The Life Style in The New Millennium

2015/08/08(土)11:45

彼女は、若い頃からメルセデス・ベンツに乗りたかった

ショートストーリー(1475)

ベンツの女 主婦の早苗は、若い頃からメルセデス・ベンツに乗りたかった。 平凡なサラリーマンの夫と結婚して、 すぐに子供が二人できた。 子育てで忙しくて大変だったが、 ベンツの夢は捨てなかった。 二人の子供が小学校に上がって子育ても一段落したのをきっかけに 自宅で着付け教室を始めた。 もちろん、ベンツを買うためだ。 夫には、家計を助けるためと言っておいたが。 パソコンで作ったチラシを100枚ほど近所にまいたら、 5人の生徒が集まった。 3年ほどして、口コミで10人になった。 おかげさまで、ベンツの頭金くらいは貯まった。 さて、夢が叶う。 でも、 夫に相談すると、根っからのサラリーマンの彼は きっと反対すると思った早苗は事後承諾ということで 白のベンツを買うことにした。 納車は土曜日、その日の朝、夫と目が合った。 夫は、申し訳なさそうに言った、 「家で着付け教室までして、家計を助けてくれているおまえに 申し訳ないが、俺の夢だったんだ・・・今日、うちにベンツが来る」 「ええ・・・あなた・・・」 「すまん、言おう言おうと思っていたのだが、おまえが、 毎日、頑張っているのを見ると言えなかった・・・すまん・・」 「いええ・・・あなた・・・実は私もベンツ買ったの・・」 「ええ」 「私は白の・・・、あなたは?」 「俺も白の・・・」 「あら、車種まで同じ」 その日から、早苗の家には仲良く二台のベンツが並ぶようになった。 怒っているのは子供たち、庭がなくなってしまったのだ。

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