Dog photography and Essay

2024/07/27(土)09:10

源氏物語〔4帖夕顔 17〕

紫式部と源氏物語(87)

源氏物語〔4帖夕顔 17〕 「Dog photography and Essay」では、 「愛犬もも」と「源氏物語4帖夕顔の研鑽」を公開してます。 テレビではフランスにて100年ぶり五輪開幕の模様が放送されている 開会式の舞台はセーヌ川で観光船に乗る選手たちの歓びの表情 夕顔の体はどんどん冷たくなり、硬直は進みすでに人ではなく亡骸であるという感じが強くなっていく。右近はもう恐怖心も消えて夕顔の死を知って声を挙げて泣いている。紫宸殿(ししんでん)に出てきた鬼が貞信公(藤原忠平)を威嚇したが、その人の威に押されて逃げた例などを思い出して、源氏は無理やり強くなろうとした。それでもこのまま死んでしまうことはないだろう。夜というものは声を大きく響かせるから、そんなに泣かないでと源氏は右近に注意しながら、恋人とのひと時がこうなったことを思うと呆然となるばかりだった。滝口(内裏警護の詰所の武士)を呼んで、急に何かに襲われた人がいて、苦しんでいるから、すぐに惟光朝臣の泊まっている家に行って、早く来るように言えと誰かに命じてくれと言う。 更に兄の阿闍梨がそこに来ているのなら、それも一緒に来るようにと惟光に言わせ、母親の尼さんなどが聞いて心配するから、大袈裟に言わないようにと言う。あれは私の忍び歩きをうるさく言って止める人だと、順序立ててものを言いながらも、胸は詰まるようで、恋人を死なせることの悲しさがたまらない気持ちと、辺りの不気味さがひしひしと感じられる。もう夜中過ぎになっているらしい。風がさっきより強くなってきて、それに呼応して松の枝が鳴り、それらの音は、これらの大木に深く囲まれた寂しく古い院であることを思わせ、一風変わった鳥がかれ声で鳴き出すのを、フクロウとはこれであろうかと思われた。考えてみるとどこへも遠く離れて人声もしないこんな寂しい所へなぜ自分は泊まりに来たのだろうと、源氏は後悔の念も起こる。 右近は夢中になって夕顔のそばへ寄り、このまま恐怖や興奮で死んでしまうのではないかと思われた。それがまた心配で、源氏は必死に右近をつかまえていた。一人は死に、一人はこうした正体もないふうで、自分一人だけが普通の人間だと思うと源氏はたまらない気がした。灯はほのかにまたたいて、中央の部屋との仕切りの所に立てた屏風の上とか、部屋の中の隅々とか、暗いところの見えるここへ、後ろからひしひしと足音をさせて何かが寄って来る気がしてならない、惟光が早く来てくれればよいとばかり源氏は思った。彼は泊まり歩く家をいくつも持っていたので、使いはあちらこちらと尋ねまわっているうちに夜がぼつぼつ明けてきた。この間の長さは千夜にもあたるように源氏には思われた。

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る