源氏物語〔36帖 横笛 11〕
源氏物語〔36帖 横笛 11〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語〔36帖 横笛〕 の研鑽」を公開してます。月が昇り、秋の澄みきった夜空を雁の群れが鳴き交わしながら渡っていく。その姿を眺める宮は、自分には寄り添う者もなく、遠くへ連れ立って飛んで行ける雁たちのほうが、よほど孤独ではないのだろうと思った。冷たく澄んだ風が身に染みて吹き込んでくるのに心を動かされ、宮は十三絃の琴を静かに爪弾いた。その控えめでありながら深い響きは、夜の静けさとよく調和し、大将の心をいっそう強く引きつけた。もっとその音色を聞いていたいという思いに駆られた大将は、そばにあった琵琶を借り受け、「想夫恋」を弾き始めた。大将は少し照れたように笑いながら、自信があるように見えるのは気恥ずかしい。この曲だけは一緒に演奏してもらえるだけの理由がある」と言って、御簾の奥にいる宮へ合奏を勧めた。しかし宮は、この曲には人前で演奏することへの恥ずかしさがとりわけ強く感じられ、すぐには手を伸ばそうとはしなかった。ただ琵琶の響きに耳を傾け、その音色に心の奥まで染み入るような思いだけを味わっていた。