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2024/08/13(火)07:51

やがて「中国の小さなお針子」となる種が ここにある 中国映画「中国、わがいたみ」

中国&台湾映画(76)

みなさんこんばんは。パリオリンピック、卓球女子団体の決勝で日本は中国に0対3で敗れて銀メダルでした。日本は4大会連続のメダル獲得で、中国は5連覇を果たしました。パリオリンピックの陸上女子やり投げ決勝で北口榛花選手が65メートル80センチをマークし、金メダルを獲得しました。オリンピックの女子のフィールド種目で日本選手がメダルを獲得するのは初めてです。 今日も中国映画を紹介します。 『映画「中国、わがいたみ」』 ダイ・シージェ / 中国題名「牛棚」フランス題名「CHINE MA DOULEUR」 監督脚本 ダイ・シージェ 眼鏡をかけた少年が、レコードをかける。曲はラブソングだ。 彼は、自分のためにかけているのではない。こっそり窓から外を見る。 少女がいる。まだ気づいてない。 だからボリュームを上げる。やっと気づいて、目があった。 少女も微笑み、少年も微笑む。しかし淡い初恋は、ドアを叩く音と怒号によってつぶされる。 この後彼が下放先で歌うのは、一応節はついているが、 「撹乱 失敗 また撹乱 また失敗 最後に滅亡 最後に滅亡」 という、聞いているだけでも気のめいる、歌というより お題目。 雑技団がやって来た時、もう一度お題目が出てくる。 本当にそう思ってか、美しい女性に魅せられたか、 下放民はだんだん手を上げ、「貧しい農民達に学ぼう 農民を敬おう」というシュプレヒコールを和唱する。 頭ごなしに教えこむより、ソフトなアプローチの方が しみ込みやすいよ、ということか。 ところが、熱心に見ていた彼等は、北京ダックを載せた皿を まわす芸が始まると、目の色を変えて舞台に寄って来る。 落ちてきたら取ろうと手を精一杯伸ばす彼等の目は、 ちょっと恐い。 このエピソード、更に最後にオチがついている。 雑技団は農民達を慰問するはずだったのに、 間違えて下放民=敵を慰めてしまったのだ。 「農民は、泥に塗れているが知識人より清潔だ。」と自信満々 インタビューにも答えていた責任者は、慌てて車を発車させる。 皿を回したまま立ち去る車を、下放民達が追ってゆく。 「ダックは置いていってくれ!」 彼等の切実さも良くわかるのだが、思わず吹き出してしまった。   オカリナで曲を吹いていた少年が、 「その曲は何だ。」と聞かれ、 「モーツァルト」と答える。 何だ?という顔をした班長に、あわてて 「毛沢東を称える歌」と言い直す、 「中国の小さなお針子」でも使われたエピソードが再登場。 険しい山、音楽への愛、知識層をいたぶり知識を 馬鹿にする班長、友達と町に出てゆくのが唯一の気晴らし、医師など 「中国の小さなお針子」で登場する要素は あらかたこの作品に詰まっている。主人公と白毛の 友情は、「中国の小さなお針子」の二人の少年版。 ただ少年が13才なので、恋愛の要素は入ってこない。 その代わり、少年と関わる大人達が描かれる。中でも 寡黙な老道士の存在が、大きい比重を占める。 長い人生を生きてきた彼は、この矛盾に満ちた制度の存続と、自分の余命を秤にかける。 老道士は少年に影絵を見せる。白い布に、紙で切った鳥が飛んでゆくのが映る。 次に人が現れ、刀を自分の喉に突き刺す。 白い布に斜めにしゃっ!と鮮血が走る。 白と黒、正と邪。二通りの見方しかしない社会への、これは最後の彼の抗議。 苦しい中にユーモアがまぶされた遠い日々には、押しつぶされた者達の、静かな怒りが潜んでいる。 2003-06-30

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