桜咲く！

原因究明を要求、遺族へお悔やみ状　井戸知事会見
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2005/05/03

　尼崎ＪＲ脱線事故の発生から一週間を受け、兵庫県の井戸敏三知事は二日、会見を行い、「二度とこのようなことのないよう原因究明を求めるとともに、安全・安心な社会づくりに県としても取り組んでいきたい」と述べた。遺族に対し、順次、知事名でお悔やみ状を届けていることも明らかにした。

　知事は「県としては当面、心のケアの相談業務を続け、被害者から特別な相談があれば対応する」との考え方を示した。

　遺族へのお悔やみは「一日も早く事故原因が究明されるとともに、お亡くなりになられた皆様の御霊（みたま）のご平安を心からお祈り申し上げます」などの文面。県内在住で住所が判明している遺族を対象に、各県民局職員が訪問し手渡しているという。県によると、事件や事故、災害などの遺族に対し、お悔やみ状を直接届けるのは初めて。

　また、知事は同日、谷口克己・近畿運輸局長と県庁内で面談。犠牲者への誠実対応などＪＲ西日本に対して申し入れた内容をあらためて伝えた。谷口局長からは、救助活動にあたった警察・消防関係者への感謝が伝えられたという。

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３市１町長が安全対策要望　ＪＲ西に申し入れ書
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2005/05/03

　尼崎ＪＲ脱線事故を受け、川西、篠山、三田、猪名川の三市一町は二日、ＪＲ西日本に対し、遺族や負傷者らへの支援のほか、ダイヤ編成の再点検や乗務員への安全教育など安全を最優先とするよう強く申し入れた。

　同社には、柴生進・川西市長、瀬戸亀男・篠山市長、岡田義弘・三田市長、真田保男・猪名川町長に、それぞれの議長も同行した。この三市一町で事故の犠牲者は三十八人に上っている。

　申し入れ書では、「何の疑いもなく鉄道を利用している人々を裏切り、市民に対して大きな不安を与えた」と指摘。市長らは「乗務員の安全教育より営業を優先したことに心の底から悲しみと怒りを覚える。事故原因の究明に全力を挙げてほしい」と要望した。

　申し入れ書を受け取った土屋鉄道本部副本部長は「ご遺族に心からおわび申し上げたい。早期復旧を目指すので、市民の方々にもご協力お願いします」と述べた。

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保管窓口で遺留品探し　引き取りまだ１／３
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2005/05/03

　携帯電話やかばんなど、尼崎ＪＲ脱線事故の犠牲者や負傷者が車内に残した荷物などが保管されている尼崎市潮江一、ＪＲ尼崎駅西ＮＫビル内の「問い合わせ窓口」には連日、引き渡しのため遺族や家族らが訪れている。しかし、「靴はあったけど、時計はなかった」と肩を落とす遺族も。ＪＲ西日本によると、保管品千五百点のうち、二日朝までに引き取られたのは五百点という。

　就職セミナーに向かう途中、二両目で亡くなった甲南大四年福原正之さん（２１）＝三田市ゆりのき台＝の父義則さん（４９）は二日午後四時ごろ、同ビルを訪れた。正之さんの携帯電話と黒い革靴、友人からプレゼントされたという腕時計を探しに来た。

　義則さんによると、引き渡しの部屋ではビニール袋に包まれた遺留品が、「一両目の棚」「二両目の棚」「車外発見物の棚」―などと発見現場ごとに区分けされ、金属製のグレーの三段式の棚の上に並べられている。携帯や眼鏡、化粧ポーチなどの小さい物が上段、靴などの大きい物は下段に置かれていたという。

　携帯と靴は見つかったものの、正之さんが普段身に付けていた有名ブランドの革ベルトの腕時計だけが見当たらない。「どうしてもあきらめきれない」。義則さんはＪＲ社員五、六人とともに、二両目だけではなく、一両目の棚や車外発見物の棚を三十分ほどかけて探した。でも、見つからなかった。

