愛すること―ハニー♪とワンダーランド2

mie mikonos






2002年10月26日

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「深夜3時・外は雨・雨に唄えば♪」
 紙切れを眺めながら、先日知り合いからもらった宮崎の大麦焼酎を「ロックで飲むのをお薦めしますよ」との助言を忠実に守りながら、柿ピーナツなんぞをかじりながらニタニタしている。
紙を眺め、焼酎舐めて、柿ピーかじる。
この繰り返し。たまりませんな~~。
紙切れとは、「○○○病院 健康診断結果通知書」である。
昨日昼、郵便ポストからいち早く取り出し、昨晩ひそかに起き出して、厳かな儀式のごとくハラハラドキドキしながら開封した。
まっさきに眼をやったのは、UAだ。
んんん??お、おう!さ、さがっておる!!!
アタシはコブシを握り締め、深夜のおごそかな儀式のクライマックスのごとく、盛大なゴスペルの歓喜の声がアタマのなかで鳴り響いた。
もしくは、ややくだけるが、長い長いトンネルを抜け出した炭鉱夫が歌う。
「つ~~きがぁ~~、でぇ~たでぇ~たぁ」
は~~のよいよい!!であ~~る。
「うるさいっ!」
は・・・はい・・・なんや・・ねずみの寝言かいな、あ~~びっくりした!
UAって、ご存知ですか?
ユナイテッド・オーストラリア・・・じゃなくってよ!
尿酸、、、、、そう、痛風の基準になる、あれよ。あ~~・・思えば長い自己との戦いだったわ。ちょっと医学図鑑の項目なんぞ見てみたらビビリますのよ・・・。
【尿酸は細胞の燃えカスでプリン体からできています。身体のなかで作られたり、尿からの排泄が少なくなると血液中の尿酸の量が増えると
関節に沈着し、痛風発作を起こします。
高値を引き起こす原因はタンパク質のとりすぎや過度のアルコール摂取などです】
親切な言葉で書いてるけど、嫌なおどし文句だわね。風が吹いただけでも痛い・・・あれですのよ、あれ。
昨年の冬を思い出すわぁ~~・・・・。

それはそれは木枯らしの吹く日でした―――。
「せ、先生・・・・・これって・・・もしかして、もしかして・・・整形じゃなく、あっちのほうでしょうかぁ~(泣き顔)」
アタシは仲間に抱えられて、ほうほうの体で診察室にたどりついていた。
若い医師の背後に立つ同級生の看護婦が笑いをかみ殺している。
アタシはこいつを殺してやりたい気分だ。
なんでって・・?このオナゴめはアタシの診察券を見るや否や地下にいる妻をいち早く呼びに行ったのである・・・。そういうわけで、瀕死のアタシの背後で鬼の首をとったかのような顔で仁王ダチだ。
二日間アタシが立つこともできなかった左足のふくらはぎを押さえながら医師の沈黙。
――も、もったいぶらんと、はやく言うてくれぃ~~。覚悟はもうできてます(泣)。せ、せめて、アタシの後の鬼を追い出してくれんかなぁ~~・・・・・(泣)あんた勤務時間中じゃなくって・?・・減給よ!(泣)・・・・・。
「・・・・ああ、痛風ねぇ・・いや、これはただの捻挫でしょ?どうしてなったか記憶にないですか?」
「さぁ~~・・・・・?あっ、サッカーしてまして、久方ぶりにしたので、痛めたのかな?」
「ああ、サッカーを・・・?」
「先生、一応血液測ってみましょうか?」
間髪いれず、背後から聞きなれた声がする。
ほらきた!だから、はやくこの女追い出せというのに!そして、ほぼ同時に医師の背後の女がたまりかねたように噴出し笑いころげた。
う、動けるものならけり散らしてやるところだわ・・お、おまえらなぁ~~(大泣)・・・。
 まさか、まさかではあったが一応安堵した。
しかし、この痛さはハンパじゃない。
結局、杖を借りて地下の検査室へ降りた。
妻に血をとられた人、この世で何人いるのかしら・・・?アタマはまっ白だった。
で・・・・・「判定は、限りなく黒に近い灰色ということですね」アタシは犯罪者か?
石膏で足を固められながら、アタシは気がかりでしょうがないことがあった。
「・・・で、先生・・・再来週から、ちょこっと、旅行の予定なんですが・・」
「え?スキー旅行とか言うんじゃないでしょうね・・・?」
「先生冗談きついわ(泣笑)。たんなる旅行ですよぉ~~」検査終えて、またまた付き添ってきた鬼妻を横目で見つつ、祈る気持ちだ。
「移動は歩くこともありますか?」
「あります、あります・・・どうなんでしょうか??」
「靭帯ですからね・・・安静にしてて回復するのが2,3週間ですけど・・・どのくらいの旅行ですか?」
「え~~と・・・2週間くらいです・・」
「えっ!????」看護婦まで、揃えて言わんでよろしっ(怒泣)。
「研修かなにかですか?」
「遊びです!!!」あっ・・・またまた鬼が口を開きましたか・・・・・あ、あなた、白衣の下の、ずいぶん大きくなったお腹さすりながら言わないでくださいます・・・・・(泣)。
「もうすぐ生まれるんでしょ?」
あきれ顔の看護婦、うるさいっ!(怒泣)。
・・・・で、回復の状況を待つ、というありきたりの診察と湿布と痛み止めを処方する、ということで長い長い一日が始まり、終わろうとしていた。
「・・・で、どちらへ行くんですか?」
「・・・・カメルーンです・・・・」
「えっ!!???」だから、看護婦は同時に叫ぶな、言うてるやろっ!!
医局でクスリをもらうとき、事務局で支払いをするとき、冷ややかな視線があちこちから向けられていた。そして、仲間どうしでささやきながら、クスリと笑うのだ(シャレではありません)。こ、殺しておけばよかった、看護婦め。
サイアクの一日の終わりと始まりだった―――――――。

