源氏物語〔24帖 胡蝶8〕
源氏物語〔24帖 胡蝶8〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語24帖 胡蝶 (こちょう) の研鑽」を公開してます。源氏の前で、玉鬘は顔を横に向けて黙っていたが、その横顔は一段と美しく、装いもまた目を引いた。派手すぎない薄色の小袿に、撫子色の細長を重ねた衣合わせは、若々しく可憐な雰囲気を醸し出していた。もともと身のこなしに不器用さはなかったものの、都へ出てきたばかりの頃はまだ田舎育ちの素朴さが目立ち、洗練されているとは言い難かった。しかし紫の上の影響を受けるにつれて、立ち居振る舞いには柔らかな優雅さが備わり、化粧の技も上達し、今では何ひとつ欠けるところのない華やかな美しさをまとった女性へと変わっていた。そのあまりの美しさに、源氏はこの娘を軽々しく誰かの妻にしてしまえば、きっとあとで後悔するに違いないと感じた。傍らで二人の様子を見ていた右近もまた、源氏が父親の顔をしていても、その若々しさと玉鬘との釣り合いのよさから、むしろ夫婦として並んだ方が自然に見えるのではないかと心の中で思っていた。右近は、手紙の取り次ぎについてもきっぱりとした口調で語った。ほかの人間が関与することは一切なく、以前から送られてくる手紙にしても、何度も返事ばかり続けるのもどうかと思い、返事を書くべきかどうかはすべて源氏の判断に任せ、玉鬘自身はむしろ困った様子で渋々応じているにすぎない、と言った。それを聞いていた源氏は、控え目に結ばれていた手紙に目を落としながら、「これは誰からのだろう、ずいぶんと工夫のあとが見える」と微笑を浮かべて呟く。右近は、その手紙はぜひ置かせてほしいと懇願されたもので、内大臣家の中将が玉鬘の侍女である海松子と面識があり、彼女を通じて届けられたもので、まだ誰も内容を読んではいなかったのだと説明する。それを聞いた源氏は、「可愛らしい話だ」と目を細め、今はまだ殿上人の身分にとどまっているとしても、軽んじるようなことはあってはならず、公卿でさえもこの中将の勢いには及ばぬ者もいると語り、この中将の将来に強い期待を寄せていた。そして、「私の予言は必ず当たる」と自信ありげに言い、こうした恋文への対応にも工夫が必要で、あからさまな拒絶ではなく、うまく気持ちをそらすような配慮が大事だと諭す。