源氏物語〔26帖 常夏 14〕
源氏物語〔26帖 常夏 14〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語〔26帖 常夏〕 (とこなつ) の研鑽」を公開してます。私が生まれた時、妙法寺の別当の坊さんが産屋に来ていた。母はその人の影響を受けたのかもしれないと嘆いていました。私も何とかして直したいと思ってるんですが」と、真剣な様子で話す。大臣はそれを聞きながら、この娘は見かけに反して孝心のある子だと感じた。「そんな坊さんが産屋に来たのが不幸の始まりだな。仏教を侮った者は、唖(おし)や吃音(きつおん-どもり)になるといわれているが、それにあたるかもしれない」と、軽口を叩く大臣だったが、心の中では、自分の尊敬してやまない女御のいるところへこの娘をやるのはやはり気が引けると思った。なぜこんな欠点の多い娘をわざわざ自分の家へ引き取ってしまったのか。人前に出せば、あっという間に噂が広まり、悪評が立つに決まっていると、自責の念に駆られていた。しかしその一方で、大臣は気を取り直し、「女御が実家に戻ってきている間に、あなたも時々あちらへ行って、いろいろな作法や礼儀を学ぶといい。普通の人間でも、あなた方のような育ちの人々の所作を身につけるだけで印象が変わるものだよ。そういう気持ちで、あちらに行ってみる気はあるかい」とも言って、娘に機会を与えようとした。新令嬢は、大臣が兄弟として認めてくれることが何よりもうれしく、それを寝ても覚めても祈っていたと話す。ほかのことはどうでもよく、大臣が許してくれるのなら女御のもとで水くみのような下働きでも構わないと言い切った。早口でまくし立てる様子を聞いて、大臣はますます憂鬱な気持ちになり、それを紛らすために冗談めかして、「そんな労働まではしなくていいから、行ってきなさい。あやかったという坊さんはなるべく遠くに追いやっておいてくれ」と言う。だが、新令嬢はそれが滑稽に言われていることに気づかず、大臣が偉大な人物であることも、世間の人が一目置くほどの存在だということもよくわかっていない。彼女は、「それではいつ女御様のところへ伺いましょうか」と聞く。