源氏物語〔19帖 薄雲 3〕
源氏物語〔19帖 薄雲 3〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語19帖 薄雲 (うすぐも) の研鑽」を公開してます。源氏は彼女にも弾くよう勧め、明石の君がそれに応じて合わせる姿を見て、彼女の才知と気品に改めて感嘆した。源氏は姫君の近況を明石の君に詳しく語り、二人の間に交わされる会話や時間には深い愛情が込められていた。大井の山荘は源氏にとって愛人の家に過ぎないが、泊まり込む際には簡素な食事を取ることもあり、その一方で定まった食事や行事は桂の院や他の御堂で行い、貴族としての体面を保ちつつも、山荘での生活に溶け込むような寛容さを見せた。こうした態度は、明石の君への特別な愛情によるものだった。明石の君も源氏のこの思いを尊重し、必要以上に出しゃばらず、かといって卑下もしすぎない、絶妙な態度を保っていた。このような彼女の振る舞いは、源氏にとって非常に心地よいものであり、彼女への愛情をさらに深めさせる要因となった。明石の君は、源氏がこれほどまでに親しみを見せる愛人の家はほかにないことを理解しており、その立場を守る術を心得ていた。彼女は、もし東の院など源氏の近くに移れば、その新鮮さが失われ、早々に飽きられてしまうと考え、自らの地理的な隔たりがかえって源氏の気持ちを繋ぎ止める強みであると自負していた。一方、明石の入道は、今後のすべてを神仏に委ねると語りつつも、娘や孫の扱いに対する関心を絶やさず、使者を頻繁に出して様子を伺った。その知らせを受けて胸が塞がるような思いをすることもあれば、名誉を感じて喜ぶこともあった。こうした複雑な感情を抱えながらも、入道もまた、源氏と娘、そして孫との縁に対して、静かに見守る日々を送っていたのである。大井の山荘は風流な趣を持ち、建物も独特な雅味を感じさせる造りだった。その住まいは一般的な形式を離れた優雅さを備えており、周囲の自然とも調和していた。明石の君は、源氏が会うたびにその美しさが一層際立っていくように見え、源氏はこの女性を貴族の夫人と比べても劣るところがないと感じていた。彼女の出自を考えれば、本来ならば成し得ない関係と思えるが、偏屈な親の性格がそれを妨げただけであり、家柄自体は決して劣っているわけではないと源氏は考えていた。