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カテゴリ:小説/物語
私はその姿を見てただただ愕然とした。
たった9年。 たった9年だ。 一人で冷えたチキンハンバーグをひと冬食べ続けたあのときから、9年しか経ってない。 母が用意してくれたものだから、、、 それだけの理由で寒さに震えながら冷え切ってパラパラになったご飯と一緒に食べ続けたのではないのか! だから子供が親を想う気持ちが誰よりも分かると自分で思っていたのではないのか! それがどうや。 たった9年経ったら、子供から親の用意した弁当を取り上げて、 「こんなもん」 「食べんでええ」 「他のものを食べよう」 と平気で言う人間になったんか、、、 今目の前で号泣しながら弁当を食べるこの男の子をこんなに泣かせたのは誰でもないこの私なのだ。 9年前に親の有難さを、親の気持ちをかみしめつ続けたはずのこの私なのだ。 悪いのは9年と言う歳月ではない。 悪いのは弁当箱の中身でもない。 悪いのはあのヤンキー女でもない。 ましてや悪いのは泣きながら弁当を食べるこの子であるはずもない。 私だ。 悪いのは私だ。 「どこまで愚かなんや。俺はどこまで愚かなんや。」 自分の愚かさに愕然とした。 椅子に座り込み、言葉も出て来ず、虚ろな目でこの号泣するこの子を見つめることしかできなかった。 そのうち呼吸をすることすら苦しくなってきた。 このまま呼吸が止まったらエエねんとさえ思った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018.01.22 01:47:13
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