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碁法の谷の庵にて

全1098件 (1098件中 1-10件目)

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2021年10月19日
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弁護士ドットコムニュースで、「すべての中学校で、裁判を傍聴する機会を設けてください。」という署名運動を知りました。
詳細はリンク先に飛んで確認していただくとして,要約すれば

「裁判という場を知ることで、正しく知らないことから生じる差別や偏見をなくすことができるのではないか」


というものでした。



 私としては、この呼び掛け人の方は金目当てや売名目当てでなく、100%善意でこうした運動を行っていることには疑いを持っていません。

 しかし、意外にも?刑事弁護をそこそこやっている私はこの運動を素直に応援する気にならなかったのです。
 多分弁護士になる前の私だったら、素直に応援していたと思います。
 なぜでしょうか。


 それは、「裁判の傍聴に来てほしくない」という被告人含む関係者が決して少なくないことにあります。

 現行制度上、裁判は原則として公開である(憲法82条)。これは揺るがすことはできません。
 裁判の適正を監視するための仕組みとして、それは仕方のないことだと考えています。
 裁判官・検察官・弁護人法曹三者は見られていようが見られていまいがやることは同じです。(まあ個人的には見られてる方がより緊張はしますけどね)


 ただ一方でそれは「裁判に出てくる関係者が衆目のさらし者になってしまう」ということにもなってしまうのです。
 特に自身の罪を自覚している被告人にとっては、罪を犯したというのはこれ以上ないほど恥ずかしいことです。それを衆人環視の前で見られる…というのはある意味晒し者に近いことになります。
 衆人環視の前で己の罪を告白させてその尊厳を粉々に破壊する…これ、カルト宗教がその後に新たな価値観を植え付けることで信者を取り込む有名な手口です。

 薬物犯罪などになると、傍聴人の中には、薬物の売人の類が来ていることさえあります。要は「余計な事抜かすんじゃねえぞ」という監視ですね。
 売人であるという証拠もないので追い出すこともできず、売人にジロジロ見られながら言いたいことが言えず、優等生的なことしか言えない被告人・・・そういったケースもあるのです。
 関係者の人が応援や励ましに来てくれるような傍聴ならいいでしょう。けれども、不特定多数に傍聴される事態を好む被告人は決して多くありません。



 傍聴を好まないのは被告人だけではありません。被害者だってそうです。
 誰かも分からない傍聴人多数の前で生々しい被害体験を語らなければならないというのがどれほどの苦痛なのか。
 傍聴人がいない、あるいはいるにしても知り合いだけであれば…ということにはなるかもしれませんが、不特定多数の人がやってきて聞き耳を立てる中で話さなければならないというのは非常に辛いことになります。
 そうした衆人環視でものが言えなくなる事態を避けるべく、ビデオリンクでの尋問や遮蔽物での尋問という尋問手法の選択肢が用意されていますが、それでも傍聴人に内容がバレることは避けられません。
 そうしたリスクを恐れ、告訴を取り下げて裁判を諦めてしまう。取り下げなくとも検察官にそれは嫌だと伝えざるを得ず、検察官もそれでは公判が維持できないので泣く泣く不起訴…そういうことだってあるのです。

 また、リテラシーの問題も生じます。
 無邪気に傍聴に行ってきてその内容をSNS等に書いてしまったりすると、最悪の場合実名報道同様に被告人の更生を阻害することすらも考えられてしまう訳です。

 裁判の公開そのものは動かないにしても、「傍聴に来ないでもらいたいな…」という切実な願いを抱く、法曹三者以外の裁判関係者は決して少なくないのです。

 成人の刑事裁判ではなく少年審判は非公開です。
 これは扱う情報にデリケートなものや関係者のプライバシーにまでかかわるものが成人以上に多く、プライバシー保護しないと少年や関係者が口を噤んでしまうという配慮もあるからです。



 刑事裁判の実態や生身の人間を知ってもらうことで、差別や偏見をなくしたいという心構えそのものは立派なものだと思います。
 傍聴について無制限なのは現行法制度そのものの問題とも言え、この運動だけに異を唱えるのはいかがなものか、と言われればそうかなとも思います。

 ただ、「裁判を傍聴しないでほしい、不特定多数が見ないでほしい」という希望もまた生身の人間の持つ考えだということを忘れないでもらいたいと思います。
 傍聴を広めるに当たっては、関係者の方にこうした感情があることを踏まえ、被告人や被害者その他関係者の方を傷つけずかつ裁判の公正を阻害しないようなやり方を同時に考えていってほしいと思います。






最終更新日  2021年10月19日 11時29分57秒
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2021年10月01日
カテゴリ:法律いろいろ
児童に対し,経済的虐待と呼ばれる虐待…児童の財産を奪ったり、あるいは管理を全くせずに子に財産的な損害を与えてしまう虐待が行われることがあります。


・児童がアルバイトをしたときに、バイト代を巻き上げる。生活費として多少入れてもらう程度ならともかく、弱い立場に付け込んでほとんど全部出させてしまう。
・親の連れ子や養子などの場合、相続などで子にのみ財産が入ることがあるが、その財産を「管理する」と称して巻き上げてしまう。
・多額の債務を抱えた配偶者が死亡し、相続放棄が必要な場合であるのに何もせず、子が多額の借金を抱えてしまう。
・子役芸能人の親が、子役に入る多額の収入を全て使い込んでしまう。(「クーガン法」で検索してみましょう)
子に奨学金を申し込ませ、その金銭を学費に使わず自分で使ってしまう。子は自分で働いて学費を出すか学費不足で学業継続断念するしかない上、奨学金の返済までしなければならない(大学生の場合「ほぼ法律上の児童に当たらないという問題もある」)。
・児童個人が小遣いなどで買った財産の大半を売って代金をネコババする。あるいはしつけと称して捨てる。



 こうした児童に対する経済的虐待は、非常に深刻なものがあります。
 家庭内の事な上、児童に財産についての意識などほとんど望めないし、学校や近所の目で分かる可能性がほとんどないため気づかれにくく、気が付いたときには児童には財産がないどころか借金まで負わされ、若くして何が何だか分からないまま親のせいで破産するしかないという事態になることもあります。
 殴る蹴る熱湯を浴びせるといった直接的な暴力のように一刻を争うという訳ではないかもしれませんが、児童の将来に非常に大きな悪影響を及ぼすことは間違いありません。
 学業や独り立ちをしようにも先立つ財産がない、学業を修めていないため就職などにも難儀するという問題はもちろん、自らの努力して得たバイト代などを収奪されたことが分かれば、それは努力の否定となり児童の精神にも重大な悪影響があることは容易に察することができます。
 毒親被害体験談でも、親が子のために金銭を使わず、それどころか子に入ってきた財産を巻き上げたり捨てたりと言った例が上がります。


しかし、児童虐待の防止等に関する法律、略して児童虐待防止法第二条上の定義を見ると…

一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。(身体的虐待)

二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。(性的虐待)

三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。(育児放棄・ネグレクト)

四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。(精神的虐待)


