2024/05/11(土)10:20
源氏物語〔桐壺7〕
源氏物語〔桐壺7〕
「Dog photography and Essay」では、
「愛犬もも」と「源氏物語1話桐壺の研鑽」を公開してます。
華やかな顔立ちの美人が非常に痩せてしまい、心の中は帝とお別れして行く無限の悲しみがあったがロヘは何も出して言うことのできないのがこの人の性質である。あるかないかに弱っているのを御覧になると帝は過去も未来も真暗になった気がする。泣く泣くいろいろな頼もしい将来の約束をしても更衣は返辞もできなかった。
目つきもよほどだるそうで、平生からなよなよとした人がいっそう弱々しい感じになって寝ているので、これはどうなることだろうという不安が心を襲った。桐壺更衣が宮中から輦車(れんしゃ/人の手で引く車)で出てよい許可の宣旨を役人へ下しになったが、帝は病室へ直ぐ帰るということを許さなかった。
死の旅にも同時に出るのがわれわれ二人であるとあなたも約束したのだから、私を置いて家へ行ってしまうことはできないはずだと、帝が話されると、その心持ちのよくわかる女も、非常に悲しそうに顔を見て、「限りとて別るる道の悲しきにいかまほしきは命なりけり(死がそれほど私に迫って来ていないのでしたら)」これだけのことを息も絶え絶えに言って、なお帝に言いたいことがあっても、 まったく気カがなくなってしまった。