氏物語〔29帖 行幸11〕
源氏物語〔29帖 行幸11〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語〔29帖 行幸〕 (みゆき) の研鑽」を公開してます。多くの役人たちが付き従っており、その場には十数人の身分ある者たちが内大臣を取り巻いていた。やがて酒宴となり、何度も杯が回るうちにその場の人々も次第に酔いがまわってきて、皆が内大臣の豊かな身の上と幸運について語り合い、褒め称えた。源氏と内大臣は久しぶりに面と向かって話をし、自然と昔の出来事や若い頃の思い出が語られることになった。普段、世間ではそれぞれが一つの柱として並び立っているがゆえに、お互いに競争心を抱くこともある。だが、こうして顔を合わせて語り合うと、そんな意識は薄れ、古い友情の感情が自然とよみがえってくるのだった。この場面は、人間関係の微妙な心理の綾や、身分や立場の違いがあっても共に過ごした時間の記憶によって和らぐ感情の描写が際立っており、源氏物語が単なる恋愛や政治だけでなく、人間の心の動きに深く踏み込んだ物語であることをよく示している。源氏と内大臣が親しく語り合っているうちに日は暮れていき、杯も引き続き人々の間で回されていた。内大臣は、今日は自分から訪ねてきたが、正式な招待があったわけでもないため、無礼にあたるかもしれないと少し恐縮していた。そして、あとで叱られるのではないかと冗談めかして言った。すると源氏は、自分のほうこそ責めを受けるようなことが多いと意味深に返した。その言葉に内大臣は、先ほどから気にかかっていた話題がこれなのかと直感し、口をつぐんだ。源氏はさらに、昔から内大臣以上に自分に親しかった人はいないと語り、かつては同じ志を持って政治に関わっていこうとまで考えていたことを振り返った。しかし年月が経つにつれ、かつての友情とは思えないような行き違いもあったと認めつつ、それは些細なことに過ぎず、根本の気持ちは変わっていないと話した。そして、もう年齢も重ねた今、昔のことが懐かしく、なかなか会えないのが寂しくてならなかった。