以上4つのみが挙げられており、子の財産を巻き上げる、あるいは子の財産管理が放漫で結果児童に多大な負担を負わせるという経済的虐待は全く記載がありません
 収奪の精神的悪影響で精神的虐待というようなこじつけはもしかしたらできるかもしれませんが、せいぜいその程度です。高校生相手のバイト代巻き上げならともかく、相続財産巻き上げなどだとそもそも子ども自身に財産を奪われているという認識がないので精神方面は特に問題ない可能性もあり得ます。
「ちびまる子ちゃん」なんかでも、お年玉を預かられるのはいいとしてそのお金の話をしようとしたら電話をぷつんと切られるというような話がありましたが、これが本当ならアウトと言わざるを得ません。
(同作の作風と言えばそれまでですが、まる子の親はNHK代金をモノクロでごまかしたりなんかも告発されていたりして結構黒いです)



 高齢者の虐待については、財産の収奪を行う経済的虐待が立派に虐待として定義づけられている(高齢者虐待防止法2条4項2号、同条5項ホ)のに、どうしたことでしょうか。
以下は私の推測ですが、児童虐待の定義に財産の収奪・管理懈怠がない理由として

①高齢者は財産が多い場合がかなり多いが、児童には財産などない場合が多いので、収奪の対象となりにくい。
②未成年者に対して親権があれば財産の管理権もあるし、ケースによって親が代理して使用することも違法とは言えない。問題のある使用と問題のない使用の区別が難しすぎる(高齢者相手に親権はない。裁判所が申立を受けて後見人等を選任するだけ)。
③親が財産を収奪するからと言って、児童相談所が財産にまで目を光らせるのは難しい。また少々の問題ある管理を理由に一々児相が介入するのも現在の児相関連の予算・人手からすると現実的ではない。
④身体的な暴力などと違って一刻を争う訳ではない場合が多く、親権がまずいなら、親権停止・喪失の審判(民法834条・835条)の上で未成年後見人をつける形でなどで対処すればよい。
⑤あまりにもひどい親の場合、経済的虐待一本ということはなく精神的・身体的虐待なども同時進行しているのでそれならそっちで保護すればいい


と言ったあたりが原因なのではないかと推測します。

 しかし、子役や相続の例を挙げた通り、子に財産がない、と決めつけるのは早計です。
 親から親権を奪うとなれば、当然親権者として不適切であるという証拠をそれなりに集めなければなりません。強制的な調査権もないのに家庭内という密室で起こるそれを調査するのは非常に大変で、まして児相でも虐待として扱えないとなると非常に厳しくなります。
 当然子自身に親から自分の財産を守る能力など期待することは不可能です。弁護士相談しようなんて考えもしないでしょうし、仮に弁護士に相談された所で「親権だ」と言い張られると裁判で勝つのは至難の可能性が高くなります。
 親からの相談、例えばギャンブルに金を使いすぎて破産せざるを得ず、その際に子の金を使いまくったことを白状したようなケースなどでも、これが児童虐待に当たるなら弁護士でも守秘義務をぶっちぎって通告できます(児童虐待防止法6条)が、経済的虐待が児童虐待に含まれないとなると、児相に通告すると守秘義務違反になってしまう可能性もあり、児相に通報しようにもできないことがありえます。

 こうした障害を乗り越えて仮に調査し、親による使い込みなどが判明したとして、財産管理に問題があるからと言って親から引きはがすのは副作用があまりに強く、強く踏み切れない場合が多いでしょう。被害者意識のない児童からすれば、介入者の方が敵に見えてくるでしょう。
 親以外に財産を管理する未成年者後見人をつけようにも、子に財産がある場合は報酬を払わなければならず、子の財産という視点からも得かどうかという問題があります。
 子に財産がないのに後見人ともなれば最悪後見人がボランティア仕事をすることになります。(実際この手の後見は先立つ費用の問題でボランティア後見になりやすく、頼んだ裁判所や弁護士会も、別途ある程度報酬的においしそうな仕事を優先的に回すことで引き受け手の確保に努めるという話もあります。)
 
 更に、親が子の財産を収奪したとしても、窃盗や詐欺・横領・恐喝であれば親族相盗例(刑法244条など)として刑を免除されてしまいます。
 刑の免除は無罪ではないのですが、捜査が全面的に成功裏に終わってさえ処罰がないのが分かり切っている状態では警察も動くことは困難です。

 更に親だということを信じ、親が正当に代理していると信じて取引をした相手方に損をさせる訳にはいかないので、親の収奪を分かってて取引したというのでもない限り、取引そのものは無効になってくれず、子は親の取引相手から正当に財産を奪われます。
 その場合は親への責任追及で対応する外なく、当然そんな親が金銭を持っている訳もないので取られ損に終わることもあります。

 児童に対する経済的虐待は確かに件数としてはそんなに多くないかもしれませんが、一度起きてしまった場合に非常に深刻なことになりやすいという性質を持っていると思います。


 もちろん、親の側にも事情がある場合も多いと思います。
 どうしても親に収入がないので子の財産を使わざるを得ないケース、子のための投資として十分正当な範囲のものもあるでしょう。そういう事情であると分かれば、虐待として扱う必要まではないでしょうし、場合によっては親の就職などの支援につながるかもしれません。
 障害があるなどの原因で、暴力などは一切振るわないが財産管理という観点だけはもうどうしようもないレベルでダメという親もいると思います。障害が原因ではどれだけ叱ろうと無意味ですから、これも後見などの支援につなげることで解決すべきものです。
 ただ、それも虐待疑惑として一旦白日の下にさらさないと本当か分からないのです。




 こうした諸問題から、「児童虐待には経済的虐待を含めるよう法改正を行う」ことを私は強く望みます。
 


 なお、大阪府など条例レベルではこうした経済的虐待を児童虐待に含めている例もあります。
大阪府子供を虐待から守る条例2条3号


 ついでと言っては何ですが、親族間の窃盗や横領などを不処罰にする親族相盗例も、廃止の方向で考えるべきではないかと思います。
 また、銀行の子ども口座から使い込み目的で下ろした場合、形式的な被害者は銀行となって親族相盗例の適用はありません。法改正がなされるまでの間はこうした手法による経済的虐待について厳格運用していくことでつないでいくことが必要であろうと思います。
(家庭内では財産の帰属があいまいになりやすく、その中で踏み越えたような場合を一定程度救済する規定も必要だとは思いますが)






最終更新日  2021年10月01日 21時00分05秒
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2021年06月30日
神奈川県弁護士会の弁護士が、当該弁護士が当事者のパワハラ裁判(被害者も弁護士)で証拠の捏造を行ったとして退会命令と報じられました。
 神奈川県弁護士会から会長談話が出ています。


 報道によれば、捏造された証拠は司法修習生(法律家の卵)からのメールの文面で、パワハラ被害者に当たる弁護士が酷いことをしたから当然だという主張をするための証拠として司法修習生から送られた挨拶のメールを加工・捏造したということです。
  なお,当事者が弁護士複数でこんがらがるので、これ以降は今回懲戒された弁護士をX、パワハラ被害者に当たる弁護士をAと記載します。


 退会命令と言うのは,弁護士の懲戒の中でも非常に重い処分です。
 弁護士の懲戒は「戒告」「最大3か月2年の業務停止」「退会命令」「除名」の4種類があります。(弁護士法57条1項。一時業務停止の期間に誤記がありました。訂正いたします。)
 退会命令は所属弁護士会から追放するというもので、新たな弁護士会に登録されなければそれまで弁護士として活動することは許されません。
 登録されないまま弁護士として活動すればいわゆる非弁活動として最悪刑務所行きになります。


