2024/01/16(火)09:20
源氏物語の紫式部日記30 いくら思ってもどうしょうがないこと
「〔30〕今はなにもかも忘れて―十月十二日」
「Dog photography and Essay」では、
「愛犬もも」と「源氏物語の紫式部日記」の研鑽を公開してます。
今はなにもかも忘れてしまおう、いくら思ってもどうしょうがないことだし、罪深いことだなどと思って、夜が明けると、ぼんやり外をながめて、池の水鳥たちが屈託なく遊んでいるのを見る。
水鳥を 水の上とや よそに見む われも浮きたる 世をすぐしつつ
水鳥を他人事とは思えない。このわたしだって同じように、浮ついた日々を過ごしている
あの水鳥たちも、楽しそうに遊んでいると思えるが、その身になってみれば、きっと苦しいだろうと、ついわが身と重ねてしまう。
現世的栄華に溶け込めない紫式部。そこに身をおけばおくほど、仏道にひかれてゆく自分をどうすることもできないのだろう。華麗な宮廷社会と自己との隔絶に悩み悶える紫式部。これ以後、「源氏物語」は、ブラックである暗黒の世界に突き進んだのではないだろうか?
時雨(しぐれ)の空
小少将(こしょうしょう)の君(紫式部と特に親しかった中宮女房、源時通の娘)の手紙の返事を書いていると、時雨がさっと降ってきたので、使いの者も返事を急ぐ。私だけでなく、空の景色もざわついてると返事の末尾にそえて、つたない歌を書いて送った。もう暗くなっているのに、返事がきて、紫色に濃く染めた雲紙に次の和歌がしたためてあった。