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カテゴリ:想い
久しく太陽の光を見ていない。 ぴかぴかと朝陽の射す私の寝室は この頃いつも暗い。 流石に、少し気分が塞ぐ。 24日もまた、気温が低く 寒くて暗い1日になるようである。 母にとって、仕事上、哀しい事があった。 母は、とても真っ直ぐで、 人の心の裏等を読めない人である。 だから、掛けられた言葉をそのまま受け止める。 なので、誤解が生まれたり、 傷付いたりする事が多い。 今回も、その性格から利用者さんとの間で 誤解が生まれ、母はとても落ち込んでいた。 利用者さんは、目の不自由な方であり、 いつ、何をしていたか逐一報告しなければ ならないという法則があった。 しかし、母の上司はそれを半年も 母に伝えていなかった。 母は、やるべき事を終えても、 仕事の範囲を超える事でもガスコンロ周りの こびりついた汚れを綺麗にしたり、 部屋に掃除機をかけたりしていた。 そうして、与えられた仕事の時間を 全うにこなしていた。 だが、利用者さんは母に対して 疑心暗鬼を抱いていたようで、 母の上司に 「あの人は時間が余ったら、台所に突っ立っていて仕事をしない。」 と告げたそうである。 母は、本来の仕事“外”に関して 一々報告するとまるで 「私はこんな事をやってあげたんですよ。」 と言うようで厭だという気持ちがあった。 別に、感謝されたいからしている訳ではない。 時間が余っているから、他の作業もしているだけで、 その事を気に留めていなかった。 しかし、それが全く汲み取られておらず 逆に、まるで「サボっている」と 職場に告げ口みたいな事をされて、 母は酷く悲しみ、 これまでの頑張りが無駄に終わった事を 悔しく想い、半ば人間不信に陥っていた。 夜、スーパーでの買い物を終えて 家に帰った後、少しずつ母の苦い想いを 私に話してくれた。 利用者さんは、職場に母の行動をサボっていると 告げたその日、母に対して温かい待遇をしていた。 その日の仕事を書類に書く際、 温かい所で書きなさいと、炬燵に入れてくれたという 事だったのである。 母は、その人の事を利用者さんとして 良い印象を持っていたし、その奥さんも 良い方だと想っていた。 だが、利用者さんは正反対の感情を 母に対して抱いており、 目が不自由であるが為に、何をしているか 逐一伝えられていないという事で サボっていると想い、職場に物申した。 その事が、母にとって物凄くショックだったと言う。 私が聞いても悔しかった。 私も、自分のした事をわざわざ人に告げない。 感謝をしてもらう為に、やった事を言うなんて、 下心があるようで厭だからである。 それが、母の場合は今回、裏目に出てしまった。 母の上司が、その人には そういうことが通用しないという事を 伝えていなかったから生まれた哀しみである。 母の、落ち込んだ姿。 「もう、何もする気になれない。何も食べたくない。」 そう言って全てを投げ出そうとする姿。 側で見ていて哀しかった。 だから私は、スーパーの惣菜コーナーで 売られていた“おかずの盛り合わせ”の【半額】が 残り1つになっているのを素早く自分のカゴに入れ、 後で落ち合った母に渡した。 例の場所では調理のお仕事だったので、 それを想い出すお料理をする気には なれないだろうと考えたからである。 母は、喜んでくれた。 しばし腕を組んで、お買い物をした。 哀しい気持ちも、分かち合って 【半分こ】すれば、痛みは和らぐ。 夜は大体、母と別々の部屋で過ごしているが、 今夜は母も私も楽しみにしているドラマが あったので、それを一緒に観る事にした。 そのドラマは、『相棒』である。 今回のストーリーは、前回からの続きであった。 『相棒』の後には『斉藤さん』がある。 母も前回のストーリー分から『斉藤さん』を観始めていて 楽しみにしていた。 それはさて置き、 『相棒』を寄り添って観ていると温かかった。 母は熱燗を、私は冷酒を飲みながら。 母が最後の力を振り絞って作った エノキと春菊入りの湯豆腐を 私もほんの少しだけ頂きながら ドラマに見入った。 