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碁法の谷の庵にて

2006年06月20日
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 ついに判決が言い渡された。内容は法律家の大方の予想通りだと思われるが、破棄差戻ということになった。
 つまり、再審理である。



 本来、最高裁判所が出せた、現実的可能性がありそうな判決としては、

一、上告棄却(無期懲役のまま)
二、破棄差戻(破棄した上でもう一度高裁に審理させる)
三、破棄自判(破棄した上で自ら判決を出す)


ということになる。



 このうち、上告棄却については最高裁が弁論を開いた時点でちょっと考えにくくなっていた。無期懲役のままでよい、と思えば最高裁判所は弁論を開かないと思われたからである。弁論を経てやはり無期懲役と言う可能性はなくはないだろうが、正直考えにくい。


 おそらく差戻か自判だろうが、事件の性質から差戻と言うのが多くの法律家の人たちの読みだったのではあるまいか。(一例としてはこちらをどうぞ)私自身は判決予想を語るのは禁句にしているので黙秘するが。


 差戻、と言うのは、もう一度下の裁判所に送り返して審理しなおせ、と言うものである。
 本来最高裁判所は法律解釈しか扱わないので、最高裁判所で高裁の判決をひっくり返す場合には、法律解釈の誤りを指摘した上で「この解釈に従って審理し直しなさい」と言うことが多いのだ。解釈が変われば、お互いの出してくる言い分・証拠や、争点も代わってくることもありうる。
 ただし、差し戻された裁判所は、そうやって最高裁判所が示した解釈に逆らうことは許されない。最高裁判所が示した解釈を前提に審理することになる。(裁判所法4条
 15人しかいない最高裁判所に事実を見定めることまで求めるのは難しいので、最高裁判所は自分たちの所にある資料だけで十分だと思えば自判、不十分かもと思えば差戻すと言うことになる。

 今回は死刑事件。判決としても重大だし、死刑にするかどうかは、実際には相当たくさんの要素を考慮しなければならないので、念のため差戻してもっと審理しろと言うのが普通である。
 自判と言うのは被告人死刑で沸き返っている人には喜ばれるかもしれないが、実際にはものすごい度胸のいる行動だろう。自判するならよほど判決文を練って、調査をもっとしなければいけない。とてもこんな短期間で自判ができるとは思えないのが実際である。



 昭和58年7月8日、永山事件と言う、最終的に死刑判決が下された有名な事件があり、この判断が実務において死刑の適用を考えるに際しては大いに参考にされているときいている。
 最高裁判所のホームページにある判決文へリンクを用意した(こちらへどうぞ)ので、今度の判決を理解するに際してはこちらも参照していただきたい。
 ちなみに、このときも今回同様、高裁の無期判決を受けて最高裁判所が出した判決は破棄差戻しだった。



 さて、何はともあれ一旦この裁判は仕切りなおし、と言うことになった。

 最高裁の判旨はまだ伝わっていないが、差し戻した、と言うことからすれば、最高裁自身は「もう後から何が出てきてもおよそ死刑しかない」と言うわけではないという建前ではあるのだろう。その後ろに多少本音があるような気がしないでもないが、判決文を読む前から裁判所がらみでよけいな推測ばかり並べるのはよそうと思う。
 弁護士としては、何はともあれ最高裁判所の判旨に乗って、それでも死刑は重いと言うことを主張していくしかないことになる。それは、いくつかの死刑事件を担当してきた安田弁護士ならよく分かっているはずである。実際相当可能性は低いと思われるが、なお無期懲役の可能性はゼロではないと言うことでもあるし、安田弁護士らとしてはむしろここからが腕の見せ所だろう。
 

 つまり、裁判はまだまだ終わらないと言うことだ。
 高裁の審理をめぐって、また世論が動いたりすることがあるかもしれない。あるいは、度肝を抜くような新証拠が出てくることは・・・さすがにないと思うけど。





 さて、大手新聞メディアなどは色々この事件に対してあすにも反応するであろう。それを待った上で、この事件の「弁護活動への世論バッシング」に関する私自身の基本的認識を改めてまとめなおすこととしたい。
 被害者問題論・死刑制度論・少年犯罪論・犯罪への社会反応論など、色々な見地から検討できる事件なのだが、私が一番気になったことと言うことで。




 
※※※※※※※※※※追記※※※※※※※※※※



 判決文が最高裁の方にアップされていた。
 pdfですがこちらをどうぞ。上に用意した永山事件の判決文と併せて読まれることを勧めたい。

 この判断は、弁護側の傷害致死であるとする例の主張はもちろん、犯行時の事情や年齢を含め、かなりあちこちに言及判断した上で破棄差戻しとしている。
 この判決は死刑を避ける理由がない、と言うことなので、「今のままでは」死刑判決だよ、ということに等しい。もちろんこうした判断には差し戻された広島高裁は全面的に従わなければならない

 そうすると、弁護側としては、その点については、よほどの新証拠が新たに出てきて、それが証拠採用されるというような場合でもなければ(死刑事件で今更証拠が出てくるとも思えないし、出ても採用されるとも思えないが・・・)、弁護の余地を封じられたことになる。
 僅かに触れられていない部分を何とか主張していく以外の弁護の方法はほとんどなさげである

 十分に知っているわけでもないので断定しないが、この分では、差戻で無期懲役になる可能性は理論上ゼロでない程度に思っていたほうがよい感じである。
 


 これが仮に殺人事件でなかったら差戻はされなかったのでは…というのは、ちょっと想像をたくましくしすぎだろうか。いや、この手の想像は意味がない。





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最終更新日  2006年06月21日 13時25分41秒
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