 ――――思わず、回顧しただけでも、ゾッとするわい。酒はココロなしビールは控え、焼酎に切り替え、しかし物足らなくてウイスキーに変えたけど(爆)。でも、ドッグ入りの1週間断酒しただけで、見事に数値さがるのかいな。
アタシは大もうけしたダイヤモンド商人のような居心地で、深夜に祝杯をあげていた。
風がやんだようで雨になった。
雨に唄えば♪のメロディを口ずさみながら缶ビールをそっと冷蔵庫から取り出した―――。




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2002年09月30日

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-風の回廊-晴れた日に、ついに妻は家を出ていった・・
 それはそれは、爽やかな秋空の下だった。
自然界は、秋は豊潤な生と死と再生の季節だ。
ケ(気)とケガレ(穢)の循環装置であるハレの行事を通じて自然と共に人も営んでいく。
コオロギたちも愛のささやきを繰り返す。
そんな、そんな晴れたある日の朝に、ついに妻は家を出ていってしまった・・・・・・・・。
幼い乳のみ児を抱いた私たちとまだか弱い二人の娘を置いて・・・・・。
抱いたつぶらな瞳の我が息子は、異変に本能で察知したかのように泣きじゃくった。
雄叫びのような泣き声に、妻は何度も振り返りながら、何度も何度も振り返りながら、微笑むだけで無言で手を振り、バスに乗り込んだ。
 私はその瞬間を、人知れず心のなかで力強く力強く、拳を握り締めていた・・・・・。

 昨夜、コオロギがあちこちで秋夜の恋のささやきを繰り返すなかで、妻は荷物支度に追われていた。
「ホントウに大丈夫なんでしょうねぇ?なんか気乗りしないままパパがイケッていうから」
「何を言いよんな!仕事、育児、小姑、それになにより大変な妻(笑)の役目から解放してやろう言うとんやないかっ・・後のことは心配せずに楽しんでおいでよ、こういうときのためにアタシがいるんじゃなくて??」
「でも・・なんか釈然としないのよね、職場の研修旅行なんて、気乗りしないし」
「アホウ!!ただで2泊贅沢三昧させてくれる病院なんかないぞ!夜勤や外来の事務員さんらの分も代わりに楽しんできてあげて!」
「・・・パパ。ありがとう・・気持ちだけで嬉しいのに・・」なんて最後の言葉だけは無頓着な妻が言うわけは・・ない________。

 「さあ、お母さん行ってしまったね♪今日からパパと仲良く、楽しく、愉快に過ごそうね」
「パパ・・・なんで母さんおらんようになるのに、そんなに嬉しそうな顔するん?」
 ねずみ・・母さんおらんからいうて、パパガミガミ言わんから心配するな♪
あなた、ギリギリまで母さん説得(笑)してたの知ってますよ・・・・・。
「母さん、、、お熱あるみたい?大丈夫?旅行やめといたら・・・・」
あのね、ねずみちゃん、母さんお熱なんてどこにもありませんっ(笑)・・・あるとしたら浮かれ熱かなぁ~~。
でも引き止める理由がわかりました(笑)
「なんで、母さんだけ!【ユニバ~~サルスタジオッジャッパァ~~ン♪】行くん???」
あなた、フルネームで妬まないでくだいます?
 わんわん、こういうときこそ長女!の本領発揮してよ、ね♪弟の面倒みてよね♪
・・・・で、あなた、今朝も!お花にお水あげましたっけ?犬の散歩は?コラショしましたかいな?ピアノの練習は?トホホ・・・あなたあいかわらず自分のことも!他人ごと??
そのくせニコニコのんびり質問なさらないでくださいます?
「パパァ~~♪お昼ごはん、なに♪?」
 くまクン・・あなた昨日は運動会。
プログラム2番「お父さんお母さん大好き」のときに、お遊戯してる途中で寝ちゃいましたわな?とても恥ずかしかったわ!なにが?じゃないわよ!お父さんそっくり!という会場あちこちからの嘲笑の渦よ!!(笑)
で、なんで今日は寝ないの?ま、また眼が合うたからいうて、ニヤッと笑って突進してこないでくださる!あ・・・あなた前世は白サイ??
 でも、あなたたちホントウに性根がやさしくて、ホントにしよい子たちだわ。
三日間、楽勝!楽勝!!
パパ・・・来年の秋口には母さんにこう言おうと思ってるんだ・・・・・・・・・。
「母さん・・・・・・去年、チビまるが1歳になったばかりで大変な時期に、しかも!、行事や家業も超多忙のときに、あなた子供たちを置いて・・旅行に行きましたよね??
パパも人生という重い荷物を海に捨てに、そして明日からの!子供たちの未来のために!家庭の柱でありつづけるために!
走りつづけてきた人生のストッポッチを止めにですね・・・・アフリカへ行かせて欲しいんだけどなぁ~~~~~♪」

 そんなことを胸に秘めつつ、今日もとても晴れた朝のベランダ。
♪振り向いた坂道、
涙さえみせずに去って行った。
遥か遠い日の後姿
なんてやさしく蘇る♪
 ちびまるの布おむつを干しながら、さわやかな秋の風に包まれて、
ついつい「風の回廊」なんぞを口ずさんでいた______。











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