テーマ:小説かいてみませんか(122)
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「初恋っていつでした?」 「中学校くらいだったかな」 「ちゃんと気持ち伝えられました?」 「いや、何もできず終わったよ。そんなもんだろ?」 「で、失恋とかして、死のうとか思いましたか」 「なんで思わなきゃならんのだ?」 「俺は思いましたよ」 「……そんなんだからいっこうにろくでもない人間なんだよ」 「……そうっすね」 そんな初恋も、しだいに色褪せていった。恋をどうこうするにはまだ幼過ぎたし、だいたいが熱のせいで、学校に行ったり行かなかったりの日々の中で、彼女にちょっかいを出すことだって不可能な話だった。隅の机で見つめていた彼女は、他の男子にちょっかいを出されていた。お人形さんは、僕に見向きもしなかった。 僕と、霖の関係が、他のやつらに誤解をされることはなかった。会うときはいつも僕の六畳間だったし、学校にいるときは本当に少しの会話をするだけで、僕らが親しいことも、クラスのやつらや、先生は知らなかったと思う。 そのとき、僕らのなかで、霖の母親のことは自然とタブーになっていた。 話すことといったらテレビの話や、マンガの話だった。お互いが自分の好きな作品について語った。まともな会話でもなかったように思う。少女マンガと少年マンガの垣根はなかなか飛び越えられない。けれども、たまに本の交換をしたりして読むこともあった。 そう、僕は彼女をまったく意識していなかったのだ。 それが、あの瞬間に一気に崩れてしまった。僕は見てはいけないものを見てしまったのだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2004/06/13 01:02:40 AM
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