2018/02/08(木)03:03
チキンハンバーグの詩 / 第2章 ~47~
表通りにあったI先輩と出会った楽器店は私が高校を卒業した翌年、店長の都合で京都に移転したのは知っていた。
このときは小ぎれいな喫茶店になっていた。
しかしその店先にはまだ楽器店時代の名残が少し残っていた。
ドアや窓はそのままだったのだ。
スタジオがあった2階は居住スペースになっているようだった。
私はその喫茶店の前で少しバイクを停めて、その名残をかみしめた。
そしてよく見ると、その裏通り、、、そう、先輩宅や駄菓子屋のあった通りにキレイなアパートや見慣れない工場の看板が上がっているのに少し不安になった。
もしや、と思いバイクで裏通りに入ってみた。
ほぼ4年ぶりだった。
通りに入ってみて驚いた。
道を間違えたのかと思った。
そこには私の知っている光景は存在していなかった。
道はきれいに舗装しなおされていて、新しい民家、アパート、そして大きな工場があり広い駐車場ができていた。
先輩の家も駄菓子屋も無くなっていた。
まさに自分の目を疑った。
駄菓子屋があった場所には3階建てのアパートが、
先輩宅のあった場所は駐車場になっていた。
しばらくは呆然と立ち尽くしていたが、そのうち道行く人に話しかけてみた。
私が声をかけた人達は皆ここ3年以内にこの辺りに越してきた人たちみたいで、昔のことを知っている人はいなかった。
唯一1人だけ、このアパートの建っている場所には以前駄菓子屋があったらしいことを知っている人がいただけだった。
その人でさえも、その駄菓子屋のおばさんの消息を知らなかった。
彼女の消息が分かれば先輩とそのお母さんのことも分かるかと思い、1時間ほどいろんな人に話しかけたが、結局何の手がかりも得ることができなかった。
諦めた私は以前駄菓子屋の前にあった少し広い場所にできていた公園に目をやった。
何人かの子供が遊んでいた。
そして私はその公園の隅にある物を見つけて「あ!」っと声をあげてしまった。