2007/04/25(水)04:44
一年で一番長い日11111ヒット記念 はんぺんの冒険 たぶん完結編
「クールダウン・・・」
サカバヤシはまたがっくりと項垂れる。
「俺、そのクールダウンが下手で・・・ なかなかコントロール出来ない。熟練した人は呼吸ひとつでオンとオフを切り替えることが出来るけど、俺は・・・」
最終兵器彼氏。
取り扱い厳重注意。
「こんなんだから俺は、本当に気をつけないと、肩がぶつかっただけで相手を投げ飛ばしてしまうかもしれない、いや、投げ飛ばすだろう」
「でも、そうやって自分のことはちゃんと自覚しているわけでしょう?」
俺は身体を縮こめたままのサカバヤシに言った。
「なら、いいんじゃありませんか? 特に、今回はあなたのその過敏な反応のお陰でこの子が助かっただから、そんなに悲観しなくてもいいと思います」
「そ、そうかな・・・」
「そうですよ」
答えながら、俺は膝の上の夏樹の顔をのぞきこんだ。
「ねえ、夏樹くんはサカバヤシさんのこと、きらいかな?」
「ううん。すき! だって、はんぺんのこと助けてくれたもん。サカバヤシのおじちゃん、ありがとう!」
ぴかぴか光るような子供の笑顔。サカバヤシのおじちゃんは、やっぱりぼでぃがーどだったんだね、かっこいいね、と喜んでいる。いや、SPとボディガードはちょっと違う、とサカバヤシは何やら呟いていたが、説明は諦めたようだ。まあ、子供にその違いは分からないだろう。俺もいまいちよく分からない。
「ねえ、サカバヤシのおじちゃん」
「な、なんだい、な、夏樹、くん?」
「はんぺんをかしてあげる」
唐突な子供のセリフに、サカバヤシは呆気に取られたような顔をした。
「どうしてサカバヤシのおじちゃんにはんぺんを貸してあげるんだい、夏樹くん?」
俺も思わず訊ねていた。
「だって、はんぺんはいい子だもん。はんぺんをだっこしてると、ぼくはとってもあんしんするの。だから、はい!」
俺の膝に乗ったまま、夏樹はサカバヤシにはんぺんを差し出した。サカバヤシはどうしたらいいのか分からないんだろう。俺に目で助けを求めてくる。
んー、でも、これって彼のクールダウンに役立つかも。なんといっても、はんぺんはぬいぐるみだからいきなり動くようなことはないし。もし動いたら、ホラーだ。
第7話「青い血の女」:SRIメンバーの友人を襲う、謎の殺人フランス人形を操るのは!?
「この子のせっかくの好意だし、ちょっと借りてみたらどうでしょう。ぬいぐるみの癒し効果で、あなたのピリピリも少しは楽になるかもしれませんよ?」
「癒し効果・・・?」
サカバヤシはくたりとしたはんぺんをじっと見つめている。
「もこもこした肌触りのいいぬいぐるみって、大人でも好きな人は多いですよ。一度試してみては?」
俺の言葉に背中を押されたように、サカバヤシはそうっと、本当にそうっと夏樹からはんぺんを受け取った。
「じゃ、夏樹くん、サカバヤシのおじちゃんにはんぺんを貸してあげてるあいだ、おじちゃんと遊ぼうか? ギッコンバッタンはどうかな?」
「おじちゃん、それってしーそーっていうんだよ。葵ちゃんが言ってた」
「そ、そうか」
俺の子供の頃の言い方じゃダメだったか・・・
「ね、ぼく、さきにぶらんこに乗りたい。おじちゃん、ぶらんここいでくれる?」
「ああ、いいよ」
本当はこの場から飛び去った九官鳥のカンちゃんを探さないといけないんだが・・・ 今日はもういいや。子供の手を引いてブランコに向かう途中、ふと振り返ってみると、サカバヤシが恐る恐る、という言葉がぴったりの仕草ではんぺんを膝の上に乗せているとこだった。
クマのような大男に、かわいい犬のぬいぐるみ。うーん、素晴らしいコラボレーションだ。なんちゃって。
しばらくあの人の良いSPをひとりにしておいてやろう。
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う、眠い。prisonerNo.6は呻いた。
あと少しなのに、本当にあと少しで完結なのに、ダメだ、眠い。
始めるのは簡単だが、終わらせるのは難しいのだ。ああ、眠くさえなければ・・・ 盾と矛がケンカしてるかもしれないが、眠気に襲われているprisonerNo.6には仲裁は無理。
sakabayasiさん、ごめんなさい。あともう少しだけかかりそうです。
もうダメ、寝る。寝るんだ~!
Z・・・zzzzzzz