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碁法の谷の庵にて

2005年12月08日
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カテゴリ:法律いろいろ
 犯罪の被害者の問題が近年注目を集めている。そのために刑事法の厳罰化や民事法での救済、さらには社会的な理解の必要性が切々と訴えられている段階だ。
 昨日のNHKの「クローズアップ現代」で扱っていたのは、被害者に対する民事的・金銭的な救済である。この問題について、放送を契機に私の持っている知識と合わせて解説してみよう。


 犯罪の被害者・遺族は、犯罪の加害者から損害賠償を取ることができる。
 金額については、交通事故の場合で死亡の際の賠償額は慰謝料だけで2000万円以上。故意の犯罪の場合、慰謝料はもっとあがる可能性が高い。
 被害者がそれ以降働けた場合にはそれ以降働いて得られる金額(逸失利益)などを含めて何千万、ケースによって億にも達しうる金額になる。ちなみに私は22才・独身の大学生だが、私を交通事故でひき殺した場合の損害賠償額は7951万円である。
 加害者としても、裁判官のよい情状を得るためには賠償をしておいた方がよい。こんなに膨大な金額が裁判所で認められる賠償額に上乗せして払われるケースもあり、加害者やその弁護人から裁判になる前に賠償の申し出がある例も意外と多いのだ。


 では、加害者が不誠実だったりして賠償の申し出がない場合はどうか。被害者が民事裁判で訴えればよいか。


 残念ながらそうではない。


 まず、裁判をすること自体に大金が必要で手間ひまもかかる。

 弁護士を雇うだけでもかなりの金額だ。仕事に手をつける段階でまず金を要求するし、勝ったら成功報酬も支払わなければならない。しかも一般に弁護士費用は裁判で勝っても相手方に支払ってもらえない
 それだけの金を払っても、被害者がそもそも勝てる保証もない。実際とある少年事件の冤罪事件では、民事裁判で無罪になったケース(その例では有罪とした少年審判の判断が厳しく非難されている)もあり、刑事裁判で有罪判決だったから民事は訴えさえ起こせば大丈夫だという保証はないのだ。


 これらの障害を乗り越えて裁判で勝ったとしても、まだ問題は解決しない。

 裁判は「金のあるところから」金を取るもの。ありもしないところから金を搾り出すことはできないのだ。
 つまり、金のない加害者からは金を取れない。その場合、賠償金が取れないどころか裁判費用も丸損と言うこともありうる。

 しかも、責任は個人で負うのが原則であるから、加害者の家族からも、加害者が社長をやっている企業からも取れない。
 具体的な内容は黙っておくが、財産のある加害者が、うまく財産への追及を逃れる方法は学生の私にも思いつく。悪い奴の知恵は弁護士さえ敵わない域なので、実際には追及逃れはもっと容易な作業なのかもしれない。


 つまり、民事裁判を起こして加害者に金を払えというのも労多くして益は少ない。



 そこで、国の方も「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」と言う法律を作って、犯罪被害者等給付金ということで、一時的に見舞金を支払う体勢を用意している。
(一応解説したページはこちら

 では、その金額は?と言うと大した金額ではない。死亡で最高額は1573万円、最低320万円
 この金額は被害者の年齢や収入によって上下するらしいが、葬儀代・墓代だって何万円もかかるし、死亡直前の診療費用だってかかる。仮に弁護士を頼んで何千万円もの金額を請求する民事訴訟を起こせば、それだけでなくなってしまう。
 個人の保険による防衛とか、死亡に際しての退職金の支払がなければ、被害者が養っていた家族の一時的な生活費さえ十分にまかなえないのが実情のようだ。



 給付の金額をアップさせることが望ましいとされるようにも思えるが、財源確保が難しいこともさることながら、かえって加害者に歯止めが効かなくなるおそれがあるとして慎重論もあるようだ。

 また、「犯罪の」被害者ばかり保護される現象は「天災・不可抗力」の被害者などには不公平な制度である。今のところ天災・不可抗力の被害者に国が金銭を給付する仕組みは一部にしかないようだ。だが、犯罪なら犯人を訴えて金が取れるかもしれないが、天災・不可抗力ではどうしようもない。
 その他の天災と比べてなぜ犯罪の被害者だけ特別扱いするのか、と言う批判が出された場合、的確に応答できるだろうか。昨日の番組では「犯罪から国民を守ることは責務」と言われていたが、「では天災から守ることは責務ではないのか」と返って来たら私は返答できない。


 こういう「公平」の名の下に弱者同士で足を引っ張り合うような論争は見ていて悲しくなるが、限られた財源と秩序維持の要請の中ではやむをえない話なのかも分からない。



 いざと言うときは、国とてあてになるものではない。
 最後の最後で動けない自分や残された家族を救うのは、今の段階では個人の加入する保険に頼った方が間違いがないと言うことのようである。



 ちなみに、あなたが交通事故にあった場合に損害賠償の計算をしてくれるページはこちら






最終更新日  2005年12月08日 14時02分59秒
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