2024/02/05(月)00:00
スピンオフ小説タイトルが『Fracture Me』(俺を砕いてくれ)『Destroy Me』(俺を壊してくれ)って 君らどれだけS兄弟やねん! SF小説「 アンラヴェルミー ほんとうのわたし (シャッターミー)」
みなさんこんばんは。脚本家の山田太一さんが亡くなりましたね。
今日はタヘラ・マフィの三部作第二作を紹介します。
アンラヴェルミー ほんとうのわたし (シャッターミー)
Unravel Me
タヘラ・マフィ
潮出版社
異常気象と環境汚染で荒廃した近未来。地球を再建すると約束し、世界を支配した再建党は、人々から自由・文化・思想を奪う。ジュリエットには、不思議な力があった。彼女の肌に直接触れた人は生命を吸い取られ、最悪の場合死ぬ。原因は医者にもわからない。ジュリエットは17年間誰にも触れられず、母にさえ抱きしめられたことがない。
危険人物として施設に閉じ込められていたジュリエットは、移された基地でアダムと出会い、触れてもなんともない彼に好意を抱く。一方基地でジュリエットを幽閉するウォーナーもまた、ジュリエットに関心を抱く。ジュリエットはアダムと共に脱出し、抵抗グループオメガポイントにやって来る。
ここまでが前作『シャッターミー』の粗筋。「私に触らないで」から本作「私を剥がして(本当の私にして)」最終作「私に火をつけて」(ハートに火をつけて、とか?)まで、人と触れ合う機会が次第に増えていくジュリエット。
ジュリエットとは、なんとも、悲恋を運命づけられたような名前だ。相手はアダム。人類最初の男性の名前で、新世紀を彼女と作っていくにはふさわしい。
本編はそんな彼と彼女のラブストーリーである。が、一筋縄ではいかない。「訓練して能力を制御したら大丈夫」と言われても、これまで接触経験がないので加減が全くわからない。スーパーパワーを持つため周囲は遠巻き。自然触っても大丈夫なアダムに頼るほかないジュリエット。しかし組織としては、最強兵器のジュリエットを少しでも早く戦に生かしたい。よって、触っても大丈夫な二人がじっくり恋愛を育む時間は、なかなか触れない。寸止めシーンの多さよ。YA小説にしてハーレクインロマンス。あっそうだ一応SF小説だった(笑)。
さらに萌え要素として、アダムには異母兄のウォーナーというライバルがいる。反抗的でアウトロー、家族の縁に薄いが年の離れた弟ジェイムズを可愛がる弟アダムと、父親のアンダースン総督に徹底的なエリート教育を施された優等生タイプの兄ウォーナー。ウォーナーの言葉攻めがすごいっすよ。
「おまえがほしい。おまえのすべてがほしい。なにもかもほしい。おまえにため息をつかせたい。わたしがお前を思い焦がれているように、おまえにもわたしを思い焦がれてほしい」
「おまえの肌の火照りを感じたい。おまえの心臓が、わたしの心臓の隣で鼓動を速めるのを感じたい。わたしのせいで、わたしがほしくて、どきどきしているのを知りたい。なぜなら、おまえは、わたしを止めたいとは思っていないからだ。わたしには、おまえがほしくないときなど一秒もない。隅々までほしい。すべてがほしい」
いやだもう書いてるそばから変な汗が。金原瑞人さん、大谷真弓さん、あっぱれ!それしか言えねぇ!念のため、SF小説だから(笑)。
正反対の男性から愛されるヒロインが、なかなかどちらかに決められなくてふらふらする辺りも萌え。二人とも母親を早く亡くしているため、ジュリエットにほのかに母性を見ているのも萌え。ここぞ、という所で別の相手の名前を口走る、結構悪女なジュリエットだが、Sっ気兄弟にはそれも(が?)たまらないらしく、タイトルのようなスピンオフ小説がある。両兄弟にそれぞれファンがいるらしい。ハピエンにならなくてもいいから、ジュリエットを巡るズッ友でいてくれよ(をい)。
アンラヴェルミー 上 少女の心をほどく者 (潮文庫 シャッターミー 2) [ タヘラ・マフィ ]アンラヴェルミー 下 少女の心をほどく者 (潮文庫 シャッターミー 2) [ タヘラ・マフィ ]楽天ブックス