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2021/04/27(火)00:00

人は一代名は末代 歌舞伎でお馴染み幡随院長兵衛の生涯  「侠客」

日本の作家が書いた歴史小説(159)

みなさん、こんばんは。自民党が衆参3つの選挙で全敗ですってよ。 今日も池波正太郎作品を紹介します。 侠客 池波正太郎 角川文庫 道路に寝そべるなどしていた若い男のグループに注意した男性が、暴行を受け死亡した事件がありました。 幡随院長兵衛の死に至るそもそもの原因は、旗本奴が人足に「わざと砂埃をかけた」と因縁をつける事に起因しています。その無礼を咎めた町奴に旗本奴がキレてしまい、人足を斬って しまいます。そして、元から不仲だった町奴と旗本奴の間に、遂に決定的な亀裂が入るのです。遠い江戸で起こった事件と、現代の東京で起こった事件は、どうして こんなに似ているのでしょう。  主人公である塚本伊太郎(後の長兵衛)の父親が謎の男達に襲われる場面から始まった本作は、因縁の相手・水野十郎左衛門との運命的な出会いを冒頭に持ってきて、一気に読者を物語世界に引き込みます。  見知らぬ都会・江戸にやって来た伊太郎は、人入れ屋・山脇宗右衛門とその孫娘をはじめとする、縁も所縁もない人達に救われ、父の死の原因を探るうちに、軽慢な藩主の悪行に行き当たり、正しい事を言う者が容れられず、佞言だけが生き延びるコツだという世の中の不条理を、骨身に叩き込まれます。机上の学問ではなく経験が、後の長兵衛を作り出してゆきます。 彼の合わせ鏡として、同じ君主の気まぐれに運命を弄ばれた剣客・笹又高之助が登場します。長兵衛の父を殺し、長兵衛の居場所をネタに藩から金をせびりとろうとする、こすっからい悪党ですが、なぜか憎めません。彼もまた長兵衛と同じ犠牲者です。  歌舞伎では妻子や子分と別れる場面がありますが、本作では死を覚悟しながらも、たった一人で長兵衛は水野家に赴きます。無駄死に、自暴自棄ともいえる行動に出た理由は、ここまで長兵衛の来し方を見てきた読者ならば、おのずと浮かんでくるでしょう。たとえ自分がやった事でなくとも、頭領としての責任を果たさねばならない。或いは、ここで逃げるわけにはいかない、という意地もあったやもしれません。他の旗本奴はともかくとして、水野十郎左衛門に対する想い。潔く、責任感が強く、そして友誼あつき男。数々のいい男達を描いてきた池波氏ならではのキャラクターになっています。こんないい男が、無軌道な若者のせいで命を落とすなんて、全く理不尽というものです。  現代は、長兵衛達のような男にとって、とても住みにくい世の中になりました。 ​【中古】 侠客 角川文庫11183/池波正太郎(著者) 【中古】afb​​ブックオフオンライン楽天市場店​

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