 きちっと統計を取っている訳ではありませんが、退会命令は

「職務に関して悪意があるレベルの重大問題行為」
「何度も懲戒処分を受けている」
「行方が分からないなどでもはや弁護士として当人が活動する気がなさそう」


と言ったケースに使われることが多いように思っています。

 問題行為と言っても,「ついやってしまった勇み足」「弁護士も脇が甘い点があったが騙されていて生じた事態」ということであれば、基本戒告,悪くて業務停止でまず退会命令にはならないというのが私の認識です。(脇も甘くなく不可避的に騙されたならそもそも懲戒にならないと思われる。ある程度依頼者を信じることが許されなければ弁護士の職務が成り立たない)
 その弁護士に依頼していた無関係の人も突然依頼していた弁護士を奪われるので、弁護士会としてもあまりやりたくないし、やるときにはそれで焼け出された依頼者を追加料金なしで各弁護士に引き受けてもらう(当然実質無償仕事)ケースも多いはずです(本件でも神奈川県弁護士会は対応に追われていますし、私のいる弁護士会でも見たことがあります)。
 そんなの弁護士を見る目がなかった依頼者の責任なので新しい弁護士にちゃんと着手金から払って依頼したらどうですか?というような対応も違法ではないと思いますが、それでは弁護士業界全体の信頼に関わるし場合によっては弁護士自治の問題に波及することも考えられるので、泣く泣くボランティアをするという訳です。

 それだけに、退会命令を受けた弁護士はよほどであり新たに登録させる弁護士会はそうあるものではありません。
 弁護士の登録に当たって当該弁護士の思想調査とかをしたりはせず、司法修習を終えた有資格者なら多少手続は面倒でも申請すればほぼフリーパスに登録される所が多い(でないと司法修習終了後1年目の新人弁護士とかは登録に困る)ですが、「退会命令や除名を受けた弁護士の再登録」となると話が一気に変わります。
 弁護士会もそういう弁護士の登録は例え法律上許されていても原則として認めない、認めるとしてもある程度の例外的措置と言う方針で臨むことが多いようです。(私自身弁護士の登録審査などしたことないので、風聞です。違うなら教えてください。)
 弁護士会が登録することすら許されない除名と比べればマシと言えばマシですが、実質は「即死」と「致命傷」程度の差しかありません。


 今回のX弁護士は実名を報じられていましたが、氏名で検索してみたところ懲戒を過去に受けたという記録は見当たらないようです。
 そうすると、X弁護士の行為は上記の私の感覚に照らせば悪意があるレベルの問題行為とみなされたということになります。

 今回は「証拠の捏造」、今回なら司法修習生から送付されたメール文面をA弁護士を非難する内容に捏造したものと言うことになりますが、具体的にどう認定されたかまでは分かりません。
 メール文面等を裁判等で提出する場合はプリントアウトして提出するのが通例ですが、送信されたメールは通常編集できませんから、それをプリントアウトするにあたって捏造と言うのはそう簡単にはできないと思います。
 それでも「複数枚にわたる印刷の中で中身が抜けちゃった」とか、「文字が小さく区別がつけにくいので補記したら間違えた」とか、「事務員や別の弁護士が勝手にやったのに気づかなかった」などであれば「問題ではあるが懲戒理由には当たらない」か、「懲戒されたとして戒告レベル」と言う感覚です。
 「意味が大分変わってしまって判決にも大きな影響を及ぼした」という事態が生じれば業務停止位まで行くことはあるかもしれませんが、それでも退会命令までは行かないと思います。

 そうすると、今回の捏造はそれを越える相当に悪質なタイプであった…というのが現在の報道からの推測になります。
 一昔前の脅迫状みたいに切って貼ってを繰り返して文面を捏造したとか、元の文面はせいぜい送信日時と送信アドレス位で文面は完全に新規とか…そういうレベルの捏造を認定したのではないかと推測します。


 おそらく,弁護士会も単に懲戒請求者側が「これは捏造に決まってる!」騒いだとか、送信者が「こんなメール送った記憶ありません」だけでは捏造とは基本的に認めないはずです。
 送信されたメールは下書きなどと異なり被送信者側で簡単に編集ができないものなので、それを編集すること自体簡単ではないからです。被懲戒弁護士も捏造はしていないと主張しているそうなので,おそらく,弁護士会側も捏造については相当な確認をしないとここまで踏み切れないはずです。
 本来のメール送信者が当時司法修習生と言うことなので,現在どこかで弁護士をしている可能性が高く、協力を得てメールサーバーに残っている送信済みアイテムと照らし合わせたのかもしれません。(報じられている限り捏造されたとされたメールは修習生が送るには恐ろしく攻撃的で、元修習生もとんだとばっちりです)

 もちろんほかの方法かもしれませんが、なんにせよ相当な確認はしないと裁判所に懲戒を取り消されかねません。
 それすらしていないで退会命令・全国紙報道レベルの記者会見なら弁護士会の方が不当懲戒と名誉毀損でアウトになるだろうと思います。


 民事裁判などでメール文面などがプリントアウトされたものが提出された場合、メールは編集が困難であり「このメールがこのアドレスの持ち主からこの日時に送信された」と言う事実については非常に客観性の高く、単に捏造だといっても覆すのは困難な証拠になります。(書いてある内容が真実かどうかは別の話です)
 例え、依頼者が「こんなメールある訳がない!!」と言ったとしてもです。
 送信者と連絡が取れる状態なら連絡を取ってみる可能性もありますが、敵対的な関係にある可能性もあり連絡自体簡単にできません。
 メールがあることを前提に、「メールの趣旨が違うのではないか」とか、送信者が何か誤解をしているとか、そういう路線での弁護活動を組み立てる弁護士も多く、メール自体が虚構と言う可能性を深く検討する弁護士は少ないはずです。
 それだけに、電子メール文面を捏造して堂々と証拠として提出するような行為がまかり通れば、今後同種の裁判でメール文面が提出された場合、一々全部疑って送信者に確認を取ったりしなければならず、訴訟に無用な紛糾、送信者に余計な負担をかけることになります。
 送信者側がメールボックス容量の問題で削除してしまったような場合には復元にも費用と手間をかけざるを得ません。復元不能と言う事態もあり得ます。

 もちろん、「依頼者等に騙された」なら仕方ないこともあると思います。
 しかし、弁護士自ら(あるいは誰かに指示して)このような行為をするのは論外であり、捏造が事実なら今後の裁判実務への影響と言う視点からも処分は妥当、例え除名処分だったとしても重きに失するとは言えないと感じます。





 最後に、もとになった事件が今回はパワハラ事件ということで、弁護士とパワハラについても一言。
 既に民事裁判が一審判決が出ていてパワハラが認定されている(担当した弁護士のブログに記述アリ)そうで,パワハラとしても懲戒相当なのではないかと言う意見も見ますが、この辺りの詳細には踏み込まないでおきます。

