桜咲く！

募るいとしさ、深まる悲しみ　＜犠牲者に思いはせ＞
--------------------------------------------------------------------------------

2005/04/27

　発生から二日目を迎えた尼崎ＪＲ脱線事故。その後も増え続ける犠牲者。「なぜ、あの子が、あの人が、惨事に巻き込まれなければならなかったのか…」。関係者に悲しみが広がった。

　▽川西市の会社経営木戸博さん（７０）　妻には日ごろ「百歳まで生きる」と話していた。親友宮下勲さん（６４）は「孫と旅行するいいおじいちゃん」。

　▽三田市の中村敬助さん（２７）　四月から大阪市のコンピューター専門学校に通学。父は「そっとしておいて」。

　▽西宮市の濱端諒介さん（１９）　中学時代はサッカー部。今年初めのＯＢ会で笑いを取っていた。先輩は「何に対しても熱心だった」。

　▽伊丹市の田中美晴さん（６７）　環境保全のボランティアに熱心。二人暮らしの娘は「ＪＲに対しては今は何も考えられない」。

　▽伊丹市の斉藤満さん（３７）　妻、二人の子どもと四人暮らし。知人は「おとなしい温厚な人」。

　▽宝塚市の薬師佳子さん（２４）　三月にアルバイトから正社員に。弟和也さん（２３）は「認められたと張り切っていた」。

　▽宝塚市の阪本ちづ子さん（５５）　東京の親せきを訪れるため電車で出掛けた。近所の主婦は「地域の世話役のような人」。

　▽宝塚市の喜屋武俊男さん（５６）　大手製薬会社勤務。マイカー通勤だが、たまたま電車に。いとこは「母思いのまじめな人だった」。

　▽宝塚市の稲毛勝さん（５１）　製薬会社の工場長で単身赴任。妻は「亡くなったと知ったのは夕方だった」。

　▽宝塚市の長浜彩恵さん（１９）　同志社大法学部二年。一年次の単位をすべて取得。八田英二学長は「教育者として言葉にできない悲しみを感じる」。

　▽宝塚市の榊原怜子さん（１８）　同志社大に入学したばかり。通っていた市立山手台中の宮谷さちゑ校長は「中学三年間は女子バスケットボール部。サポートするタイプ。何でも前向きにとらえる努力家だった」。

　▽大阪府豊能郡の林田勇作さん（２３）　優秀で気立てのいい学生と評判だった。近所の主婦は「会うと気持ちよくあいさつしてくれる。お母さんから就職活動も順調と聞いていたのに…」。

　▽川西市の小杉繁さん（５７）、靖子さん（５９）　夫婦で出勤中の悲劇。一人息子で、早稲田大生の謙太郎さん（２１）は父にあこがれ、同じ大学へ。就職活動がうまくいかないとき、「大丈夫」と励ましてくれた父。誰からも好かれた母。「残された者として、しっかり生きることが両親の望み」。

　▽川辺郡猪名川町の尾形優さん（１７）　県立川西北陵高校三年生。遠足でユニバーサル・スタジオ・ジャパンへ行く途中の事故。ソフトテニス部の盛り上げ役。森田良典校長は「友人が多く、人気者だった」。

　▽三田市の小前宏一さん（１９）　大阪教育大生。高校進学時から「学校の先生」と決めていた。祖父清一さん（７７）は「これからやりたいことが山ほどあっただろうに。できるなら変わってやりたい」。

