一兵卒として“やつし”を楽しみながら、気づいてもらえないとぶんむくれる やんちゃ大帝面白過ぎる 評伝「大帝ピョートル」
みなさんこんばんは。歌手のKANさんが亡くなりましたね。今日もアンリ・トロワイヤの評伝を紹介します。ピョートル大帝Pierre le Grandアンリ・トロワイヤ中央公論新社妻を亡くしたツァーリ アレクセイ・ミハーイロヴィチは、残されたひ弱な息子フョードルとイヴァンを見て、二年後再婚を決意。地方貴族の娘ナターリヤと結婚し、望み通り頑強な息子ピョートルを得る。しかし皇帝は病で亡くなり、フョードルが皇位につく。しかしフョードルは後継者を残さず才で亡くなる。弟のイヴァン5世・ピョートル1世が即位するが、ピョートルの姉ソフィアが愛人ヴァシーリー・ゴリツィン公と組み、摂政の座に就く。後世評価されるような善政も敷いたが、ただ一つ軍人の才能がなかったゴリツィン公のクリミア遠征が失敗に終わる。これを成功と偽ったあたりから陰りが見え始め、慌てたソフィアはピョートルに暗殺指令を出した。ところが至聖三者聖セルギイ大修道院に避難したピョートルのもとに、政府高官や軍の将校、聖職者の多くが集まり、ピョートルの勝利は確定。彼女は修道院で生涯を過ごす。彼女の絵も怖い絵シリーズに残っている。 正妻を修道院に幽閉後、リヴォニアの洗濯女をパートナーにし、西欧に大使節団を派遣するも、常に一兵卒として扱われることを望んだ。「かたくななまでに謙譲を装う彼の生き方は、実は大きな傲慢さをおし隠しているのである。真の偉大さは、と彼は考える。称号とか服装とか勲章などは意に介さぬものだ。生涯を通じて彼は、貴族の誰よりも質素な家に住み、質素な服装をすることに執着しつづける。多くの君主が、経緯を払ってもらえぬのではないかという恐れから、外側を飾り立てるのに対し、自分の権威は、そのようなものの援けを借りる必要がないのだということを、証明するためである。」 花火師・砲術師、船大工他14の職人仕事をマスターしたピョートルが目指したのは、ロシアの近代化だった。イヴァン雷帝みたいにイギリスの女王に求婚するようなバカはしないが、彼の目からすれば「ロシア人だっさ!」だった長髭も剃り落とし、髭無しヘアに似合う西欧式正装を義務付けた。彼なりにロシアを西欧なみに上げようとあれこれ努力するが、国民には通じず大反発を食らう。次なるロシアの西欧化はエカチェリーナ二世を待つことに。 しかし、皇帝は息子を殺さずにいられないのか。イヴァン雷帝に続き、ピョートルも実の息子を殺してしまう。「ピョートルはヘラクレスのごとき力を誇りにしているが、アレクセイは、ときには厳格におそわれるようなひ弱な青年だ。父は戦争を好み、息子はこれを嫌悪する。父が教会の権威にいどむ一方で、息子は僧侶と交わることだけに平安を見出している。父が科学的書物を読みあされば、息子は聖書を耽読する。ロシアを永遠の夢から目覚めさせることを父が夢見れば、いにしえからのモスクワの風習を息子は盲信する。父は前進するためにあらゆる犠牲を払い、息子は執拗に過去をふりかえる」 父子は対照的すぎた。偉大な父のもとで育まれると息子は萎縮するのか。父親に歯向かって殺されるイヴァン(息子も同名)が異質なのか。オーストリアのウィーンに逃亡するも、根が坊ちゃんなのであっさり連れ戻され、帝位継承権を剥奪され死刑を言い渡されるが獄死。後継者なきロシアを継ぐのは、農民の娘であり、ロシア初の女帝エカチェリーナ1世である。【中古】 大帝ピョートル 改版 / アンリ トロワイヤ, Henri Troyat, 工藤 庸子 / 中央公論新社 [文庫]【メール便送料無料】【あす楽対応】もったいない本舗 楽天市場店