 弁護士事務所内でパワハラ…というのは、もちろんあってはならないことですし私はその手の被害に遭ったことも見たこともない、その意味では幸せな弁護士業務を送らせてもらっていますが、弁護士によってはありそうな気もします。
 別の弁護士はもちろん、事務所の事務員、司法修習生、場合によっては依頼者などに対してパワハラ、それも指導や叱責の勇み足と言ったレベルではない正当化不能レベルのパワハラを働く弁護士、おそらくいると思います。
 それは「弁護士だからパワハラ」という訳ではなく、ある程度の人数がいればパワハラ上司はある程度不可避的に出てきてしまうもので、それは弁護士や裁判官でも例外とは思えません。
 弁護士である以上人並よりパワハラには詳しいと思いますが、皆が皆パワハラに非常に詳しいという訳でもないでしょうし、知識があっても知識を実践できるかは別のことになりますから、弁護士だけ例外的にパワハラが少ないとも思えないのです。

 私自身、刑事の法廷で追起訴の予定を破って追起訴をせず身柄拘束を伸長させて、理由の説明を求めても答えず、それで次回期日を…と押し通そうとする検察官を「既に約束を破っている嘘つき検事が、具体的な理由も言わず、令状も取らずに次回期日までにやるなんて信じる価値はない。累犯者に「反省の弁は信じられない」とか検察官は論告で言うが、その理屈なら既に嘘ついた検察官の弁など信じられるわけがない。この場で論告を言わせて言わないなら論告権の放棄とみなし、直ちに終わらせるべきです!」と裁判官に強く主張…と言っても実質は検察官への怒鳴りつけをしたことがあります。
 法廷で検察官と弁護人は対等で上下関係ではないですが、検察庁内で検事正や次席検事辺りが同じことを言ったら多分パワハラになるんだろうなぁと思います。(私が本気で怒っていたのも確かですが、怒って見せないとまたダラダラしてしまうのが目に見えたため弁護人として退けないと考えていました)

 上記の例の通り,私自身パワハラ体質なところもある気がするので,その意味では気を引き締める必要もあるのかなと思います。






最終更新日  2021年07月02日 09時52分54秒
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2021年05月20日
 故・木村花さんのインターネット誹謗中傷被害について,ご遺族が誹謗中傷者に起こしていた訴訟について、東京地裁が勝訴判決を言い渡したとの報がありました。
 ご遺族に認められたのは、慰謝料50万円,弁護士費用5万円,調査費用742,000円で合計1,292,000円ということです。
 ちなみにご遺族代理人弁護士の清水陽平弁護士は、こうしたネット中傷被害問題については第一人者の方と認識しています。
 ご遺族はこの訴訟について、

「足を骨折したときには数か月で直ると思うんですが、ひぼう中傷で心が病んでしまったら、一生直らない心の傷を抱えたり、追い詰められて命まで奪われることを思いましても額を高くするべきだと思う」

とコメントしています。

 これについて、私から補足説明をさせていただこうと思います。
 この件について、ご遺族の方はこれから判決に記載された金129万円余を手に入れられるでしょうか。
 ​実はこれは「分からない」のです。​
 確かに判決は出ましたから、加害者に判決に基づいて強制執行できる財産があれば、強制的に取り上げることはできます。
​ ところが、「加害者に強制執行できる財産があるかどうか」は結局不明です。​
 インターネットで誹謗中傷している人のプロフィールだけ見て彼に財産があるかどうかわかるケースや勤務先が分かるケースは犯人が有名人だったり個人的知己ならばありえますが、インターネット上の中傷ではまれなケースであり、「ない可能性もある」と考えざるを得ないのです。
 今回の判決で、調査費用については74万2千円が認められましたが、逆に言えば、もし74万2千円の調査費用を使って犯人が見つからなかったらどうなるでしょうか。
 実際、SNS等の運営に問い合わせてもデータの保管期限が切れてしまい、照会してもデータが残ってませんという回答がされてしまうケースも少なからずあるのが実情です。
 また、せっかく見つかった犯人に収入や財産がなく、強制執行しようにもただの空振りに終わるという可能性もあります。
​ この場合、被害者としてはただ単に賠償金が手に入らないだけではなく,74万円余りの調査費用までがただの丸損に終わってしまいます。​
 「裁判で勝訴判決を得た」というのは,「加害者から賠償を勝ち取る」という道筋の中では単なる通過点に過ぎないのです。
 加害者から金銭を取ろうとすれば、あまりにそれは不確定な賭けであると言わざるを得ません。
​ 結果として「諦めるという対応が最適解になってしまう」というつらい現実があります。​
 むろん、今回の件でもご遺族や清水弁護士がその可能性を分かっていないとは思えません。
 何らかの原因で加害男性に財産があることを把握できているとも考えられます。
 あるいは例え金銭が手に入らなくとも、加害者に対して一定の制裁を与え、被害者である木村花さんがあんな中傷を受けるいわれはないということを司法の場で示したい故に起こした訴訟であるのかもしれません。
 背景がいずれか、またはそれ以外であるにしても、現実に認められている裁判について後ろ指指されるいわれはありません。


 しかし、こうした調査費用を費用倒れに終わるリスク覚悟でも出すという強い意志と金銭がなければ、被害者は泣き寝入りを余儀なくされるのです。
​ 被害に遭って被害を回復するためだけに、そんなにも強い意志と70万円を超える金銭と、偶然加害者が金を持っていたという幸運がなければ、被害を被害のない状態に戻してもらうこともできないというのが、インターネット名誉毀損の過酷な現実です。​
 慰謝料50万円というのは旧来の相場からすれば破格なのは確かだろうと思いますが、そういうリスクを覚悟した上でなければ調査を依頼することすらできないという状況に見合うものではありません。





 また、最近はゲーム運営などに対して誹謗中傷を繰り返しすぎてゲーム運営が誹謗中傷者を提訴するというケースが見受けられます。
 私もその件が目についたので少々追っているのですが、そういうのを見ると、ゲームユーザーの一部(しかもヘビーユーザーで、ユーザーコミュニティでの発言力もそれなりにある)から
「ゲーム運営による集金である」

「ゲーム批判しているだけなのに言論の弾圧だ。批判を受け付けない組織は腐る」

「中傷対策してる暇があったらゲーム改良しろ」
などと裁判を受ける権利という国民の最も重要な基本的人権の行使を平気で罵倒し、それが周辺のユーザーと思われる人々に度々リツイートされる様子が見受けられました。
 中には、法実務に関するあまりにも浅薄な知識をひけらかして騒ぐ人もいました。
 むろん法的にはこんな輩の不見識に付き合う必要はなく粛々と裁きを受けてもらって全く問題ないのですが、それが原因でユーザーが減少するようなことになれば運営自体が難しくなっていくし、そこまでは法律的救済が難しいのも確かです。
​ かといって放置したりすべてを水面下で進めようとすれば繰り返される誹謗中傷に対しての抑止力となりません(警告されれば止める程度の良識がある人たちに止める動機を与えられない)し、積み重なれば従業員などのメンタルや対外的な評価にもかかわってしまうだけに、難しい対応を迫られてしまうことは容易に想定できます。​



