2024/05/22(水)05:24
いやあこれ 一番ひどいの母親では? ノンフィクション「美術泥棒」
みなさんこんばんは。ダルビッシュ投手が日本とアメリカで勝った試合が通算で200になりました。今日と明日は泥棒に関するノンフィクション作品を紹介します。今日は不敵な美術品泥棒カップルの実話を紹介します。
美術泥棒
The Art Thief:A True Story of Love,Crime,anda Dangerous Obsession
マイケル・フィンケル
古屋美登里訳
亜紀書房
『大英自然史博物館 珍鳥標本盗難事件―なぜ美しい羽は狙われたのか』でも書いたが、盗んだ品を捌いて儲けるのではなく、個人で楽しみたい人間が盗むと、なかなか見つかりにくい。本件の主犯ステファヌ・ブライトヴィーザーもそのタイプだった。
使う道具はスイス製アーミ―・ナイフただ一本で、ねじを次々と外し、絵画や彫刻を盗んでいた。大英博物館に入る時、確かバッグの中身を点検された覚えがある。ブライトヴィーザーも、パートナーのアンヌ=カトリーヌも大きめのバッグに盗品を入れていたが、あまりメジャーではない美術品では監視カメラもなく、監視員も一人だけで、つまりは警備は手薄だった。スイス、フランス、ドイツを股にかけ、二人は盗みを続けて戦利品を屋根裏部屋に持ち込んだ。同居していた母親は、コレクションを置いておく屋根裏部屋に立ち入らせない。この時点で母親は当然気づいていたはずだが、離婚して息子を溺愛していた母親は追及できなかった。
しかしいくら息子が可愛いからといって、母親が最後に取った行動は容認できない。息子が捕まったと知った母親は、証拠隠滅を図ったのだ。少しでも現状復帰したままで返還すれば、罪は軽くなったのかもしれないのに、貴重な美術品が失われ本当に残念だ。
ところでブライトヴィーザーの行為は、個人だから犯罪だ。しかし、かつて植民地を持っていた大英帝国やナポレオンのフランスは、侵略地から惜しげもなく美術品を略奪して憚らなかった。第二次大戦時、ユダヤ人の所有財産が略奪されたのも記憶に新しい。国の犯罪は公に非難される事はなく、国を代表する美術館で展示されているのも、何とも皮肉な話である。
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