　ビルを出た義則さん。「靴はきれいでしたが、携帯に血がついていました」と静かに話し、「家に帰り、まずは携帯電話の電源を入れてみます」と言葉少なだった。（小林伸哉）

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ＪＲ幹部が沿線自治体の首長らを訪問、謝罪
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2005/05/03

　尼崎ＪＲ脱線事故で、ＪＲ西日本の徳岡研三専務兼鉄道本部長ら幹部が二日、尼崎、伊丹市役所を訪れ、市長らに対し、多数の犠牲者やけが人が出たことをあらためて謝罪した。

　尼崎市は四月二十八日、被害者や家族、被害マンション住民への迅速な対応、市と住民への速やかな情報提供など五点を同社に強く申し入れている。

　白井文市長は「要望後、ＪＲ社内に市との情報窓口が設置され、助かっている」とした。だが、救助活動初期の段階で、近隣住民によって搬送された負傷者の情報を、市が把握できなかったことに触れ、「各病院に詰めているＪＲ社員からの負傷者情報が地元に伝わらなかった」と指摘した。

　十八人の犠牲者を出した伊丹市には、ＪＲ西日本の橋本光人大阪支社長が訪れた。藤原保幸市長が被害者への対応をただすと、橋本支社長は「誠実に対応させていただきたい。トップを中心に体制づくりをしていく」などと述べた。

　ＪＲ西日本によると、徳岡専務ら幹部が同日、西宮、芦屋などの市役所と消防本部を訪れ謝罪、乗客救出活動に感謝の言葉を述べたという。（竹内　章、太田順尚）

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娘亡くした藤崎さん　遺族連携呼び掛け
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2005/05/03

　尼崎ＪＲ脱線事故で大切な人を失った思いを分かち合おうと、事故で娘を亡くした女性が二日、ＪＲ西日本本社を訪れ、他の遺族と連絡をとり合うため、犠牲者名簿の提出を求めた。

　遺族同士の連携を呼び掛けたのは、藤崎光子さん（６５）＝大阪市北区。娘の中村道子さん（４０）＝川西市＝は、藤崎さんが経営する印刷会社に向かう途中で事故に遭い、夫重男さん（４７）と一人息子の海里君（１４）を残し、世を去った。

　同社総務部は「プライバシー保護の観点から名簿は出せないが、思いを伝えるために協力したい」と回答。藤崎さんは遺族あての手紙を、同社を通じて全遺族に届けるよう求めている。

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＜尼崎脱線事故＞新型ＡＴＳの設置基準を作成へ　国交省

　国土交通省はＪＲ福知山線の事故を受け、速度超過に対応する新型ＡＴＳ（自動列車停止装置）の設置基準を作成する方針を固めた。これまでは、赤信号を通過しないようにするためのＡＴＳ設置が義務付けられているだけだった。同省は設置基準作成に向け、私鉄を含めた全国の鉄道についてＡＴＳ設置状況の調査を進めている。
（毎日新聞） - 5月3日9時3分更新

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＜尼崎脱線事故＞１両目後部も「コの字」に曲がる

　ＪＲ福知山線脱線事故で、マンションに激突した快速電車の先頭車両は車体前部が同マンションの駐車場に先頭から突っ込み、車体後部はマンション外壁に「コの字」型で巻きつくようになっていたことが分かった。２日の第４回国土交通省事故対策本部会議で、国交相政務官が現地の状況として報告した。
（毎日新聞） - 5月3日9時21分更新

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＜尼崎脱線事故＞ブレーキレバー、非常位置で停止　事故調

　兵庫県尼崎市のＪＲ福知山線脱線事故で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は２日、事故を起こした車両の運転席のブレーキレバーが「非常ブレーキ」の位置まで押し込まれていたと発表した。衝突の衝撃でレバーが押し込まれた可能性もあり、事故調は、死亡した運転士（２３）が操作したか詳しく調べる。
（毎日新聞） - 5月3日9時23分更新

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＜犠牲者に思いはせ＞
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2005/05/03

