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碁法の谷の庵にて

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2006年01月22日
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テーマ:囲碁全般(745)
カテゴリ:囲碁~碁界一般編
 今、日本棋院ネット対局場「幽玄の間」はサービスが一部停止されている。それも、ちょっと前までは対局すら全くできなかったというのだ。
 ハッカーに攻撃されたために、どうやらデータが吹っ飛んでしまったらしい。


 本来、これは債務不履行である。無料利用者であれ、有料会員であれ、日本棋院ネット対局場はインターネットでの対局サービスを提供するという契約をユーザーとしている。
 その提供を怠ったなら債務不履行。不履行で損害が発生した分は、日本棋院に責任がある場合は損害賠償を支払わなければいけない。また、日本棋院に責任がない場合でも日本棋院は少なくともネット碁サービスを提供できなかった分については、代金の請求ができないことになる。(民法536条

 ところが、現実にはそれは難しい。その理由は日本棋院ネット対局場に加入する前に誰もが読んで同意しているという建前になっている利用規約である。13条2項に、


弊院には本サービスの提供の遅延又は中断が発生し、その結果、利用者が被った損害については責任を負わないものとします。



とある。とどのつまり、サービス提供が中断して起こった損害は責任取りませんよ、と言う約束の下でやっているのだ。当然、その間使えなくて、損害を蒙った(例えば、打てなかったのでかわりに有料のパンダネットに金を払った場合とか)からと言って賠償請求などはできないことになる。それが嫌ならここを使うのをやめてください、解約ならいつでも応じますよ、それだけなのだ。
 ちなみに、タイゼムでも13条がそう規定している。
 関棋は11条で「中断できる」とだけしているが、おそらくここには賠償請求もできないという意味が入っているのだろうと私は読んでいる。


 自分が加入するときにもほとんど読まなかったのをけっこう本腰を入れて読んでみたが、けっこうあちこちに相違点があって含みの多そうな利用規約が多い。コンメンタールにしていちいち解説でも作ったら意外と需要はあるかも。別に私に作る能力があるわけじゃないけどね。




 民法などには売買とか、賃貸借とかの契約でこうなったらこうする、と言うような条文はかなり多い。
 しかし実際に大事なのは当事者間での約束である。「合意は法を作る」と言う言葉は大昔からあったようだが、現在の民法も、91条によって法律と異なる約束をしたらそれが有効ですよ、と言うことがはっきり書いてある。
 法律の規定とは違うけどこうしましょう、と言うような契約の事を特約などと言う言い方をする。


 特約があれば、個々人のニーズに応じた契約が結べる。民法の場合、個々人でする契約を前提にしていることが多いので、たくさんの人を大規模に扱うような場合(ネット碁などネット碁をする企業は一つだけなのに加入者は千、万単位になる)などには、特に特約がありがたいものになる。
 さらに、裁判の場では「黙示の特約」と言うのを認めることもある。特約を書類にはしていないけれども、暗黙の了解としてそういうのがあったと認めるのだ。そうやって認定していくことによって、悪徳な人間が弱い立場の人間を食い物にしたり、契約書作成ミスで全部がおかしくなってしまうというような現象に歯止めをかけることができる。実際そんな約束があったと、勝手に思い込んで当事者が損をしてしまうケースは多いらしい。


 もっとも、特約と言うのは逆に困った現象をも生んでいる

 ながーい、読む気も失せるような契約書を渡して、弱い立場の人間がまいっかとばかりにOKして、後でトラブルになると特約を盾にあんた約束しただろう?と攻めてくる人間が出てくるのである。これが悪徳商法に使われ、一時社会問題にもなった。
 特約に効力を認める民法91条自体が、特約の範囲を「公の秩序に関する規定の外」に限定して対策を図ったり、また消費者契約法と言う法律が作られ、契約が得意な企業人などが契約になれない一般人を食い物にする現象の阻止が図られている。


  
 ともあれ、棋院はとっととサービスを回復させてほしいものだ。さっさと回復しないと、多かれ少なかれ信用に入ったひびが大きくなってくるぞ。
 あまり消費者契約法には詳しくないので断定はしかねるが、もしかすると「利用規約13条は無効」とされる余地もありうる。





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最終更新日  2006年01月22日 14時50分13秒
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