　▽川西市の山中克矩さん（５８）　妻、娘二人と四人暮らし。妻は「もっと後ろに乗っていてくれたら…」。

　▽西宮市の会社経営、武部譲治さん（７１）　地元ライオンズクラブ会長などを務めた。嫁は「厳しいけれど愛情にあふれていた」。

　▽伊丹市の勝部晃奈さん（２２）　近所の主婦は「五人で一緒に旅行したり仲のいい家族」。通勤途中だった。

　▽宝塚市の和田明夫さん（５８）　ＰＴＡなどに熱心。よく孫をベビーカーに乗せていた。近所の主婦は「事故前日は夫婦で買い物袋を持って歩いていた」。

　▽宝塚市の竹崎快さん（３１）　犬を楽しそうに散歩させていた。近所の男性は「両親は気丈に振る舞っていたが、やり切れないだろう」。

　▽神戸市の大阪市立大生、平群恭介さん（１９）　野球が得意でいつも笑顔。同級生は「今は何が何だか分からない」。

　▽大阪府高石市の石橋孝広さん（３４）　近所の主婦（３４）は「明るい人」。陸上自衛隊勤務。宿直明けで帰宅中だった。

　▽三田市の樗木愛さん（３６）　長男が四月に小学校に入学したばかり。近くに住む友人の女性は「よく子どもと出掛けていた姿が印象的。友達も多かった」。

---

＜亡くなった方々＞　　（２７午前０時半現在）
--------------------------------------------------------------------------------

2005/04/27

　二十五日発生した尼崎ＪＲ脱線事故で、死亡が確認された方は次の通り。（兵庫県警発表、２７日午前零時半現在、敬称略）

　【西宮市】上垣都（４２）＝生瀬２▽福西千明（６１）＝山口町上山口３▽岡崎美代子（５２）＝名塩茶園町▽山本淑子（５１）＝北六甲台５▽小幡幸子（５３）＝青葉台１▽藤井誠（４５）＝北六甲台５▽濱端諒介（１９）＝名塩山荘▽田中豊子（３０）＝名塩さくら台４▽石井利信（５５）＝北六甲台２▽西野節香（６３）＝北六甲台１▽蓬莱幸子（７３）＝北六甲台４▽川口初枝（４８）＝北六甲台５▽武部譲治（７１）＝名塩南台２

　【宝塚市】尾形和賀子（４１）＝すみれガ丘２▽阪本ちづ子（５５）＝平井２▽長濱彩恵（１９）＝中山五月台３▽薬師佳子（２４）＝御殿山２▽榊原怜子（１８）＝山本西１▽喜屋武俊男（５６）＝中山五月台５▽稲毛勝（５１）＝中山台１▽和田明夫（５８）＝中筋８▽福田和樹（１８）＝下佐曽利字清水ケ元▽竹崎快（３１）＝宮の町▽重森郁子（４５）＝川面３

　【川西市】木戸博（７０）＝水明台２▽早川徹（３１）＝花屋敷１▽市来三佳（２４）＝萩原台西３▽片瀬朗（１９）＝錦松台▽九鬼哲次（３７）＝南花屋敷２▽中井正武（６４）＝水明台３▽山田博子（５４）＝大和東１▽杉山恭枝（３４）＝出在家町２▽原口浩志（４５）＝小戸２▽小杉繁（５７）＝寺畑１▽小杉靖子（５９）＝寺畑１▽山中克矩（５８）＝寺畑２

　【三田市】樗木愛（３６）＝富士ケ丘６▽福田佳奈（１９）＝上青野▽田窪稔（４５）＝けやき台３▽中村敬助（２７）＝けやき台４▽佐々木麻有（２５）＝あかしあ台１▽奥村容子（２１）＝友が丘１▽渡辺貴幸（４４）＝武庫が丘５▽小前宏一（１９）＝大原▽平野智子（３９）＝大原▽福原正之（２１）＝ゆりのき台２

　【神戸市】鈴木恭介（５４）＝北区西山１▽光永美紀子（２５）＝北区西山２▽石井勝（３７）＝北区道場町日下部▽上田昌毅（１８）＝北区有野町唐櫃▽下浦善弘（２０）＝北区道場町平田▽菅尾吉崇（３１）＝東灘区田中町１▽平郡恭介（１９）＝北区鹿の子台北町５