　尼崎ＪＲ脱線事故から一週間。きょうも事故現場で手を合わせる人々の姿は絶えない。愛する人を失った悲しみ、怒り、悔しさ…。思いは日ごとに募っている。

　▽三田市の沖芳国さん（３５）　「息子がこんなに愛されていたとは知らなかった」。父剛さん（６９）＝大阪府枚方市＝はぐっと唇をかみ締めた。

　芳国さんは十年ほど前から、三田市内の美容店「チャンネルヘアー」の店長を務めていた。葬儀にはお客さんや美容師仲間ら二百人以上が参列。「七年間カットしてもらえて本当によかった」「沖さんのこと忘れません」と、友人らが用意した色紙に哀悼のメッセージが書きつづられた。

　事故の日、自宅から大阪への研修に向かうため一両目に乗った。「普段は車なのに、この日に限って…」と剛さん。

　昨年四月、仲の良かった兄（４１）を病気で亡くし、哀悼旅行と称して両親を琵琶湖の旅に連れて行ってくれた。「心やさしい自慢の息子でした。向こうでも兄弟仲良く、ゆっくり休んでほしい」。笑顔を見せようとする剛さんの目が涙でうるんだ。

　▽伊丹市の大前貴隆さん（３３）　自宅近くに住む女性によると、両親との三人暮らし。大前さんの両親が「休みの日、息子が食事に連れていってくれた」とうれしそうに話していたのを覚えているという。「親孝行な人。こんな身近な人が亡くなるなんて…」

　▽川西市の山本真大さん（２９）　出勤中に事故に遭った。身元が確認されたのは事故から三日後だった。幼なじみの漆崎慎也さん（２９）＝神奈川県相模原市＝は、ゴールデンウイークに帰省し、久し振りに会う山本さんに、五月に結婚することを伝える予定だった。漆崎さんは「高校時代は一緒にミニバイクに乗って、よく図書館に受験勉強に行った。親友に結婚を報告したかった…」。

　▽伊丹市の大角正さん（３４）　専門学校を卒業後、「日本料理の魅力を伝えたい」とエジプトや中国へ渡り、日本料理店で腕を磨いた。白髪の目立ち始めた母依子さん（６６）に、中国で買った白髪染めを黙って渡すような優しい性格だった。昨年末に帰国後、大阪市内の料理店に勤務。「行ってきます」と自転車で駅に向かう正さんに依子さんが「スピード出しすぎたらあかんよ」と声を掛けた。これが最後の会話になった。

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献花台に途切れぬ追悼の列　悲しみと怒り深く
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2005/05/03

　発生から一週間を迎えた尼崎ＪＲ脱線事故。少しずつ日常を取り戻し、現場の車両撤去なども進む一方で、遺族らにとって、時間は止まったままだ。献花台前では二日も追悼の列が絶えることはなく、悲しみと憤り、悔しさが交錯した。

　現場南の献花台。事故で幼なじみを亡くしたという三田市の大学三年生安田知広さん（２０）は「夢ちゃうかなと思っていたが、告別式で本人の顔を見て、亡くなった事実を実感した。家族をよく知っているので、本人も向こうに行って心配していると思うとつらい」と唇をかんだ。

　現場近くにある大成中学校の生徒会メンバー三人は、教員に付き添われ生徒らで作った折り鶴を持参。今後も全校生徒で折り続ける予定という。

　尼崎市の男性（７８）は、妻（７３）が信楽鉄道事故の際に軽傷を負ったことから、「二度とこんな事故が起きないようにお願いしたい」と特別な思いで花を供えた。脱線事故後、妻は信楽の事故を思い出してニュースを見なくなった。

　救助を手伝った尼崎市中央卸売市場で働く男性（４１）は「血まみれの人を運ぶので精いっぱいだった。ＪＲ社員の中には現場の写真だけ撮って、救助を手伝おうとしない者もいた。許せない」と憤っていた。

　東日本旅客鉄道労働組合の吉川英一東京地方本部書記長（４４）は組合員十一人とともに訪れ、「ＪＲ西日本の体質はグループ各社の労組で問題になっていた。私鉄との激しい競争のしわ寄せが日勤教育のような非人間的なシステムを生み出したのだろう」と指摘。ＪＲ西労の書記長ら三人も献花に訪れた。
（石沢菜々子、段　貴則、山岸洋介）