに見えた野田聖子さんもNTTの献金を受けていたんですね。がっかりです。 今日から2日間高橋克彦さんの小説を紹介します。 京伝怪異帖 高橋克彦 文芸春秋 江戸滑稽化け物尽くし』の著者、アダム・カバット氏が、学生時代夢中になったのは、滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』。馬琴を弟子入りさせたのが、黄表紙の大家・山東京伝。馬琴と京伝。共に化成文化を担った巨人である。 平賀源内が人を斬り、獄中で死んだと聞いた伝蔵(後の山東京伝)が、友人安兵衛(後の絵師窪俊満)を誘って、彼の持っていた「天狗髑髏」を手に入れようとする。通夜の席に顔を出した伝蔵は、思いがけない人と出くわす。何と源内が生きていた! 歴史小説を読む時に違和感を感じるのは、老中田沼意次と、その次の松平忠信の時代。歴史の授業では、「賄賂貰い放題の田沼時代が悪く、次の松平時代は、改革が行われて良い時代になった」と習った。 しかし大人になり小説その他で読むと、全く逆の印象を受ける事がしばしばあった。田沼時代の方が、めっぽう派手で面白い。まあ学生相手に、「政治的には悪でも文化的には云々かんぬん」と、矛盾を教えられなかったのか。まあ、そうでなければ、今「史実だけを知っていたら、絶対面白くなかったな」と小説の有難さを感じる事もなかったから、まあいいか。  『江戸風俗の語り部』と言われるお人でしたら、そりゃあ、これ位好奇心旺盛で、どこにでも首を突っ込むお人でござんしょう、とすんなり探偵役におさまる伝蔵。それにカラクリ大好きの平賀源内が師匠とくれば、どんな仕掛けも思いのまま。筋書きと仕掛けとくれば、役者も必要。そら、おあつらえ向きに、陰間茶屋の案内人・蘭陽ってのが芝居者。宇野亜喜良さん描く所の彼が、これまた何とも色っぽい。けれど外見に騙されると痛い目にあう。鍛えた体が物を言い、彼は滅法喧嘩に強い。更に『四谷怪談』の鶴屋南北まで加われば、もう妖怪話はお任せってなもんだ。金に困れば蔦屋がいる。これだけ役者が揃おうもんなら、つられて本当の幽霊まで顔を出す。さあ、お江戸は大変だ!  怪談ものなのに、キャラも話もめっぽう元気がよく、レビューを書いてるこっちまで、気分が良くなってくる。江戸風俗もふんだんに、ボリュームもあるけど一気に読めた。  作者が自分の好きなものをテーマに選ぶと、これほど面白いものができるのか、の典型例。中でも死んだはずの源内は、縦横無尽に動かせる最強のキャラ。田沼と松平、水と油の二人の間をすいすい動く。史実で釈然としない源内の死を、からからと笑い飛ばす勢い。一話完結の形を取りつつ、伝蔵の半生を、絵師としての駆け出しから、隆盛、手鎖の刑まで、物語を貫く一本の糸として、きっちり通す。「もう一人役者が足りないなぁ」とご不満の方はある人の台詞にご注目。「天狗髑髏」「地獄宿」「生霊変化」「悪魂」「神隠し」の章にわかれる。 吉川英治文学賞受賞第一作として、読売新聞に連載されたものを刊行。 ​【中古】 京伝怪異帖 だましゑ 文春文庫/高橋克彦【著】 【中古】afb​​ブックオフオンライン楽天市場店​

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