源氏物語〔36帖 横笛 23〕
源氏物語〔36帖 横笛 23〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語〔36帖 横笛〕 の研鑽」を公開してます。だが今さら女三の宮へ返す理由もない。笛は本来、女性が吹く楽器ではなく、宮に持たせても意味がないように思えた。人は生きている間には何とも思わなかったことでも、臨終の間際になると、ほんの些細な物事に心を残したり、思いがけない執着を抱いたりするものだという。そして、その執着が強ければ強いほど、魂は極楽へ向かうことができず、この世とあの世の間をさまようとも言われている。柏木の夢を見た今、大将はその教えをしみじみと思い返し、人は何事にも深く執着しすぎてはならないのだと感じた。そこで大将は、柏木の冥福を願って愛宕の寺で読経を行わせた。さらに柏木とゆかりのある寺々にも命じ、同じように経を読ませて手厚く供養した。もっとも、横笛そのものは寺へ納めてしまう気にはなれなかった。御息所が歴史ある名器として、深い信頼と好意を込めて託してくれた品で、それを供養のためとはいえ寺へ納めてしまうのは、その心遣いに背くようにも思われた。