終わりの方のシーンで、右京さんが ピンチの際に表れた瞬間には、 2人で「わあ、かっこいい!!!」と 言い合った。素敵過ぎると。 私は、 「右京さんみたいな人がお父さんなら良いなあ」 と呟いた。すると母は、 「お父さんはもう無理よ。恋人で、そういう人を探しな。」 と返してきた。 でも私は、水谷豊さんの奥さんである 蘭ちゃんには勝てないから 「こんな格好良い人は、いないよう。」 と笑って言い返した。 2人でドラマを楽しみながら観る時間も、 母が抱いた哀しい気持ちを少しでも 和らげてくれたらと願う。 半分こ。楽しい気持ちも、哀しい気持ちも 分かち合えたら、それで良い。 22時からは、ゆっくりのんびり、 『斉藤さん』を観た。 あらすじに関しては割愛する。 斉藤さんは、毎週記しているように 筋が通っていて、それを貫き通し、 正しい事は正しいと言える 今時珍しい人間である。 それ故に敵が多く、特に“事なかれ主義”の人々には 忌み嫌われている。 でも、斉藤さんは滅茶苦茶強い スーパーマンのような女性ではなく、 人間としての弱さを併せ持っている。 今回のストーリーは、息子の潤一君が通う 幼稚園のママたちに糾弾されて 斉藤さんは酷く心が折れていた。 その前に、高校生達によってカラースプレーを 降りかけられる暴力を受け、弱っていた。 しかし、以前斉藤さんが、 同じ高校の女子高生が落とした財布を 拾って一生懸命追いかけて渡した事で、 女子高生達の斉藤さんを見る目は変わり、 それによって、新たな展開があった。 女子高生達は、きちんとした大人に関して 見る目は有るんだと主張したのである。 丁度、事なかれ主義のママ軍団に斉藤さんが 1人責められている所であった。 そこに斉藤さんを援護する 女子高生軍団が表れて、彼女達なりの大人に対する 想いを言ったので、凄くスッキリした。 斉藤さんを責めるのは止めろと言った事。 そのシーンはとても印象深かった。 私も普段生活していると、「それは間違っている。」と 感じる事が多い。スーパーでも、子どもが走り回って 暴れて商品を乱しても注意しない大人をよく見かける。 でも私は、注意が出来ない。こころでは、 「親がきちんと注意すべきであり、叱るべきだ。」 そう想っていても、言葉には出来ない。 斉藤さんは、それを全て自然にアクションへと 繋げている人である。 私もいつか、【正しい事を正しい】といえる人間に なりたいと考えた。 しかし、それは難しいとも想う。 正しい事を通したとしても、それが 全てに於いて物事を良い方向へと繋がるとは 限らないからである。 難しい世の中になったと感じる。 母の経験を通して、ドラマ『斉藤さん』の世界も感じた。 正しい事、きちんとした事をしていても、 相手の捉え様によって、それは時に“悪いもの”と 映るものなのだと・・・。 本当に、哀しく、悔しく感じた。 母の側で一緒に『相棒』を観ていた際、CMの間に 他愛ない話をしていたら、次第に母の表情も 柔らかくなり、笑顔が戻ってきた。 それが、私は嬉しかった。 「世の中、色んな人がおるんよね。お母さんの事、 分かってくれとる人の方が多いんよ。」 と言いながら背中を擦ると、 「ありがとうねえ。」と言い、しかし 「ああ、でも今食べ物食べたけん、 背中撫でられたら出てきそう・・・」と ふざけて顔を歪めた。 そして、同時に笑い合った。 「あんたも、細かい事を余り気にすんなよ。」と 私の背中をぽんぽん柔らかく叩いてくれたので、 「母さんもね。」と背中を叩き返した。 『相棒』は、1人で観ている時よりも面白く感じた。 『斉藤さん』は、没頭してみる為に、 1人で観たが、CMに入る度、 「凄いねえ。」「やっぱり格好いいねえ。」等 母と一言、二言交わした。 母との時間。今はそれを大切にする時期だと タイミングの神様が与えてくれたチャンスだと 感じる。 だからこの機会を大切にして、 余り無理をし過ぎず、母に哀しい想いを させないようにしたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.01.24 00:30:07
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