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2021/09/16(木)00:00

フランス版ヤルセナキオものがたり 小説「きみのいもうと」

その他のジャンルの海外小説(416)

みなさん、こんばんは。長寿クイズ番組アタック25が今年の秋で終わるようですね。今日はフランスの小説を紹介します。 きみのいもうと Armand エマニュエル・ボーヴ 白水社 ​   表紙絵がまるで子供の人形みたいで、児童書と間違う読者も多いのではないか。著者が『ぼくのともだち』の著者だと知ればそういう誤解はないはずだ。これはオトナの物語だ、但し不完全な。 戦争未亡人ジャンヌと暮らしていたアルマンは、自分では何一つ仕事をしていない。いわゆるヒモである。かつて自分も同じ立場だった友人リュシアンと再会し、その妹マルグリットにキスしたことからジャンヌに追い出されてしまう。  金持ち女性に飼われている男性が、貧しい友人の妹に惹かれて真実の恋を知り別れを決意する。こういう流れならば感動する要素はある。しかしそんな純愛ものではない。アルマンはジャンヌの事も本当に好きだったわけではなく、かといってマルグリットへの思いも出来心だ。そんな生き方でどうするの?という自立心のない男は、著者の弟がモデルなのか。  著者の生い立ちは複雑だ。ユダヤ人の父がイギリス人の教養豊かな愛人を作りジュネーヴに移り住むと、エマニュエルもここに引き取られ、以降は知的刺激に満ちた生活を送ることができた。ところが父の恋人に気に入られたエマニュエルに比べて反発した弟は死ぬまで兄にたかり通した。そんな生き方で自分の誇りはないのかと言いたくなるが、それでも生きていけるならいいじゃんと開き直るのもまた強さなのか。世の本質を探究するテツガクが必修科目になっているほど物を突き詰めて考えるフランスには珍しい。 きみのいもうと [ エマニュエル・ボーヴ ]​​楽天ブックス​

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