​​
 現在は、被害者による照会の手間を少しでも省く法改正が成立し、施行待ちになっています。
​ しかし、不法行為法における慰謝料や損害賠償の在り方や算定方法が現在のままである限り、結局被害者としては泣き寝入りを強いられる可能性が極めて高い,金銭などに余裕があって、金銭より感情面に重きを置く被害者でなければ諦めるのが最適解という状況は変わらないと思います。
 慰謝料額の増額は、そのための一つの処方箋であると言えるでしょう。
 慰謝料という形でなくてもいいのかもしれません。アメリカにあるような懲罰的賠償制度もあります。
 また、捜査機関がバシバシ捜査・送検することで、金のある加害者が自主賠償をすることも期待できます。が、インターネット誹謗中傷被害における被害者の救済は、現在の不法行為をめぐる民事法の限界を表していると思います。​






最終更新日  2021年05月20日 18時27分14秒
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2021年03月31日
福岡で5歳児が母親から食事も与えられず餓死したされる保護責任者遺棄事件が起訴されました。
 報道によればですが、この事件は母親のママ友が母親を洗脳同然の精神状態に置いたことが一因とみられているようです。


 福岡の事件の真相解明は捜査・司法に任せるとしますが、報道されている「洗脳」には、個人的によく似ていることの心当たりがないでもないのです。
 特に宗教団体の偉い人やカウンセラー・地域の名士という訳でもない、「近所のママ友」「学生時代の友人」と言ったような人々に洗脳されて言いなりになっている・あるいはいたのかな?大丈夫かな?と考える件は、実は私自身も色々な相談や依頼・場合によっては訴訟の相手方についても何度か遭遇したことがあります。
 単に「騙されている」なら理解できるのですが、言われるがままに金銭を納付したり、どう考えても不合理な行動に走ったりというもはや崇拝の域に入っているとしか思えない例がたまに目に入るのです。

 そしてどんどん生活が苦しくなって債務整理の依頼に来たり、問題のある行為を指示の下にやらかして法的責任を追及されて弁護士も関わる…ということがあるのです。


 もちろん、その人の言っていることが本当なのか、という問題は常に残ります。
 自分がやらかしたことを覆い隠すために、第三者の洗脳行為をでっちあげて、そいつのせいにする…ということだって考えられます。
 しかしながら、でっち上げても何の意味もないケース、それどころか弁護士による救済を拒否してしまうレベルで第三者による洗脳の類が継続してしまうという根深いケースも見られます。





 洗脳が疑われる件は何件かありましたが、個人的に一番戦慄したのは、子連れで借金まみれ状態になってしまったAさんの件でした。

 Aさんは、相続が絡んでいてAさん自身だけでなくAさんの未成年のお子さんも借金の山という状態の上、相続放棄の熟慮期間も経過済みという厄介な状態です。
 しかも、返済の当てにしていた金銭はBさんに預け、Bさんがその金銭を返してくれないというのです。(もっと複雑なのですがこれ以上の詳細は守秘します)


 多額の請求書に困って債務整理のために相談に来て、お子さんともども破産するか、一か八か熟慮期間経過後の相続放棄をかけてみるか、Bさんから金を取り返すか、法的手段しかないという状態と思われ、受任すべく準備を進めていました。
 
 そこまではよかったのですが、本番の依頼に入る直前になって突然Aさんから「破産もその他の法的手続も一切やめる」と言い出したのです。
 法的手段以外に状況脱出の方法があるとは到底考えられない中どうしたのか聞くと、「Bさんからいいことないよって言われた」ということでした。
 無論、Bさんへの責任追及だって考えてはいた中だったので、Bさんが責任追及を逃れようとAさんに圧力をかけている可能性が疑われます。(金銭返還請求はもちろん、破産でもBさんの責任追及はありえる)
 なによりもAさんだけでなくお子さんの将来に関わることも考え、こちらもAさんをかなり強硬に説得しました。
 破産以外にもいろいろ手は考えられるし、依頼にも法テラスの援助制度を使えば金銭はほとんどかからない、まず依頼してほしいというプラス方面を示したのはもちろんです。
 「せめてお子さんだけでも。お子さんが借金まみれになるのを放置するのは児童虐待にもなりかねない。頼む弁護士は自分でなくてもいいから弁護士に頼むべきだ」と恫喝じみたことまで言いました。
(この言については、「言うべきではない」という批判的なご意見もあろうと思います。)


 しかし、結局Aさんは「Bさんが言うから子どもも含めて全部やめる」の一点張り。
 弁護士としても依頼すらしていただけないのではなす術がありません。
 いっそ児童虐待で児童相談所への通告さえ考えたのですが、児童虐待の定義に「児童の財産をきちんと管理しないこと(経済的虐待)」は含まれているとは言えず(児童虐待防止法2条)、下手な通告はこちらが守秘義務違反になりかねません。
 
 結局私は手を引かざるを得ず、それきりになってしまいました。

 私の説得がまずかったんだろうか。
 でも本人が弁護士である私の法的意見より完全なトーシロのBさん(しかも変な説明を弄するというより「いいことないよ」の一言で押し切ってしまう)を未だに信じ切る状態で、どうすればよかったんだろう。
 かなり前の件ですが今でも考えてしまう件です。






最終更新日  2021年03月31日 23時00分05秒
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2021年02月09日
東京地裁で、わいせつ電磁的記録有償頒布目的所持罪(最高懲役2年)で、検察官が法定刑上限を超えた求刑をしてしまった挙句、裁判官が法定刑上限を超えた判決を言い渡してしまったと報じられました。


 事件の詳細は罪名以外不明ですが…
 この件で検察の不始末は言うまでもないことです。
 公判担当検事はもちろんのこと、決裁をした次席検事などの責任も免れないでしょう。

 しかし検察以上に責任が重いのは裁判所です。
 検察の失敗には例え弁護人が気付いていなくともしっかりダメ出しをするのが裁判所なのに、検察の法定刑上限越えをそのままスルーするなど検察の言いなりにしか裁判をしていないことの証拠です。
 ただ単に証拠評価を誤ったとか法令解釈が判例と合わなかったと言うレベルの問題ではなく、「刑事裁判の公正を疑われる」ミスの形であり、裁判官の責任は極めて重いと言わなければならないでしょう。
 求刑を参考にするのはある意味当然ですが、求刑の吟味すらしていませんというのでは裁判所の職務放棄です。



 では弁護人はどうでしょうか。
 今回の事件で弁護人側としては求刑の法定刑越えに気づいていたのかどうかは報道からでは分かりません。

 現実に裁判官&検察官が気付いていなかった以上、弁護人が気付かないなんてありえない!と断言できないのも辛い所ですが、流石に気づいていなかったとすれば弁護人として仕事をしているのかと言われてもやむを得ないでしょう。
(なお、受任時点で確認しますが、罰金刑が可能かとか、罰金があるとしてその額は、みたいな所だと私も割と不正確です。)


 自白事件の場合、弁護人は弁論を事前準備してもっていって、裁判のトリにそのまま読み上げる、と言うケースが多いでしょう。
 その時に、裁判員裁判でなければ具体的に懲役〇年程度がいい、ということは少なく「執行猶予が妥当」くらいで済ませているケースが大半だと思われます。
 執行猶予さえ取れていれば、どっちみち被告人は再犯はしないことを信じるのが通例でしょうし、あまり具体的に書くと場合によっては検察求刑より重い求刑になってしまうような事態さえあり得ますから、年数はさほど細かく突っ込まない…という弁論を準備する弁護士が多いのではないでしょうか。

