2020/03/02(月)16:14
「枕草子(まくらのそうし)」を研鑽-174
「こういう風景を詠んだのだろう」
「Dog photography and Essay」では、
「愛犬もも」と清少納言のエッセイ枕草子の研鑽を公開してます。
四月の末頃に、長谷寺に参詣して、淀の渡りというものをしたところ
舟に車を乗せて行くと、菖蒲、菰(こも)などの先が短く見えたので
従者に取らせたら、ずいぶん長かったが、菰を積んだ舟が
行き交うのが、非常におもしろかった。
高瀬の淀にという歌は、こういう風景を詠んだのだろうと見えて
こもまくら 高瀬の淀に 刈る菰の かるとも我は 知らで頼まむ
五月三日の帰りに、雨が少し降っていた時に、菖蒲を刈るというので
笠のとても小さいのをかぶって、脛(すね)を長く出している男や子供が
いるのも、屏風の絵に似て、とても風情がある。
いつもより違って聞こえるもの 。正月の車の音。また元旦の鶏の声。
夜明け前の咳払い。楽器の音はいうまでもない。
絵に描くと見劣りするもの。なでしこ。菖蒲。桜。物語で
素晴らしいと言っている男女の容貌。
絵に描いて実物より勝って見えるもの。松の木。秋の野。山里。山道。
冬はひどく寒いのにくらべ、夏はたまらなく暑いのでつらい。
しみじみと感じられるものは、親の喪に服している子や身分のよい若い男が
御嶽精進をしているときや、別の部屋に籠り、夜明け前の額を地につけての
礼拝は、しみじみととても身に染みる。