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碁法の谷の庵にて

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2006年11月11日
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カテゴリ:その他雑考
 私は今日、意識して「ウルトラマンメビウス」を見た。対象年齢が15くらい違うような気がするが、気にしてはいけない。私自身、意識してみるのは今日が初めてである。

 なぜ見るの?新聞のテレビ欄にあった文字にびっくりしたからだ。

「メイツ星人」



 メイツ星人は、過去にもウルトラシリーズに登場した宇宙人。はっきり言えば、彼の登場する作品を生で見たことはない。ただ、本に載っていたそのストーリーはあまりにも救いがなく、強烈なものだったのだ。


 メイツ星人が登場したのは、帰ってきたウルトラマン「怪獣使いと少年」である。
 あの有名なバルタン星人のような侵略宇宙人と異なり、メイツ星人は普通に地球を調査にやってきた友好的な宇宙人であった。また、暴れる怪獣ムルチを念動力で封印もしていた。

 しかし、彼は地球の汚染された空気で体を壊し、やってきた宇宙船を掘り出す力がなくなってしまった。メイツ星人が助けた身寄りのない少年が、円盤を掘り出そうとしたのだが、この少年が宇宙人だとして周囲からものすごいいじめに遭う。なんでも首以外を地面に埋め首を自転車で轢くと言う、もはやいじめなどと言う許容が明らかに生ぬるい域だったという。
 物語の終盤には、住民たちは警察官まで巻き込んで暴徒化。少年をリンチにかけようとやってくる。見かねたメイツ星人は出てきて宇宙人は自分だ、少年をいじめないでくれと懇願するのだが、メイツ星人は警官に銃弾を撃ち込まれて殺されてしまうのだ。


 そのために彼が封印していた怪獣ムルチは復活してしまう。
 ウルトラマンは変身を渋るもやっとのことで変身して怪獣を倒したが、生き残った少年はなお川原を掘り続ける・・・というものだ。
 あまりに救いのないストーリーは、ウルトラマンの歴史上でも屈指のものだと言う。


 「空想法律読本」では、この事件に対する問題意識を契機として、宇宙人についても憲法の基本的人権規定の適用を認めるべきだ、と言う理論を展開している。
 もちろん思い付きをそのまま語っているのではなく、外国人の人権に関する、「憲法の保障した基本的人権は性質上日本国民限定のものでなければ外国人にも保障される」というマクリーン事件と言う有名判例を宇宙人にも同様に適用しようという主張である。 
 詳しいことは、その本を読んでもらいたい。


 あえていえば、あの世界では仕方のない行動だと言って言えなくはないのかもしれない。現実世界と異なり、あの世界は日常的に怪獣や宇宙人の恐怖にさらされている。怪獣や宇宙人のもたらす破壊力は人間文明を根こそぎ、わずかな時間でぶち壊してしまう。きれい事なんて言えるか、と言う発想は、意外なほど健全なものなのかもしれない。


 だが、理詰めで弁護できるのはそこまでである。
 作中でだってそうである。本当に宇宙人が怖いのなら、どうしてあんな原始的な武器で立ち向かおうと言うのだろうか。
 これと全く同じことが言えるのが、オウム真理教の信者を排撃していた住民たち。本当にオウムがサリンをまいた、危ないとか言うなら、集団で囲むより逃げるのが普通だろう。命をかけてでもオウムを潰す、なんて気概のある人たちは、おそらくああやって排撃を働いていた住民の中の10%もいないだろう。
 それでも彼らがあのような行動に走った。一部ではなく日本中。しかも同情的な見解が私でさえもなんとなく理解できる。

 これが人間(日本人)の習性なのだろうか。


 だが、侵略宇宙人と異なり、きちんと閉じ込めてあるたった一人の人間。
 それなのに、言い分を聞いた上で処罰をするのすら待てない人たち。山口母子殺人事件の差戻さえ「裁判の迅速がうたわれる流れに逆行」とか言い放つ人たち。
 インターネットと言う武器を持てば、たちまちいかなる呪の音楽よりおぞましい「殺せ!殺せ!」の大合唱を奏でてしまう。


 日本の社会は、今なお、第二のメイツ星人を生みそうだと思う。





 ちなみに、この救いのない話に耐えられない方は、「ウルトラQ dark fantasy」の「ウニトローダの恩返し」なんかをどうぞ。





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最終更新日  2006年11月11日 18時32分30秒
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