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逃げる太陽 ~俺は名無しの何でも屋!~

一年で一番長い日 37、38

世の中には、やりたくなくてもやらなければならないことがある。

今の俺にとっては、頭脳労働。苦手だからと放置することは出来ない。
こんな俺に誰か良い助言をくれないものだろうか。

オシムの言葉

言葉をもらっても、結局は自分のことは自分で解決するしかないんだけどさ。

「俺をビリヤードの球みたいに扱ったかどうかは別にして、何で俺にかかわってきたんだろう? どう考えてもこれまでの生活に接点が無いよ、高山親子とは」

「あなたが覚えていないだけかもしれませんよ」
「意地が悪いな、お前は!」
俺は智晴を睨みつけた。

「可能性を指摘しただけですよ。たとえば、今日すれ違っただけの人をあなたは覚えていなくても、向こうは覚えているかもしれない。そういうことです」
そりゃそうかもしれないけど・・・またもや言い返せなくて、おれはムムムと息を吸い込んだ。と。

ぐぐぐ~~~!

「今の、何の音ですか?」
「・・・」

俺はへなへなと力が抜けそうになった。そういえば今夜は<サンフィッシュ>でジンフィズ飲んで、チョコレートを摘んだだけだったな。あと身体に良さそうなのってジンジャーコーディアルだけだし。そういえば、昼も暑くてあまり食べてないような。

「・・・夕食は?」
「いや、その。うーん、まだだったかもしれない」
智晴は呆れたように息を吐き、携帯を取り出した。


智晴がケータリングを頼んでくれたピザは美味かった。

「ピザ工房」■もちっとベーコン■ 豪華チーズたっぷりをサンドしたカプリッツァタイプ

チーズが重いんじゃないかと思ったが、先に入れたアルコールのせいか胃が活性化しているらしい。サイドメニューの冷たいビシソワーズも味が良い。

「美味いな、このスープ。俺、この手のものでこんなに美味いの食べたことない」
「友人の店に頼みましたからね。その辺のインスタントものとは違いますよ。普通はケータリングなんかしてくれません」

食後にポットから温かい飲み物を出してくれながら智晴は言った。ピザと一緒に届けられたポットは、ユーモラスな猫の形をしている。

ネコの魔法瓶(サーモキャット)

「はい。消化を助けるハーブティー。夏向きのブレンドらしいですよ」
「ピザにはビール・・・」

「ダメです。今夜はもう飲んできたでしょう? 身体が資本な仕事をしているくせに、何を言ってるんですか。あなたが倒れたら、ののかちゃんが泣きます」

元・義弟に睨まれて、おれはずずっとハーブティーをすすった。爽やかな味と香りがする。確かに、今の俺の身体にはビールよりもこちらのほうが合うようだ。

ポットの猫が、ほらね? とばかりにニッと笑ったように見えた。

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prisonerNo.6は片手を押さえた。痛い。さっき重いものを持ったせいで、昔の腱鞘炎が少しぶり返したようだ。大したことはないが、キーボードを打つには少々不都合である。
prisonerNo.6はごみ捨てのマナーがなっていなかったあのガキ共を呪った。火箸で拾っても拾っても捨てられるゴミと空き缶。○年以上も前になるのに・・・と暗い気分になる。ボタニカルズのハーブティー、『最近笑顔を忘れていませんか』でも飲みたいと思った。『身体が疲れていませんか』なら家にあるのに、微妙に外れている。人生ってそんなもんさ、とprisonerNo.6はニヒルに笑った。

ボタニカルズハーブティー「最近笑顔を忘れていませんか」パーミント、リンデン、レモンバーベ...


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ふう、と満足の溜息をついて、俺はカップを置いた。ハーブティの爽やかな後味が、ピザのこってり感をぬぐい去ってくれたようだ。

「ごちそうさま」
ここは素直になっておく方がいいよな。そう思って俺は智晴に頭を下げた。

「どうしたしまして」
智晴はポットの中身をきれいに洗った小鍋の中に移しかえながら答えた。

「冷蔵庫に入れておきますから、明日また飲んでください。冷たくしても美味しいし、身体に良いお茶ですからね」
「けっこう所帯染みてるな、お前・・・」
「しょうがないでしょう。他に入れておけそうなものがないんだから。ポットは返さないといけないし」

猫のポット、ちょっと欲しいかも。ののかが喜びそうだ。どこに売っているのかな・・・。いや、無駄遣いはしてはいけない。今は目の前の問題だ。

「あのマンボウのピアスの意味は何なんだろう?」
俺は疑問を口にしてみた。
「元々の一対ではないと思うんだ。石の色が違うから」

「そうですね。一対なら普通は同じ色です。別の一対の片方ずつか、それぞれ片耳用ピアスだったか。そのどちらかだと考えるのが妥当でしょう」

「高山葵の大学の友人たちの話によると、彼は青い石の方をつけていたらしいんだ。だが、高山・父が言うには、居所の分からなくなった葵の部屋のベッドに残されていたのは赤い石の方で、俺が預かったのもそっちだ」

「僕の見た彼の写真そっくりな女は、赤い石のマンボウ・ピアスをつけていました。・・・そういえば」
智晴はハッとしたように俺の顔を見た。

「今夜あなたが会った女は? ピアスをつけていましたか?」

俺はうっ、となった。
「覚えてない・・・」
智晴は目を逸らせてわざとらしく溜息をついてみせた。

「お前、今、使えねぇ、って思っただろ?」
「ま、済んでしまったことは仕方ないですね」

ってことは、やっぱり『使えねぇ』って思ったってことじゃないか。

「そうですね、バナナの皮よりは使えるんじゃないかなと思ってますよ」

完熟バナナ ドアストッパー

智晴のイヤミに、俺は鼻を鳴らした。

「俺はただの何でも屋だからな。人探しは専門じゃない。猫のもようならすぐに覚えるぜ」
「それって自慢になると思いますか?」

「思う!」
俺は即答した。犬猫の特徴ならすぐに覚えられるし、お蔭で不明ペット探しは楽勝、とは言わないが、得意とする方だろう。

「いいですけどね、あなたがそう思っているなら」
智晴はやれやれとでもいうように肩をすくめた。
「面白い能力ですよ。世の中、役に立たない意味のないことも多いですけど」

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