 ただし、です。
 弁論を事前準備するにしても、検察官が論告などであからさまにおかしなことを言ったとなれば、その場で口頭ででも弁論を追加することはできるはずです。

「なお、検察官は懲役〇年を求刑しているが、かかる求刑は法定刑〇年を越えたものであり違法である」


と弁論に一言追加しておけば、裁判官もこの求刑年数はやばいのでは?と気づくことはできた可能性が高いです。
 もちろんそれも押し切られちゃったという可能性もゼロではないですが、大分可能性は下がるはずです。
 というより、流石にそこさえ押し切るほど裁判官のレベルが低いとは思いたくない所です。


 では、判決が言い渡されて初めて法定刑越え判決に気づいてしまった場合はどうでしょうか。
 この場合には、その場で「裁判官法定刑越えてませんか!」と事実上声を出すことも考えられます。
 判決言渡手続きが終わっていなければ、裁判官は「ごめんなさい!今のなし!」と言うこともできます。
 裁判官的には非常に恥ずかしい事態ですが、流石に裁判官としてはそこは我慢しなければなりません。
 ちなみに、修習時代に見た検察官向けの問題だとそういう風に事実上声出して、裁判官の顔をつぶさないように指摘して訂正させるべきだという答えでした。(執行猶予付けられない件で執行猶予付けるのを想定していましたが)


 判決が言い渡されて裁判官も出てってしまった後に気づいたとなるとどうでしょうか。
 この場合は一応判決としての体裁が整ってしまったので、誤りを直させるには控訴するしかありません。
 ただ、特に執行猶予が取れている場合には、被告人側でも「どうせ執行猶予だしまあいっか。これ以上裁判に付き合いたくない」となってしまうケースも少なくありません。
 しかも控訴は被告人の明示の意思に反することができないので、弁護人としては気づいたのにスルーするしかないと言う事態が生じる可能性はあるでしょう。
 検察にタレこめば検察は控訴するでしょうが、それで裁判に付き合わされるのが嫌、と言う被告人の希望を積極的に無碍にするような行為が弁護人として適切なのかは難しい問題と言わざるを得ません。
 そうすると、弁護人としては、勝負は判決言渡しの最中までにつけなければならないという訳です。


 日本の刑罰の運用上、法定刑上限を巡って本格的に争うような件自体が少なめなので、弁護人としてはどうしてもこのあたりぬるくなりがちになってしまうところかもしれません。
 むしろ弁護人としては前科などの関係上執行猶予を法律上付けられない件で執行猶予付を求めてしまうという方面での「恥ずかしい事態」の方が多くなりがち(私も修習中の起案でやらかしました)です。
 この辺気が緩むとこんなアホな事態に弁護人も一役買ってしまうのだなぁということで、気を引き締めようと思います。






最終更新日  2021年02月09日 16時24分16秒
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2021年01月19日
国選であれ私選であれ、刑事弁護の依頼があれば,とにもかくにも弁護士はまず当該被疑者・被告人に接見(面会)をし、弁護人となります。
 面会して当人の言っていることを前提に、弁護活動を組み立てていくことになります。



 なのですが,面会の時に弁護人に嘘をついてしまう被疑者・被告人は後を絶ちません。
 弁護人側で聞きそびれたので言わなかった、聞き方が悪かったので答え間違えたというのであればそれは弁護人側に落ち度があるケースも多いのだと思います。
 財布を盗んだら「中にいくらお金が入っていたか」というように、盗んだ当人すらよくわからないこともあるでしょう。
 記憶違いをしていることもよくあることです。3日前の夕飯は何か聞かれて間違って4日前の夕飯を答えちゃった,くらいの記憶違いは仕方ないことだと思います。弁護人側も,ものによっては「これは記憶違いしてる可能性もない訳ではない」くらいには心の隅にとどめておきます。


 が,当人もはっきり覚えていることで,弁護人側で気にしてズバリ聞いたことについて嘘をついてしまい、裁判になって証拠が出てきて弁護人が愕然として聞いてみると、「すいません、実は…」というケースも少なからずあります。


 嘘をついてしまう動機もいろいろあるかと思います。
 弁護人と捜査機関の区別がつかず,突然現れた謎のスーツ姿の人物にいきなり全幅の信頼を置けと言われても無理で自己防衛を言ってしまった。
 逃げたくなってついた嘘について、実は警察が裏をしっかりとっていてアウトなのは悟ったが、引っ込みがつかなくなってしまった。
 重要なことだなどと全く思ってないので、ちょっと見栄を張りたくなった。

 こういう考えは,善悪を別にした人間の気持ちとしては分からないではありません。
 そして、そんなことで嘘をつかれた「程度の事」でいら立っていては弁護人としてはどうなんだ,そういうのを想定しながら弁護人をやるべきだ,と言う指摘もあります。
 弁護人の心構えとしてはごもっともだと思います。(私自身、精神的にあまりできているとは言えず、ちゃんとで自分でもちゃんとできているかどうか疑問がありますが…)

 しかし、嘘をついたことで弁護活動の方針がおかしくなってしまい,結果として効果的な弁護活動ができなくなってしまう、下手をすれば弁護活動が盛大な自爆を招いてしまうという事態は残念ながらどうしても起こってしまいます。
 こちらは、弁護人の心構えで片がつく問題ではないのです。

 特に,裁判になる前の被疑者段階では,弁護人は検察官がどんな手持ち証拠を握っているのか分かりません。こういう種類の証拠は考えられるな、と言う予測位はしますが、予測がつくのもせいぜい証拠の種類までで,その具体的な内容は裁判にならないと分からない場合も少なくない以上、証拠を被疑者の供述に関する説得の材料には使えないのです。
 それまで弁護人の手に入れられる事件について有意な情報は、被疑者自身の供述と,断片的な犯罪に関する事実の記載からでてくるものしかなく、現場に行ったり、各種照会をかけたりにするにしてもまずは被疑者自身の供述が起点になります。
 手元に証拠があれば,証拠と照らし合わせて弁護人として聞くべき事項も次々出てきますが、証拠がない以上、弁護人の方針決定も被疑者自身の供述に依存せざるを得ない状態です。
 その依存先である被疑者の供述が露骨に間違っているとなると、弁護方針は明後日の方向を向いてしまうことになります。


 例えば、「犯行現場にいたのは確かだが自分は加わってない」と言う件なのに、見栄を張ったり、余計に防衛線を上げようとして「自分は最初から犯行現場にいなかった!」と言ったりすると、後で何らかの証拠が出てきて犯行現場にいたのが確定的になった時に彼の弁解は一気に信用性がガタ落ちしてしまいます。
 被害弁償をするという手が考えられる件もありますが,嘘をついて否認すると被害弁償を考える余地もない(事件内容によりますが)ため、被害弁償方面の活動が全くできなくなります。


