2021/05/26(水)00:00
古都ヴェニスで繰り広げられる 詩人の恋人とその姪と好事家の恋文争奪戦 小説「アスパンの恋文」
みなさん、こんばんは。照の富士優勝しましたね。
今日もヘンリー・ジェイムズ作品を紹介します。
アスパンの恋文
The Aspern Papers
ヘンリー・ジェイムズ
岩波文庫
アメリカの大詩人アスパンを研究している「わたし」は、恋人だったミス・ボルドローに送ったアスパンの恋文を入手するため、ヴェニスを訪れ、人目をさけてひっそり住んでいる彼女の邸の下宿人となり、その機会をうかがう。
「下宿なんてめんどうなことは止めにして、今すぐにもあの人たちに現金を渡すだけの才覚が、どうしてあなたにはないんでしょうね」
ボルドローを紹介してくれたブレスト夫人が、いかにもアメリカ的“ビジネスライクスタイル”を勧めたのに対して
「有難いことに、彼女は当世風の感覚を持ち合わせていません。だから、そんな様子をほんの少しでも見せようものなら折角の苦労が水の泡になってしまいます。彼女を油断させる以外に目的の品を手に入れる手段はないのです。そして油断させるには、うまい策略で相手のご機嫌を取り結ばねばなりません。偽善と二枚舌―これだけが武器なのです」
そんなやり方はあんな古風な方々には通じるもんですか、とかえって回りくどい方法を取る「わたし」。
ところが現実離れしているはずのミス・ボルドローは、姪が言うところの年齢が正しいなら150歳(えええ?)。人生経験が豊富なのか、家賃交渉もゴンドラレンタル交渉も強気で押してくる。こんなはずではなかったと思いながら、わたしは滞在中に金は取られ、肝心の手紙の存在を匂わせてもはぐらかされ、彼女の姪のミス・ティータとデートもどきを強いられる。さあ、わたしは手紙を手に入れられるのか?
従来の作品では“世故に長けたアメリカ人”が金に飽かせて“実生活に不向きな無駄な伝統だけ持っているヨーロピアン”から欲しいものをまんまと受け取る姿が描かれた。さて本作では?三者三様の思惑が古都ヴェニスで絡むコメディ。
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