　【伊丹市】岡和生（３７）＝中央３▽斉藤満（３７）＝大野１▽奥村国博（３４）＝藤ノ木３▽田中美晴（６７）＝春日丘６▽篠原拓也（１８）＝大鹿４▽陽田七栄（３４）＝伊丹１▽勝部晃奈（２２）＝瑞原１▽大角正（３４）＝荻野字ヤケ野▽岡本裕美（２７）＝緑ケ丘５▽中西聡（３４）＝中野北１▽大前貴隆（３３）＝西台３

　【篠山市】田中大造（５８）＝篠山市口阪本

　【川辺郡猪名川町】尾形優（１７）＝清水字中久保

　【大阪府豊能町】新城靖枝（４１）＝新光風台１▽林田勇作（２３）＝新光風台３

　【大阪市】池田正雄（５８）＝淀川区加島３

　【堺市】芦原直樹（３３）＝柏木町４

　【高石市】石橋孝広（３４）＝西取石町５

---

死者９１人に
--------------------------------------------------------------------------------

2005/04/27

　ＪＲ福知山線の上り快速電車の脱線事故で、死亡した乗客はほとんどが即死とみられることが２７日、兵庫県警の調べで分かった。とりわけ線路脇のマンションに衝突した１、２両目に多く、１００キロ近いスピードでぶつかった衝撃の激しさを示した。２７日朝までに新たな死亡が確認され、死者は計９１人。１、２両目にはなお閉じ込められた人がいる可能性がある。

---

１両目になお１０数人
--------------------------------------------------------------------------------

2005/04/27

　県警によると、同県尼崎市のＪＲ宝塚線（福知山線）で脱線した快速電車の１両目には、まだ少なくとも１０数人が閉じ込められている。死者が１００人を超す恐れが出てきた。

---

２両目の撤去作業始まる
--------------------------------------------------------------------------------

2005/04/27

　５日に起きた上り快速電車の脱線事故は２７日午後１時までに、計９１人の死亡が確認された。負傷者は４５６人。７両のうち２両目は救出作業がほぼ終わり、撤去作業が始まった。しかし残る１両目には、まだ少なくとも十数人が閉じ込められているとされ、死者は１００人を超す恐れが出てきた。県警は救出作業を急ぐとともに、現場検証も実施している。

---

死者１００人超す恐れ　尼崎ＪＲ脱線
--------------------------------------------------------------------------------

2005/04/27


原形をとどめないほどにゆがんだ車内。衝突の激しさを物語る（神戸市消防局提供）
　尼崎市のＪＲ宝塚線（福知山線）で上り快速電車＝高見隆二郎運転士（２３）、七両編成、乗員乗客約五百八十人＝が脱線した事故で、兵庫県警尼崎東署捜査本部は二十七日午前零時までに、八十一人の死亡を確認した。線路脇のマンションに衝突した一、二両目にはまだ約三十人が閉じ込められているとみられる。県警などが救出を急いでいるが、車内の損壊程度がひどく、犠牲者の数は今後さらに増え、百人を超える見通し。

　犠牲者の内訳は男性四十四人、女性三十七人。負傷者は四百五十六人になった。

　県警や尼崎市消防局などは二十六日午前から、マンション一階部分に突っ込んだ一、二両目の車両をふさぐ格好になっていた三両目をクレーンなどを使って解体、撤去。その後、人命探査装置を使い、マンション一階一、二両目の乗客らの心音や呼吸音などを調べた。いずれも反応はないというが、一階駐車場を二十七本の鉄柱で補強した上、車両の解体とともに、救出活動を進めている。

　先頭車両の運転席では、制服を着た高見運転士とみられる男性が確認されたが、呼び掛けに応じないという。

　一方、ＪＲ西日本によると、事故車両に乗っていた可能性が高いが遺体に該当がなく、連絡が取れないなどとして、家族や知人から安否の問い合わせがあった人が二十七日午前零時現在、五十二人に上ったという。