 被疑者は素人なんだから、そこはプロである弁護士がアドバイスしてやれよ…と思う人もいるでしょうか?
 弁護士は確かに法律にはプロですが、だからと言って犯行現場で何が起こったかを知っているわけではありません。あるのは警察や検察が「こういう件で疑っています」と言う情報だけで、時にはそれすらないこともあります。
 さらに、弁護人として被疑者の言ってることを何の根拠もなく信用しないというのは、基本的に無理としたものです。
 自分の言っていることを証拠もなく全て嘘と決めつけてくるような弁護人を信用する被疑者はそうそういないでしょう。
 宇宙人がどうだテレポートがどうだというようなオカルトな内容ならまだしも、一応物理的にありえなくもないような弁解について、調べもせずに確信を抱ける弁護人はいるものではありません。
 なので、仮に100%嘘だと思ったとしても、自分のその感覚が間違いである可能性を踏まえてその場では同調する弁護人が大多数でしょうし、そうすると,弁護人としては「とりあえず被疑者に従った活動をする」ことしかできません。

 結果として、明後日の方向を向いた弁護活動に効果などあるはずもなく、弁護活動に深刻な遅れが生じ、開幕から的確に動いていれば裁判にせずに済んだのに、正式裁判になってしまう…とか、何とか釈放させようと裁判所に準抗告を申し立てたら、認めてもらえなかっただけではすまず、既に動かない証拠を握っている検察に「こいつ,弁護人にまで故意の嘘ついてやがるな!?」と言うことまでバレかねないことになります。



 「弁護人に嘘をつくのはやめてほしい」というのは、弁護人サイドの心構えとは別に、被疑者サイドの心構えとしてぜひとも知っていてほしいのです。
 それは,単に嘘は良くないというような倫理的な問題ではなく、弁護活動が効果的に行えるかどうかの瀬戸際であるということを理解してほしいのです。






最終更新日  2021年01月19日 17時30分04秒
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2020年11月28日
探偵業界で、DV加害者やストーカーに探偵が使われてしまうという問題が報じられ、探偵業界が頭を痛めているという報がありました。

​ 2020年11月28日 09時07分 DV被害者、逃げたら「探偵に後をつけられるように…」加害者の依頼、見極めに苦慮する業界


 

 しかし、刑事弁護の世界でも、これに近い問題は起こります。

 刑事弁護は、国選弁護ならば依頼者は国ですので、別に何の問題もありません。

 警察に逮捕された本人から「弁護してください」と依頼が来ることもあります。
 本人からの依頼であればこれも問題は全くありません。

 問題は第三者から「〇〇が逮捕されたので弁護に行ってあげてほしい」と言うような依頼が来て逮捕された被疑者に面会に行く…というのです。
 別に逮捕された人以外が「〇〇の弁護を依頼してほしい」ということそれ自体は、特に問題はないのです。

 もちろん、頼みに来たのが事件そのものと無関係な家族や友人ならばさほどの問題はありません。
 ところが、中には逮捕された当人の未だに逮捕されていない共犯者、あるいは法律上共犯者とは言えないまでも事件について知っていたりする組織犯罪関係者などが友人を名乗って(友人であること自体は嘘でもなかったりする)依頼してくると言うこともあります。
 組織犯罪関係者の場合、被疑者当人が面会禁止になっていたり、面会は可能であるにしても横で警察官が立ち会うため、自由に話せません。
 一方、逮捕されている被疑者に圧力をかけて「黒幕のことを話すなよ」と言いたいケースもあったり、そこまでできなくとも被疑者が何と言っているのか知りたいケースも多いのです。
 そこで、事情を知らない弁護士に「友人」を名乗って弁護を依頼し、て何と言っているのか聞き出してしまう…ということは、残念ながらあり得るのです。

 事情を知らず使われた…だけならばともかく、中には事情を知ってて圧力をかけるようなことを言う弁護士もいるという黒い噂も聞きます。
 流石にばれたら一発で業務停止以上の懲戒どころか強要罪などで刑事処罰さえ考えられる行為だと思うのですが、弁護士に認められた秘密交通権でなかなかバレないのも確かです。

 私自身も、以前依頼者をロクに検証しなかった弁護士のせいでひどい目に遭ったことがあります。
 私が弁護を担当していた被疑者に誰に頼まれたかすら伝えず(詳細は伏せますが、状況からして依頼者が共犯者の類であることは間違いない)に面会に来ただけでなく、先に国選弁護で活動していた私の弁護活動を滅茶苦茶にかき回して去っていったことがありました。
 おそらく、彼とて私の弁護の邪魔をしようとか、弁護に名を借りて被疑者を困らせようと思ったのではなく、「逮捕されている人のために頑張ろう!」という職務熱心さ「依頼者はどんな人なんだ!?」と言う点に意識が向かない脇の甘さが合わさってとんでもないことをやってしまったのであろうと思います。
 とはいえ、刑事弁護で超有名な法律事務所の弁護士だったので「あの事務所は、依頼者を警戒する必要があることは教えていないのか?」と言う点では呆れかえりましたが…


 むろん、第三者からの弁護依頼を受けることそのものは別に禁止されていませんし、逮捕・勾留されている被疑者にとっては外にいる第三者からの助けがあると分かることは非常に心強いことでしょう。
 第三者からの弁護依頼を否定する必要は全くありませんし、依頼者が誰であれ被疑者のために最善を尽くすという姿勢は正しいことです。

 そして、依頼した第三者が何者なのかについて調査するのが難しいのは探偵業界に限らず弁護士も同様です。一刻を争う場合もある以上、調べるために時間を費やせず(費やしたところで調べる方法も少ないですし…)に騙されてしまったというケースもあるでしょう。
 しかしながら、弁護人業界が刑事弁護のために認められている権利を悪用されることに対して脇が甘ければ、せっかく刑事弁護のために認められた弁護人の諸権利が縮小し、本当の意味で困っている人の弁護活動にまで重大な枷がはめられてしまうという最悪の事態を招くことにもなるでしょう。


 例えばリンク先の記事では

「調査にあたり対象者の個人情報を書いてもらうと、「自分の妻」と言いながら名前以外の情報を書けなかったり」
「「彼女」としながら連絡先をLINEしか知らず、分かるのは下の名前だけだったりした」


というような例が分かりやすく怪しいケースとして紹介されています。


 第三者からの刑事弁護依頼を受けた弁護士も、限界はあるでしょうが、依頼者についてその場でも調査できる事情はいくつかあるはずです。

「依頼者と被疑者の関係はどんななの?(依頼料を出すだけの関係か?)」
「依頼者は身分証を見せるのを渋ったりしていないか?」
「家族を名乗るのに名字が違っていたりしないか?(結婚・養子などはきちんと説明させる)」
「フルネームや生年月日など、関係上知っていてしかるべき情報は適切に答えられるか?(確認できないのは仕方ないが露骨に不合理なら断る)」
「何故依頼者は被疑者が逮捕されたことを知っているのか言えるか?(「噂」などと言うような曖昧な答えは×)」
「被疑者には必ず依頼者の氏名や依頼者から聞いた情報などを伝え、被疑者自身にも判断してもらう」
「事件そのものの情報は少なくとも初動段階では依頼者に伝えないと通知した上で受任。それに噛みつく依頼者は危険」


と言ったように、悪質な依頼者に利用されないよう注意し、また見抜けなかった場合であっても被害を最小限にとどめるといった努力も、また必要であろうと考えます。






最終更新日  2020年11月28日 14時26分55秒
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2020年10月30日
佐々木亮・北周士弁護士らの懲戒請求に関する損害賠償請求訴訟で、懲戒請求者6人に合計396万円の賠償を命じた判決が確定したとの報が入りました。

