映画・海外ドラマ・本 ひとこと言いた~い

2022/08/11(木)00:00

ひとりは白人を選び もうひとりは黒人を選んだ 小説「ひとりの双子」

その他のジャンルの海外小説(416)

みなさん、こんばんは。歌手のオリビア・ニュートン・ジョンさんが亡くなりましたね。 今日もパッシングについて書かれた小説を紹介します。 ひとりの双子 The vanishing half ブリット・ベネット 友廣 純 (訳) 早川書房 アメリカではほんの僅かでもアフロ・アメリカンの血が混じってさえいれば、「黒人」として人種分類される。本人がどんなに白人のように皮膚の色が白くても、先祖の中に一人でも黒人がいたことが明らかになれば、それで黒人と見なされる。つまり、外見と判断が乖離している状態である。現在ではもちろん人種による差別はないがそれは建前で、目で見えるものによる差別は存在し続けている。法的にも人種による分類は戸籍上存在する。そのため白人と区別できない有色人種が南部から北部の大都市に移住して、誰にも気づかれないままに白人として生きた。いわゆる人種詐称にあたる彼等の行為をパッシングと言う。合衆国の有色人種の割合が混血のために増加の一途をたどるはずであるのに,統計的にほぼ10%のままである一つの理由は、パッシングにあると思われる。架空の街を舞台に据えた本作の主人公である双子達が子供の頃は、法的に差別というものが存在していた。  アメリカ南部の小さな村マラードは、見知らぬ人が見たら白人と間違えるほど色の薄い黒人が住んでいる。それでも彼等の多くは黒人として、白人よりも低い収入、低い地位に甘んじなければならない。父が惨殺された過去を持つ16歳の双子は、生まれながらに定められた運命に抗おうと都会をめざす。より多くを望んだ姉デジレーは挫折とともに実家に出戻り、妹ステラは出自の秘密に怯えながら裕福に暮らす。デジレーは妹を案じるが、白人として生きることを選んだステラは家族も過去も捨てる。  彼女の娘たちのうち、一方は漆黒故に周囲から黒人と見なされ、もう一方は母親が出自を隠したために自らを白人だと思って育つ。双子の片割れの行方を絶えず心にかけながら生きるデジレーも、家族をも欺きながら生きるステラも、幸せではない。原題のThe vanishing half=失われた片割れは、デジレーにとってのステラであり、ステラにとっては、ないものとした黒人としての自分である。本作はカラーリズム、家庭内暴力、LGBTも含むアイデンティティ、階級差別など、様々な要素を取り上げながら、双子と彼等に関わる人々の歴史を縦糸に、アメリカという国の歴史を横糸に綴る。 ​ひとりの双子 [ ブリット・ベネット ]​​楽天ブックス​

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る