【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

フリーページ

2007年12月01日
XML
カテゴリ:旅 / 小さな旅
ヴァンジの大男たち         
 ----人間にある限りない未来
         
時折雷鳴の轟く激しい雨は、
レストランを出る時にはすっかりあがり薄日が差していた。
エントランスの壁のタイル絵を横に見て庭園に入る。
ふかふかに茂った芝生は雨を吸ってか、
生き生きとして真っ直ぐに伸びている。
ぬかるむことのない広々としたなだらかな斜面に、
ヴァンジの彫刻が点在していた。

物干し竿を数十本も突き差したような、
そんな中に見上げる程の大男が歩いている。
いや、動いているわけではないが、
本当に歩いているように見えるのだ。

傍に立つと、私は小さな子供ほどになってしまう。
普段、人の顔をしげしげと観察することはないが、
彫刻となれば別、遠慮することなくじっくり眺める。
その表情の豊かさに驚く。
ある時期から、人間をテーマにおいたというヴァンジならではだ。

その顔の殆どは左側に膨らみを持ち、右側の頬肉は少ない。
人間の顔は左右対称ではないから、
自分はどっちだったか・・と思わず水に映してみる。
骨格は頑丈で日本人とは異なる体躯。
勿論、作品としてのデフォルメはあるが、
その多くは彼と同じイタリア人がモチーフと思える。

ユーモラスな大男があちこちにいて楽しい。
塀を攀じ登るかと思えば、ガラスに顔をへばりつけ、
横たわり、そして屹立する。
そのどれもが、大きな眼球を持ち遥か遠くを見詰めている。
ヴァンジは、人間に限りない未来のあることを信じ、
願い、祈り、それを伝えているのだろう。

館内の作品は、リアルな表現で度肝を抜かれるものもあるが、
素材の美しさに目を奪われる。
ことに、
石そのものの美しさを余すところなく生かしきった、といえよう。

中でも、椅子に掛けた女性像は、
三種類の、美しい見事な御影石で作られていた。
一つは頭部、もう一つは花柄の薄いピンクのワンピースに見立てた胴部、
そして脚部と使い分けられている。

しかも、見る角度によって、観者は三人に出会える。
像の左後ろに立てば初々しいおかっぱ頭の少女に、
正面近くからは妊婦に、
そして左前からやや右背後に至れば、
ロッキングチェアーに掛けて寛いでいるような優しい老女に、である。

さすが、ミケランジェロの再来とも評され、
イタリアを代表する現代彫刻家ジュリアーノ・ヴァンジである。

いつかまた、ユーモラスな大男達に会って、
一緒にのんびり遠くを眺めたいと思う。
もしかしたら、
彼らは時空を超えてゆっくりと歩いて来るかもしれない。
それは私の一大傑作の生まれる時だろうか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

更新をオサボリするうちに、もう師走!
今年もあと1ヶ月。

なまけていた間にも、
お訪ねくださって有難うございました。
お寒くなりました。皆様ご自愛ください。

raku-sa
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2007年12月01日 22時09分36秒
コメント(3) | コメントを書く
[旅 / 小さな旅] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
別の画像を表示
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、こちらをご確認ください。


 Re:ヴァンジの大男たち・・クレマチスの丘        (12/01)   しっぽ2 さん
お久しぶりです。
だいぶ前の話なのですが、箱根に行った時、彫刻の森美術館で丁度ヴァンジ展を開催してたような記憶があります。
その時は特別な想いは残らなかったのですが、今こうしてraku-saさん的ヴァンジに出会うと、あの日の記憶が甦ってきます。
ありがとうございました。
(2007年12月02日 09時30分54秒)

 Re:ヴァンジの大男たち・・クレマチスの丘        (12/01)   カズ姫1 さん
お久し振りです。
お元気そうでなによりです。
ヴァンジの作品堪能されたようですね。 (2007年12月06日 06時34分50秒)

 Re:ヴァンジの大男たち・・クレマチスの丘        (12/01)   モモタロウ さん
「ある時期から、人間をテーマにおいたというヴァンジならではだ。」
 最近、美術でも小説でも映画でもテレビのドキュメンタリーでも「人間」を登場させていても「人間をテーマ」にした作品が少ないように感じます。
 ヴァンジ、知りませんでした。ミケランジェロやロダンは好きなのですが。
 (いつも美術を鑑賞するときは、作者の名前もタイトルも説明もろくに見ず、無手勝流な見方なのですが)以前、西洋美術館で、片腕のもげたギリシャだったかローマ時代の男性像を見ましたが、そこから発するエネルギーに驚嘆しました。数千年生き残っているものは違う ―圧倒されました。
 raku-saさんの文を読んでヴァンジを(もう見てるかもしれませんが)ぜひ意識して見たいと思いました。
 現代人は精神と肉体を分離して見がちですが、彫刻は(とくにすぐれたものは)、身体に魂(精神)を“みる”いい訓練にもなると、ぼく自身は思っています。
(ブログ、なんとなく再開しております。休止の意図と異なり、ホームベースとなるホームページ(?)できておりません。言行一致せず失礼いたしました)
(2007年12月12日 11時44分25秒)

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

raku-sa

raku-sa

お気に入りブログ

2294. いつの間にか… New! カズ姫1さん

今日の天気・・・・… New! ニッチョさん

◆鎌倉つつじ・ふじの… @nagasiさん

地方暮らしが変える1… かじけいこさん
古稀琉憧(元昼寝の… しっぽ2さん
とし坊の青春 としひでちゃんさん
MAYU Healing Voice… MAYULOVECOMさん
情報NOW-ファッ… 楽天情報5303さん
たか・たか・たかし _たかし_さん
KIMさんのおうち ゆなママ2003さん

コメント新着

 わだつみ判官@ Re:人生の開拓者に  (11/10) 不景気、そして雇用不安の社会にあって、…
 百太郎@ 『人間賛歌 生きているから』拝読しました。 とても感銘を受けました。 具体的な感…
 百太郎@ Re[2]:「生きているから」(08/15) raku-saさん お忙しい中、コメントの書…
 raku-sa@ Re[1]:「生きているから」(08/15) 百太郎様 お久しぶりです。 お訪ねく…
 百太郎@ Re:「生きているから」(08/15) たいへんご無沙汰しております。 以前…
 カズ姫1@ Re:お雛さま(02/11) お久し振りです。 節分が終わると、今度…
 わだつみ判官@ 明けましておめでとうございます。 お忙しい日々をお送りの事とは存じますが…
 モモタロウ@ Re:ヴァンジの大男たち・・クレマチスの丘        (12/01) 「ある時期から、人間をテーマにおいたと…

© Rakuten Group, Inc.