『凍(とう)』 沢木耕太郎 新潮文庫
寒いですね最低気温0℃が続き、冬眠状態です寒さにとても弱いので、5℃を切ると動けなくなってしまいます。家人に「気温が10℃から30℃くらいで、四季のある所に住みたいなあ~」と話したら鼻で笑われました。夏はまだ強いのです。35℃くらいまではエアコンなしで過ごしています。エアコンかけるとたちまち体調を崩すので・・・。さすがに体温を越えると意識が朦朧としますけどね。 で、そんな、寒さによわよわの私が、この寒い冬に読んでしまいました。『凍』時季を誤りましたね。寒いです。体が冷え切ってしまいます。 最強のクライマーと呼ばれる山野井夫妻のノンフィクション。ヒマラヤの難峰ギャチュカンで、吹雪に阻まれ、何日も進めない。体は衰弱。ご存知でしたか氷点下40℃を越えると、眼球が凍って目が見えなくなるんですよ。眼球が凍る・・・想像しただけで、だめ。手も感覚が無くなって、岩に手を打ち付けても何も感じないんです・・・・。そして当然凍傷で指を失う・・・・。寒いわ、痛いわで、寒さ倍増でした。 私は山は畏れ多くて遠くから眺めているものだと思っているので、そこに登っていこうという気持ちが解りません。『そこに山があるから』 こんな絶望的な状況から、奇跡的に二人とも生還し・・・・でも、まだ登る・・・・。やっぱり気持ちは理解できませんでした。私は山に入るだけで自分の小ささを感じ,のみ込まれるような怖さを感じてしまいます。この違い・・・生まれ持ったものなのでしょうか。 中で一番心に残った文章・・・絶望的な状況で、死と隣り合わせになり、山野井泰史さんが「死んじゃうかもしれないからな。」と言いながら写真を撮った時の山野井妙子さんの心情・・・「山野井と同じように軽く返事をしながら、しかし私は死なないと妙子は思っていた。確かに体は動かない。だが、頭ははっきりしている。山で死ぬ人はまず頭からやられるのだ、という確信があった。(中略)亡くなった男性隊員は寒さと疲れで生命の中枢をつかさどる神経がやられてしまった。しかし、妙子は手足の指と鼻という末端を犠牲にすることで中枢神経を守りきり、生き延びる事ができた。 今、妙子はふたたびひどい凍傷ができていた。しかし、意識ははっきりしている。死にはしない。一歩一歩しか歩けないだろうが、時間さえかければ絶対にベースキャンプにたどり着ける。たどり着けるはずだ・・・・・・。」この強さ・・・言葉が出ません。 【おまけ】その後、洗い物をしていて、液体石けんが目を直撃し、激痛だったんですが、「眼球が凍る事を思えばたいした事無いわよ。ほら、私は直ぐにお湯で洗えるんだから・・・。」と自分に言い聞かせて耐えました。眼球が凍る事を思えば、けっこう我慢できます