2022/03/03(木)04:50
優しすぎるパトロンは 芸術家を滅ぼす? 小説「ロデリック・ハドソン」
みなさん、こんばんは。みなさん、こんばんは。アイヴァン・ライトマン監督が亡くなりましたね。
今日はヘンリー・ジェイムズの小説を紹介します。
ロデリック・ハドソン
Roderick Hudson
ヘンリー・ジェイムズ
講談社文芸文庫
吝嗇家の父のおかげで、食うに困らぬどころの財産を手に入れたローランド・マレットは、かつて恋心を抱いたこともある従姉セシーリアから
「同胞のための貢献なしに生涯を終えてはいけません。」
と言われていた。ちょうどその時彼女から、アメリカ・マサチューセッツ州ノーサンプトンの片田舎に住む天才芸術家の卵ロデリック・ハドソンを紹介され、彼の才能に惚れ込んだローランドは、イタリアで大成させようとする。
かつて憧れていた女性に結婚を申し込まず援助することで満足する男性の構図と言えばある婦人の肖像に登場するイザベルとラルフの関係どんぴしゃり。だが、あいにく物語における彼女の役割は、ロデリックをローランドに紹介する所までで、折々には絡んでこない。
ローランドは、他人の才能を見抜くくらいだから、自身に才能がないこともよくわかっている。そのため自分にないもの=才能の片鱗を持つロデリックに瞬殺され、母親を説得してイタリア旅行に連れ出す。ところが、最初こそ順調だったものの、評判の美女クリスチーナと出会い恋に落ちた辺りから、ロデリックは芸術活動を放棄。ローランドは「芸術家ならそんなものだろう」と鷹揚に構えて、彼の遊興費や借金までも負担するが、次第にロデリックが制御不能になっていく。作品タイトルこそロデリックだが、彼に振り回されるローランドと二人主人公の物語にも思える。正直、ここまで非難されて許せるローランドは、仏のような人だ。それとも、どこかで見切って厳しい言葉を浴びせれば、ロデリックの未来は変わっていたのか。芸術家も賭けだが、パトロンも賭け。大切なものを失っても悔しがらず未練を断ち切れる人だけが、パトロンになれるのだろう。
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