碁法の谷の庵にて

2008/01/28(月)14:53

まさかまた弁護士懲戒を話題にすることになるとは・・・

事件・裁判から法制度を考える(217)

 光市事件の懲戒問題で大論陣を張っていましたが、まさか今になって別の弁護士懲戒の話題が出てくるとは思いませんでした。  笠井浩二弁護士といえば、知る人ぞ知るプロ棋士七段としても、有名な弁護士です。  彼の知り合いの弁護士の先生から話を聞いたこともありました。結構あちこちに趣味があるらしいです。将棋もかなり強いようで、名前忘れたけどトッププロと二枚落ち(囲碁だと5子くらい)と指していたこともありました。最後は実力差が出ていましたが。    囲碁界と法律界の合間で、いろいろ論評してきました。光市事件の騒動の原因を囲碁的に語ったり、囲碁家元の裁判を扱ったりと双方の世界をいろいろと融合的にも分析してきた私にとって、彼の懲戒処分は残念極まりないことです。  法曹界はもちろんのこと、囲碁界にとっても決して好影響を与えない事件であろうと考えられます。彼が私は無実だといって訴訟に出たりするかどうかは分かりませんが、それで勝訴でもしない限りは、これは大問題であり、激しくショックです。  しでかしたのは横領だとか。額もかなり膨大です。食うがつらさにそういうことに手を出す弁護士もいるという話も耳にしてはいますが、そんなことで弁護士が信頼を失ってしまっては困ります。  弁護士というのは相手に信頼してもらえないとどうにもならない職業です。信頼しきれないから一部秘密で・・・なんてことをされると勝てるはずだと思って進めていた裁判でボムるなんてことだってあります。  業務停止2年、はっきりいって処分としてはむちゃくちゃ重いです。業務停止期間としては最長です。(弁護士法57条)これより重いのは退会命令と除名がありますが、弁護士会を退会命令された人間を新たに登録させてくれる弁護士会などないでしょうから実質除名処分と同じ威力ですし、でその除名はまあ弁護士としての死刑宣告に等しいです。命だけはつないでやったという感じでしょうか。  もっとも、2年間仕事ができなければ、当然その間仕事はありません。事務所を持っていたら引き払わなければならない(賃料がかさむばかり)し、事務所勤務でも当然仕事できない間は給料はなしでしょう。  そして、全国に懲戒された弁護士ということで知らしめられますから、例え2年経ったとしても実質的な復帰は限りなく厳しいでしょう。1ヶ月だって弁護士生命には致命的な威力があるといわれるのですから、2年間の業務停止など、実質的に弁護士を辞めろといわれたにも等しい判断だと思われます。      ちなみに、一般社会なら逮捕だ何だだから弁護士会は甘いとかいっている人もいますが逮捕権が弁護士会にあると勘違いしている時点でこの辺の論評からはさようならして頂きましょう。  いずれにしても、彼がもたらした失望は決して小さいものではありません。  世界戦の囲碁は救いがないまでに弱くてもう追い回す気も失せましたし、弁護士の懲戒騒動まで沸き起こっているし、その合間でまでこんなことが起こって、どいつもこいつも!!というのが偽らざる感想です。     ただ、気になる情報として、被害者の男性の千万をも超えるという損害は回復されたのでしょうか。笠井弁護士いわく、本人には全額を弁済したとのことです。    もし仮に、笠井弁護士の応対が不十分でこうなった、あるいは部分的にでも冤罪だったとするならば、光市事件で懲戒請求した人たちに責任がないというどこかの知事選に出馬したどこかの弁護士の言い分がぶち壊しになるということも付言しておきたいと思います。  ※※※※※※※※※※※※追記(1月28日)※※※※※※※※※※※※  笠井七段には棋士としても処分とのこと。まあ業務上横領(最高懲役10年)に当たりかねないですから当然でしょう。  ただし、ここで気になるのが7年前、小林覚九段の殴打事件との量刑(?)の均衡です。小林九段の殴打事件は柳九段に対する16針縫う怪我ですが、国際戦の打ち上げとはいえ個人的な酒の席のことでもありますし、少なくとも積極的に加害をしてやろうと言う意思があったわけではありません。それで棋院は1年の謹慎(実質的には8ヶ月で復帰)としました。  他方、こちらの事件は1400万円近い金銭の横領です。もちろんこちらとて被害者に全額を弁済するなどはしているようですが、額の大きさを考えれば、期間がその4分の1に過ぎないと言うのは、量刑的には不均衡のそしりを免れないのではないでしょうか?  棋士の処分は決して数が多くないだけに、一件の処分が決して小さくない先例となると思われます。  細かい理由を出すのは被害者のプライバシーの問題なども出てくるから適当ではないとも考えられますし、諸々の事情もあるでしょうから直ちに処分が不当だと言うわけではないにしても、大まかにどのような事実を認定し、どのようにして3ヶ月の謹慎としたのかと言う判断過程について、棋院は明らかにすべきではないでしょうか。

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