 賠償額の点については一定の論争があり得る所で裁判によっても見解が分かれているようですし、今後判決が積み重なった場合に問題になる可能性はあるとも思われますが,少なくとも「懲戒請求について不法行為が成立する」ことについては全くその通りだったと言えるでしょう。


 一部に懲戒請求されても被害なんかない!!とか、記者会見では生き生きとした顔を見せてたくせに!!とか主張している弁護士も見ました。
 内心では慄然としましたが、懲戒請求者代理人弁護士もやっていたそうなので、代理人としての発言だったと思うことにしましょう。
 私だって懲戒請求者から「請求棄却判決とって!!」と言われたらきちんと依頼料を払い指示に従ってくれるなら依頼だって受けますし、ブログその他で大っぴらに公表するかはともかく裁判で被害がないなどと主張する可能性はあります。
 内心で別の弁護士に対して「この三百代言野郎!!」位に思うことは割とありますが,同じ弁護士としては信義を重んじるべきですし、自分でもそれに近い主張することもありえるのですから、胸にしまうべき感情です。



 私自身,訴訟という手続で不当な懲戒請求への対応がなされることは疑問なしとはしません。
 先日,私が国選弁護人を務める事件の弁護活動に横入りして、被告人との信頼関係をぐじゃぐじゃにしてきた+αをやってきた弁護士に懲戒請求をかけることを検討するところまで行ったことがありますが,結局相手方は自分の事情をだんまりしたため,調査検討義務の問題になりえること(あと関係者を巻き込むこと)を踏まえ,断念しました。

 問題行為をやらかした弁護士側にだんまりされてしまうと、結局調査検討ができず,懲戒請求に対して民事訴訟を起こされたら敗訴するリスクを意識せざるを得ません。
 結局,弁護士会の自浄を働かせるための懲戒請求についても、小さからぬハードルとして調査検討義務は立ちはだかるでしょう。
 真面目に懲戒請求する人にとっても障害になってしまうと感じます。

 そういう意味で、民事訴訟による対応は、懲戒請求制度の在り方として健康的ではないという気持ちはあります。

 しかしだからと言って意味不明な懲戒請求をいくら受けても我慢しろ、などと言う解釈ははるかに不健康な解釈であると思います。
 
 また、弁護士会も当の弁護士に聞かないと懲戒請求者の言い分だけでは真相解明も困難な場合も少なくないだけに、全件を当の弁護士に聞いた上でしっかり審理するという弁護士会の姿勢そのものは非常に真っ当なものです。
 簡易却下しろ、という言い分を主張する人はぜひその言い分を告訴状不受理をやらかす警察にも主張してあげてください。


 むしろ「民事訴訟という形でしか被害に遭った弁護士の被害を阻止・回復できない」現行制度の問題ともいえます。
 とはいえ、私ごときにこうした問題を解決できる制度が立案できるなら苦労はないのですが…






最終更新日  2020年10月30日 17時42分44秒
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2020年10月21日
大阪地検で,担当検察官がコロナウイルスに感染したために、裁判員裁判の日程が延期されたというニュースが入りました。

 これで被告人はさらに身柄拘束を長期化させられることになります。
 被告人側の準備のためやむを得ず伸ばして…という件ならともかく,ようやく裁判が進むとなった時に膝カックンをかけられた被告人の落胆は察するに余りあります。
 この事件の被告人が事実関係を認めるのか否認するのかは分かりませんが,どちらにしても好ましくない事態であることは明らかです。


 
 今の時代,コロナウイルスに誰がかかるか分からない以上,感染の一事をもって担当の検察官個人を責めるつもりは私にはありません。
 私だっていつコロナウイルスに罹患するか,分かったものではないからです。

 この件は,検察庁の不始末と考えます。
 そもそも裁判員裁判案件なら検察官が2人で担当するのが当地では通例なのですが,残されたもう一人ではできなかったのか。
 検察官という組織体で,コロナに限らず検察官個人が事故に見舞われた時に備え,代りが務まる検察官が準備できなかったのか。
 コロナウイルス感染判明は4日前だったそうですが,4日の間に二人目を対応させることもできなかったのか。

 もちろん,代打役も準備してたのにそちらの検察官までコロナに罹患して…ということになってくれば,組織的対応にも限度があるでしょう。
 しかし,誰一人代打ができなかったのか,と思うと,大阪地検のコロナ関連の危機管理は甘すぎたのではないか,と思わずにはいられません。


 ちなみに,私は裁判員裁判で裁判官が当日にインフルエンザにかかってしまい,裁判が延期するというトラブルに見舞われたことがありました。
 ただ,別の部から代打の裁判官が出て来たので、延期は半日で終わりました。
 幸い,特段事実に争いのない件だったので,多少日程を詰めざるを得ない所はありましたが,何とか影響が少なく終わったと思います。
 裁判所は、裁判官のコロナやインフル感染にはある程度は対応できるようにしているということです。





 とまあ上記のように、裁判所も対処できてるのに対処できない検察庁は…と偉そうに検察庁を指弾するのは簡単ですが、実のところ法曹三者で一番コロナ対策ができていないのは検察官(検察庁)ではなく,弁護人(弁護士・弁護士会)であろうと思います。
 裁判員裁判では国選弁護人を複数つけることが認められることが多いですが,準備の便宜を考えると,複数弁護士がいる事務所なら同じ事務所の弁護士に頼むケースが多いのではないでしょうか。(私もそうする場合が多いです)
 そのとき,担当弁護人がコロナウイルスなりインフルエンザなり,交通事故に遭った,なんてことでも倒れることも考えられます。
 コロナウイルスが事務所内で蔓延してしまって、二人ともアウト…という可能性だって否定できるわけではありません。

 そのときに,残されたもう一人の弁護人だけ、時には実働可能な弁護人がゼロ人になってしまって、代打となる弁護人などを派遣する体制などはできているでしょうか。
 一応コロナなどで実働不可能となれば国選弁護人の交代が認められる可能性はありますが,交代すれば結局は準備期間をそれなりに与えざるを得ず,結局今回の検察官と同じ結果が待っていることになります。

 予備の弁護人を準備して、記録を読み込むくらいの準備をさせておけばよいと思うでしょうか?
 残念ながら、現在は正式に弁護人として選任されなければ,報酬も出ません。
 検察官や裁判官のように公務員として事件の数に関係なく報酬が保障されている立場とは訳が違います。

 従って,「予備役の弁護士」は結果的に本来の弁護人が倒れる事態にならなければ,何の報酬もないまま予備として待つために準備をし、当日判明するであろうコロナ感染から1週間、場合によっては1か月以上も集中的な裁判に対応できるよう日程を空けておけ(当然その間仕事の予定はまるで入れられない)ということになります。
 いくらなんでもそこまで無報酬で対応できる弁護士はいないでしょう。私もお断りです。

 結局、弁護人側のコロナ対策というものはほぼ弁護士個々人の感染しない努力に丸投げされているというのが実情であろうと思います。
 そうすると,今回の件で弁護士・弁護士会側は偉そうに今回の件で「身柄拘束を伸ばして準備体制に問題がある!!」などと検察庁に文句は言えるだろうか、というと「言えば10倍返しされてしまいそう」だと感じてしまうのです。






最終更新日  2020年10月21日 18時32分27秒
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