ふゆゆん亭

2009/01/27(火)00:30

「水銀奇譚」牧野修著 感想

本(203)

●読んだ本● 「水銀奇譚」牧野修著 理論社 ■あらすじ(扉より抜粋) シンクロナイズド・スイミングに打ち込む香織には、 現実の高校生活より、 水の中のほうがリアリティがある。 肉体をコントロールし、 完璧な演技をすることがすべての世界。 すべては雨と、 連続して発見された溺死体から始まった。 死んだのは、 香織の小学校時代の教師や友人ばかり。 当時の記憶が、 鈍い痛みとともによみがえってくる。 「選ばれし者」だけが入部できる秘密のクラブ、 錬金術やオカルトにくわしい美少年の謎の失踪……。 やがて、 香織の身にも奇妙な出来事が次々と襲いかかる。 鋭利な言葉と奇抜な発想で異世界を構築する 牧野修がはなつ 青春ホラー・ミステリー! ■感想 香織の感情を切り離したような 冷たく排他的な思いが ひどくきつく感じた。 プロットは面白いのだが そんなに恐くないホラーだった。 香織の排他的な所の方が よほど恐かった。 そんな香織が 皆を救おうと立ち向かうあたりが それまでに持った香織の人格と 違うように思えた。 自分一人が満足していれば 他人なんか関係ないと シンクロのパートナーに 合わせる事を全くしない香織が 皆のために闘い出したのは 何故なんだろう? その辺が 私には読み込めていないのかな? 桐生薫の行動も ホラーらしいと思っていたら 最後に突然丸く収まったので 何か拍子抜けした感があった。 人はそんなに変わるものか? そんなに急に? 友人達の性格も 一貫していない感じを受けて 何か、 すっきりしない思いが残った。 ストーリーとしては面白かったのだが 登場人物の性格と行動が 時々一致しない感じがもったいない。 真の科学クラブの所は とても面白かった。 小学生の時にこんな仲間がいたら さぞかしスリリングな思いをするんだろう。 それにしても香織の孤独な青春は 淋しくて虚しいんじゃないかなと思ってしまった。 そんな香織の成長記でもあるのだろうな。 事件の後は 心の奥に秘めていた 人のぬくもりを求める香織が 生きて行くのだろうか。 淡々とした描写が 読み易くて面白かった。 香織や薫がなかなか魅力的だった。 だからちょっともったいない。 ハッピーエンドなのに 哀しい感覚が残っている。

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